Eclipse IDEベース統合開発環境のプロジェクトImport、Renameの方法

統合開発環境のデファクトスタンダードがEclipse IDE。本ブログ対象ベンダのNXP)MCUXpresso IDE、ルネサス)e2studio、Cypress)PSoC Creator、STM)SW4STM32など全てこのEclipse IDEをベースとした統合開発環境です。

ベンダやマイコンが変わっても殆ど同じ操作でエディットやデバッグができるので、慣れが早く、本来のソフトウェア開発に集中できます。但し、オープンソース開発なので、毎年機能追加や変更があり、2018年は6月にバージョン4.8、コードネームPhoton(光子の意味)への改版が予定されています。

本投稿は、2017年版Eclipse IDEバージョン4.7、Oxygenベースの各社IDEプロジェクトインポート、リネームの方法を説明します。
弊社マイコンテンプレートを使ってソフトウェア開発をする時、これらの操作を知っているとテンプレート:ひな型活用のプロジェクト開発がより簡単です。

IDEの例としてSW4STM32を用います。IDEは、Workspace:ワークスペースと呼ぶフォルダ単位で機能します。ワークスペース内には複数プロジェクトが存在でき、2重起動ができます。

プロジェクトImport

マイコンテンプレートは、テンプレートの具体的な応用例にシンプルテンプレートプロジェクトやBaseboardテンプレートプロジェクトをArchives形式で提供します。Archives形式は、配布に都合が良くEclipse IDEの標準方法ですので、IDEダイアログに従って操作すれば「複数の方法」でプロジェクトインポートができます。

このArchiveプロジェクトの「最も簡単」なワークスペースへのインポート方法が下記です。

  • Windowsで、Archiveを適当な場所で解凍 → 事前に作成したIDEワークスペースへ解凍フォルダ毎コピー
  • IDEで、File>Import>General>Existing Projects into Workspace実行 → インポートProjects選択
Import Existing Projects into Workspace
Import Existing Projects into Workspace。プロジェクトをインポートする方法は、マルチプラットフォーム対応のEclipse IDEの場合、複数ある。

IDEで直接Archivesプロジェクトを解凍しワークスペースへインポートすることもできますが、フォルダ選択などのダイアログ操作は面倒です。マルチプラットフォーム対応のEclipse IDEたるゆえんですが、WindowsかmacOSの上で使うのであれば、この方法が簡単です。

プロジェクト名Rename

※Rename後、Renameプロジェクトの再ビルドが失敗する場合があります。Rename前に、ワークスペース毎バックアップするなどの事前対策を実施後、Renameを実行してください。

ワークスペースに複数プロジェクトが存在するには、別々のプロジェクト名が必要です。例えば、シンプルテンプレートを使って開発したプロジェクトが既にあるワークスペースへ、もう一度シンプルテンプレートを使って新たなプロジェクトを追加作成する場合を考えます。

開発したプロジェクト名は、SimpleTemplateのままです。これをRenameしないと新たにシンプルテンプレートをインポートできません。この時は、開発したプロジェクト選択後、右ボタンクリックで表示されるメニューからRenameを選択し、別プロジェクト名に変更します。

Rename Project Name
Rename Project Name。元々のEclipse IDE守備範囲外のファイル名は、手動リネームが必要。

注意点は、この操作でプロジェクト名変更をIDEは認識しますが、IDE以外のツールで作成したファイル名などは、そのままとなる点です。図はSTM)SW4STM32の場合です。Debugフィルダ下の.cfg/ioc/pdf/txtの4ファイルがそれらです。これらファイルは、手動でのRenameが必要です。これを怠るとRenameしたプロジェクトの再ビルドやデバッグが失敗します。

これら手動Renameが必要なファイルは、各社のAPI生成ツールなどに関連したファイルで、他社IDEでも同様です。元々のEclipse IDE守備範囲外のこれらファイルは、プロジェクト名Rename時、手動Renameが必要ですので注意してください。

Rename後、再ビルドが成功することを確認してください。再ビルドが失敗する場合には、プロジェクトフォルダ毎コピー&ペーストを実行し、ペースト時にRenameしたい別プロジェクト名を設定する方法でRenameを試してください。

別プロジェクトファイルのコピー、ペースト

別プロジェクトファイルを当該プロジェクトへコピー、ペーストする方法は、同じワークスペース内であれば簡単です。ファイル選択後、コピー:Ctrl+Cとペースト:Ctrl+Vでできます。

ワークスペースが異なる場合は、IDEの2重起動を使うとファイル選択ミスがありません。

IDEは、起動中でももう1つ同時起動が可能です。IDE起動時に、異なるワークスペース選択をすれば、コピー対象プロジェクトのファイルをIDEで目視しながら選択できます。もちろん、Windowsエクスプローラでファイルを直接選択しペーストも可能ですが、普段IDEで見慣れたファイル表示で選択する方がミスは少ないです。同一ファイル名の上書き前の確認も行います。

エクスプローラでファイル表示をすると、普段IDEで見慣れないファイルなども見られます。これらが選択のミスを生みます。IDEは、必要最低限のファイルのみ表示しているのです。

IDE画面のリセット

デバッグやコンソールなど複数Perspectiveを表示するIDE画面は、時に隠したPerspectiveを表示したくなります。PerspectiveをIDE初期状態に戻すのが、Window>Perspective>Reset Perspectiveです。

Reset Window Perspective
Reset Window Perspective。IDEの初期状態ウインド表示に簡単に戻せる。

この方法を知っていると、使わないPerspectiveを気軽に非表示にできるので、画面の有効活用ができます。

まとめ

Eclipse IDEベースの各社開発環境で知っていると便利な使い方をまとめます。

  • プロジェクトインポート:IDEのExisting Projects into Workspaceを使うと簡単
  • プロジェクト名リネーム:自動リネームはEclipse IDE関連のみ。API生成ツール関連ファイルは手動リネーム要。
  • 別プロジェクトファイルのコピー&ペースト:IDE2重起動を使い、ファイル選択ミスを防ぐ
  • IDE画面リセット:利用頻度の低いPerspectiveを非表示にし、画面有効活用
Eclipse Base IDE Project Import and Rename
Eclipse Base IDE Project Import and Rename

マイコンテンプレート活用の最初の段階が、テンプレートプロジェクトのワークスペースへのインポートです。これらインポートしたテンプレートへ変更を加え、開発プロジェクトにします。

この開発プロジェクト名をリネームし、同じワークスペースへ、再びテンプレートプロジェクトをインポートします。ワークスペース内は、リネームした色々な既成開発プロジェクトから成り、様々なプロトタイピング開発へも応用できるでしょう。

ワークスペースが異なるファイル操作には、IDE2重起動でファイル選択のミスを防ぎます。

これらのTipsを知っていれば、既存資産を流用、活用し、本来のソフトウェアに集中しミスなくプロトタイピング開発ができます。

NXPのMCUラインナップ2018春

旧Freescaleの「Kinetisマイコン」と、元NXPの「LPCマイコン」の2つが統合した新生NXPのARMコアMCUラインナップは、2018年3月現在、KinetisとLPCの2つに別れてサイトに掲載中です。

NXP ARMCortex-M MCUs Site
NXP ARMCortex-M MCUs Site

従来ユーザには、この方が使いやすいと思います。しかし、同じCortex-Mコアでも2種類あり、困惑するユーザもいるのではと思っていました。そんな時、”Kinteis”と”LPC”を統合したNXPのCortex-Mコア資料を見つけたので示します。

その資料は、BRKINLPCPWRMCU REV 1(Oct. 2017)REV 0(Oct. 2016)です。資料から「Kinetisマイコン」と「LPCマイコン」を横断的に概観します。

NXP Cortex-MコアMCUシリーズ構成

BRKINLPCPWRMCU REV1 (Oct. 2017)のP8とP9をブログ掲載用に縦長に加工、加筆したのが下図です。

MCU Solutions for Every Design (Source: 2017)
MCU Solutions for Every Design (Source: 2017)

Kinetisは、V/K/E/L/EAの5シリーズ、LPCは、800/1100/54000の3シリーズから構成されています。各シリーズの特徴(オレンジ字)と概要(黒字)、それらを示すアイコンが解り易く記載されています。

KinetisとLPCの用途別構成

BRKINLPCPWRMCU REV0 (Oct. 2016)のP4、汎用/アプリケーション向けなど用途によるKinetisとLPCの分類が下図です。

Kinetis and LPC MCUs Offer a Range of Options (Source: 2016)
Kinetis and LPC MCUs Offer a Range of Options (Source: 2016)

2016年資料の方が、Kinetis、LPCともに、2017年資料より細かなMCUシリーズが解ります。

2017年と2016年資料比較

2016年資料はKinetisとLPCマイコンの両方が同居する分野もあり、整理統合するのでは?との疑念をユーザに抱かせます。例えば、General PurposeでCost-Effective and Small Form Factor分野には、LPC81x/82xとKinetis KL02/03/05の両方があります。同じ用途に、ほぼ同じ3種類のMCUを供給するのは新生NXPにとって非効率のハズです。

この疑念を抱かないように改版したのが、2017年資料かもしれません。但し、2017年でもLPC1500/1700/4000シリーズや一部のKinetisシリーズが掲載されていないのが気になります。効率化の第一歩かもしれません。

なぜアメリカ政府はBroadcomのQualcomm買収を阻⽌したのか︖”というGIGAZINE記事を読むと、理由は仮にBroadcomがQualcomを買収した場合、Broadcom負債の返済のため、短期的な収益性を重視し5Gや6Gなどの次世代通信規格の開発競争でQualcommが果たすべき長期的な研究開発を切り捨てる可能性があるためだそうです。

買収を免れたQualcomによるNXP買収が完了すれば、この非効率な同居マイコン部分にメスが入るかもしれません。STMicroelectronicsは、STM32マイコンに対して2018年から10年間の供給を保証しています。NXPも同様のマイコン製品longevity:寿命アナウンスが欲しいです。

トランプ米大統領、BroadcomのQualcomm 買収禁止を命令

トランプ米大統領は、米国時間3月12日、シンガポール)Broadcomによる米)Qualcomm 買収を、国家安全保障上の観点から禁止する大統領命令を出しました

まさか本ブログでトランプ米大統領の関連記事を投稿することになるとは、さらに、BroadcomのQualcomm 買収も即時かつ永久に放棄せよとは、まさかまさか(まさかの2乗)の展開です。

Broadcom、Qualcomm、NXP買収
Broadcom、Qualcomm、NXP買収

Wi-FiチップのBroadcomが、モバイルSoCのQualcomm を買収するとスマホ向け半導体最大手になる

ウィキペディアによるとBroadcomは、シンガポールではなく米国会社との記述もあります。

有線/無線のコンピュータネットワークおよび通信ネットワーク全般をカバーする通信向け半導体の大手Broadcomが、SoC:System on Chipでモバイルコントローラ大手のQualcomm を買収した場合には、Intel、Samsungに次ぐ3番手の半導体メーカとなり、スマホ向け半導体では業界最大手になります。

この買収劇が、トランプ米大統領命令により禁止されました(過去形で記述して良いものかは不明ですが、米大統領令ですので…)。
残るのは、米)Qualcommによるオランダ)NXP買収の、中国の独占禁止法当局の承認だけになりました。

IoTマイコンとセキュリティ

NXPは、2018年3月2日Bluetooth 5/Thread/Zigbee 3.0サポートのコンシューマ/産業IoT向けセキュリティ強化ARMディアルコア(M4とM0+)搭載のKinetis K32W0x MCUを発表しました。

Kinetis K32W0x Block Diagram
Kinetis K32W0x Block Diagram

この新製品は、以前投稿したCypressのPSoC 6:Cortex-M4とCortex-M0+のディアルコア、セキュリティ強化、BLE 5サポートのCypress PSoC 6によく似た製品です。

Cypressに続きNXPもARMディアルコアを採用したことで、強固なセキュリティが必須のIoTマイコンは、シングルコアよりもディアルコア搭載が標準になりそうです。IoTマイコンのセキュリティ関連情報を調査し対処方法を検討します。

PSoC Creator 4.2

PSoC 6搭載評価ボードCY8CKIT-062-BLEPSoC Creator動画では、デュアルコアのIDEでの扱い方やデバッグ方法などがいまいち不明でしたが、最新版PSoC Creator 4.2(2018年2月13日)で正式にPSoC 6がサポートされました。コアにより別々のフォルダにソースコードを作成し、デバッガはどちらかの一方のコアに接続します。

Cypress PSoC Creator 4.2 for PSoC 6 (Source, Creator Release Notes)
Cypress PSoC Creator 4.2 for PSoC 6 (Source, Creator Release Notes)

各コアの役割や機能配分が明確でないと、シングルコアよりもデバッグが大変になりそうです。

色々なセキュリティ強化方法

今年初めから騒がれた投機実行機能の脆弱性起因の対策は、まだ収束していません。Cortex-M系コアはこの脆弱性に関してはセーフでしたが、後追いが宿命のセキュリティ対策には終わりがありません。組込みマイコンにも、常時アップデートができるOTA:Over The Air更新機能が必須になるかもしれません。

Windows更新でも失敗があることを考えると、このOTA機能はリスクが高く、マイコン処理能力や導入コストもかなり必要です。

一方Maximは、セキュア認証専用ICを1ドル未満で提供することを発表しました。言わばMCU固有の指紋を使うことで安価にセキュリティ強化が可能です。評価キットも用意されています。

NXPもA71CHで同様のICと開発キットを用意しています。

少し古い資料ですが2012年11月発表の、“つながる時代のセキュリティ、チップと組み込みOSの連携で守る”を読むと、セキュアブート、効率的な暗号化、仮想化を使ったデータ保護サブシステムをセキュアに分離する技術など、半導体チップで提供されるセキュリティ機能を最大限に活用すべきだとの指針が示されています。

MCUセキュリティ対策の費用対効果

2年から数年でハードウェアが更新される個人情報満載のスマホやユーザ自身がセキュリティ対策を行うパソコンと、組込みマイコン:MCUのセキュリティ対策は、守るべき情報内容、管理運営方法が大きく異なります。

IoTマイコンのソフトウェアやハードウェア開発能力だけでなく、導入するセキュリティ対策の費用対効果を見極めるスキルも必要になりそうです。本命がハッカー次第で変わるなど、セキュリティは厄介で面倒な技術です。

独自開発ボードのMCUXpressoプロジェクト作成方法

今回はNXP評価ボード以外の“独自開発マイコンボード”を使って、MCUXpressoの新規プロジェクトを作成する方法を、LPC810を例に示します。

New Project by Available boards
New Project by Available boards

上図NXP評価ボードを使ったMCUXpressoの新規プロジェクト作成は簡単です。現在LPC8xxマイコンには、6種のNXP評価ボードがあり、これらの中から使用ボード選択し、Nextクリックでダイアログに従っていけば新規プロジェクトが作成できます。

Preistalled MCUsプロジェクト作成

一方、LPC810(ROM/RAM=4KB/1KB)で独自開発したマイコンボードへ新規プロジェクトを作成する場合は、Preinstalled MCUsからLPC810を選びます。

New Project by Preinstalled MCUs
New Project by Preinstalled MCUs

Nextクリック>LPCOpen – C Project>Project name追記>Import>BrowseでLPCOpenライブラリをImportします(最新版LPCOpenライブラリはv3.02ですが、ここではMCUXpresso IDE v10.1.1 にプリインスト済みのv2.19を使っています)。

Import LPCOpen Library
Import LPCOpen Library

Importするのは、lpc_chip_8xx (lpc_chip_8xx/)です。lpc_board_nxp_lpcxpresso812は、NXP評価ボード利用時、lpc_chip_8xx関数を利用したマクロ関数です(マクロ関数は後述)。

インポートが完了するとNew Projectダイアログに戻ります。ここでLPCOpen Chip Library Projectのlpc_chip_8xx_libの_lib部分を削除すると、Nextボタンが“有効”になるのでクリックします。ポイントは、_libを削除することです。削除しないと、Nextは無効のままで先に進めません。

Import lpc_chip_8xx
Import lpc_chip_8xx

この後は、デフォルト設定のままでNextを何回かクリックすれば、独自開発ボードでの新規プロジェクトが作成できます。

なおLPC810は、ROM4KB、RAM1KBと極少ですのでデフォルトで使用となっているMTBやCRPは未使用に変更すると良いでしょう。

ちなみに、MTB、CRP未使用でLPC810へ弊社LPC8xxマイコンテンプレートのみを実装した時のメモリ使用量は、ROM88%、RAM2%です(debug configuration時)。これでは、残り部分へユーザ処理を追加するとすぐに容量オーバーになります。

対策は、コンパイラ最適化をデフォルトの“最適化なし(O0)”から“、1段階最適化(O1)”へ変更することです。
Project >Properties>C/C++ Build>Settings>Tool Settings>Optimization>Optimization Levelで最適化レベルが変更できます。O1レベルでも、かなりの使用量空きが確保できます。

Optimize for Debug
Optimize for Debug

但し、最適化には副作用も伴います。変数にvolatile宣言を付記するなどして、ツールが行う勝手な最適化への対策をしましょう。対策の詳細は、コチラなどを参照してください。

マクロ関数

LPCOpen Library Stack
LPCOpen Library Stack

LPCOpenライブラリは、層構成になっています。BOARD layerは、CHIP layerを使って上位の各ExampleへAPIを提供します。例えば、LPC812評価ボード実装済みのLED出力の初期化関数:Board_LED_Init()が、chip layerのChip_GPIO_…()を使っているなどです。

Macro Function
Macro Function

本投稿では、Board_LED_Init()をマクロ関数と呼びます。NXP評価ボードは、NXPから多くのマクロ関数が提供されますが、独自開発ボードでは、これらも必要に応じて自作する必要があります。

また、自動生成ソースコードにインクルードされるファイルも、NXP評価ボードでは無いためboard.hからchip.hに代わっていることにも注意しておきましょう。

MCUXpresso Generated Source
MCUXpresso Generated Source

ベンダ提供評価ボード活用の独自開発ボード

独自開発マイコンボードと、NXP評価ボードのIO割付が同じならば、MCUXpressoの新規プロジェクト作成時に本投稿で示したような神経を使う必要はありません。多くのマクロ関数もそのまま利用できます。独自開発ボードの新規プロジェクト作成でも、NXP評価ボードと全く同じになるからです。

独自にマイコンボードを開発する前に、ベンダ提供の評価ボードIO割付を調査し、独自開発へ適用できるか否かの検討をすることをお勧めします。

ベンダ提供評価ボードは、標準的なIO割付ですが、最も応用範囲が広い割付とも言えます。さらに、上述のようにソフトウェア開発、新規プロジェクト作成に対しても多くのメリットがあるのがその理由です。

マイコンソフトウェア開発の基礎知識と開発方法、配布開始

1月末に3回に分けて投稿した「マイコンソフトウェア開発の基礎知識と開発方法」を1つのpdf資料にまとめました。弊社マイコンテンプレートサイトのアプリケーション開発手順のページから、どなたでも無料ダウンロードが可能です。

Sample Software First and MCU Template
Sample Software First and MCU Template

この資料は、Sample Software Firstについて説明しています。マイコンテンプレートを使ったアプリケーション開発手順と合わせて読んで頂くと、マイコンソフトウェアの開発方法がより解り易くなると思います。

今後、ご購入頂いたマイコンテンプレートの付属資料としてこの資料も添付する予定です。

マイコンテンプレート購入検討中の方、既に購入された方でも、ご活用ください。

NXPとルネサスのMCU開発動向

NXPとルネサス、両社幹部が語ったMCU開発動向記事から、弊社ブログARM Cortex-Mシリーズ、16ビットMCU RL78関連部分をピックアップしました。動向記事は下記です。

NXPのMCU開発動向

記事によると車載MCUは、製品群をS32 Automotive PlatformでARMアーキテクチャ(Cortex-A、Cortex-R、 Cortex-M)に全て統一し、基本的なペリフェラル、メモリインタフェースを共通化、S32デバイス間ならソフトウェアの90%を再利用できるそうです。

同時にS32 MCUは、自動車用機能安全規格である「ASIL-D」に対応し高度セキュリティを担保、また完全なOTA(Over the Air)機能もサポート予定です(OTAはコチラの投稿参照)。

S32製品は、2018年1Qサンプル出荷、2019年から量産予定です。

Common Hardware Architecture Platform (Source: NXP)
Common Hardware Architecture Platform (Source: NXP)

この車載MCU開発動向は、本ブログ対象の家庭や個人向けCortex-MコアMCUへも影響を与えると思います。NXPはFreescale買収後、LPCとKinetisの2つのCortex-Mシリーズ製品を提供中です。

ARM Cortex-M Core Kinetis and LPC
ARM Cortex-M Core Kinetis and LPC

S32製品の強み、ハードウェア共通化、ソフトウェア再利用、セキュリティ確保、OTAは、そのまま現状NXPの 2製品並立Cortex-Mシリーズへも適用される可能性が高いと思います。その方がNXP、新規ユーザ双方にとって開発リソースを集中し易いからです(現行ユーザには多少インパクトがありますが、Cortex-Mコアは同じなので、SDKなどが変わるかも?!しれません…)。

ペリフェラルが共通化されれば、サンプルソフトも同じになるでしょう。ソフトウェア90%再利用は、ライブラリ充実化も見込めます。差分の10%は、Cortex-コア差、セキュリティレベル差、応用範囲などになる可能性があり、期待できそうです。

ルネサスのMCU開発動向

ルネサスは、2018年夏発売予定のRZファミリで、組込みAIによる推論モデル処理能力を10倍、2019年末までに更に10倍、2021年で10倍にし、推論処理能力を1000倍にするそうです。このために動的に再構成可能なプロセサ技術「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」を汎用MCU製品へ取り込んでいくそうです。

RZファミリ:現状ARM Cortex-A9 400MHz採用の家電、カーオーディオなどが対象のMCU。

Cortex-AコアのRZファミリとRL78の比較(Source: Runesas)
Cortex-AコアのRZファミリとRL78の比較(Source: Runesas)

能力向上したAI推論により、振動などの画像データを扱えるようになり、さらにはそのフレームレートも高められ、例えば、熟練工のノウハウをエンドポイントで自動化できるようになる。1000倍ともなれば、現在はエンドポイントでは難しいとされる学習も行えるようになるそうです。

産業機器分野では、自動化やロボット化の実現に関わる異常検知、予知保全、認知検査などにAI処理能力を適用予定です。

1月14日投稿のルネサスe2 studioのAI利用無償プラグインで開発環境を提供しますが、弊社対象のRL78ファミリでどの様に実現されるかは不明です。

AI処理能力を1000倍化(Source: Runesas)
AI処理能力を1000倍化(Source: Runesas)

正常進化のNXPと差別化のルネサス

NXP、ルネサスともにARMコアMCUの開発動向は似ています。ルネサス幹部が、汎用MCU統括のため、あえて産業分野にフォーカスして語っただけと思います。

差分は、NXPがARMアーキテクチャの正常進化とも言えるソフトウェア資産の共通化を全面に推しているのに対し、ルネサスは、差別化DPR技術で推論機能の1000倍化を目指す点です。
※正常進化の根拠は、コチラの投稿のCMSIS参照

この差別化がガラパゴスになるのか、それとも光る技術になるか、今年夏頃の新製品RZファミリに注目します。

NXPマイコンのNXP推薦開発環境

NXPは、Freescaleを買収しARMコアのマイコンラインアップが増えました。昨年発表の新しい統合開発環境MCUXpressoで増加ラインアップに対応中です(MCUXpressoサポート状況Excel表がコチラ)。

IDE、SDK:Software Development Kit、CFG:Config Toolsの3ツールから構成されるMCUXpressoのサポート状況から、新生NXPのARMマイコン開発環境を考察します。

もっと早く気が付いていれば…

このExcel表を見つけたのは、今年1月中。LPC824の最新LPCOpenライブラリv3.02に、昨年から継続するバグ解消が無いことが理由でした。何か変だと思い、NXPサイト検索で発見したのが同表です。

2017年7E目標のLPC824対応マイコンテンプレート開発前にこの表を見つけていれば、対応が変わっていただけに残念です(orz)。LPC800でフィルタリングしたのが下図です。

LPC8xx Recommended SDK
LPC8xx Recommended SDK (Source: Version 14)

LPC8xxシリーズは、LPCOpenライブラリはAvailableなものの、NXPはCode BundleがRecommended SDK:推薦Software Development Kitです。推薦環境以外でテンプレート開発したことになります。

Change Logページを見てもいつCode Bundleへ変わったか不明です。しかし、LPC8xxテンプレートV1開発時の2014年5月10日時点では、「LPCOpenがLPC812のSDK」でした(Legacyフォルダはあっても、Code Bundleなどありませんでした)。

LPC8xxシリーズは、IDEのみMCUXpresso IDEでSDK、CFGの計画はありません。つまり、NXP推薦Code BundleかLPCOpenを使いソフト開発が必要です。

Code BundleとLPC8xx

Code Bundleは、C:\nxp\MCUXpressoIDE_10.1.1_606\ide\Examples\CodeBundlesにあります。特徴は、ハードレジスタを直接アクセスするLegacyスタイルなので、従来の8/16ビットマイコン開発者に馴染み易く、これらマイコン置換え狙いのLPC8xxには、このスタイルの方が歓迎される可能性があります。

但し、LPC81x、82x/83x、84xとハードレジスタが微妙に変化していますので制御ソフトも変化します。LPCOpenのようにAPIでハード差を吸収する思想は少ない(無い)ようです。

気になる点が2つあります。最初は、サンプルソフトのヘッダーが簡素なことです。

ベンダ提供のサンプルソフトヘッダーは、細かな注意点などが30行程度記載されているのが普通です(左:Code Bundle、右:LPCOpen)。

Sample Software Hader
Sample Software Hader

Code BundleのHeaderは弊社マイコンテンプレートと同様簡素(上図は9行)で、間に合わせで開発した感があります。また、ソース内コメントも数人のエキスパート:上級者で分担してサンプルソフトを作成したように感じました。

Code Bundleの全サンプルソフトを動作テストした訳ではありませんが、LPCOpenのようなバグは(今のところ)ありません。SDKとしてLegacyスタイルに慣れた8/16ビットマイコンユーザが使うのは問題なさそうです。

2点目は、NXP推薦開発環境でCode Bundleなのが、LPC8xxシリーズのみの点です。

他のARMマイコンは、LPCOpenかまたはMCUXpresso SDKが大半です。旧NXPマイコンは、LPCOpenまたはMCUXpresso SDK、旧FreescaleマイコンはMCUXpresso SDKが主流です。

LPC8xxシリーズのみ今後もCode Bundleにするのか、または、他の旧NXPマイコン同様LPCOpenになるのかは、ハッキリ言って判りません。

LPC8xxマイコンテンプレートの対処

現在LPCOpenライブラリを使いLPC812のみ対応中のLPC8xxマイコンテンプレートV2.1を今後どうするかの案としては、

  1. LPC812、LPC824ともにLPCOpenライブラリバグ解消を待って改版
  2. LPC812、LPC824ともにCode Bundleを使い改版
  3. LPC812は現状LPCOpen維持、LPC824は、Code Bundleを使い改版(中途半端)

いずれにするか、検討中です。決定には、もう少し時間が必要だと思っています。

ミスリード(Mislead)のお詫び

これまで弊社は、LPC8xxシリーズのSDKはLPCOpenと思い投稿してきました。この投稿で、読者の方に誤った開発方向へ導いた場合には、お詫び申し上げます。申し訳ございません。

LPC8xxテンプレートをご購入頂いた方のテンプレート本体は、C言語のみでライブラリは使っておりませんし、マイコンにも依存しません。ご購入者様は、他マイコンも含めて流用/活用はご自由です。

LPCOpenで開発された関数を、Code Bundleへ変えたとしても、テンプレート本体はそのまま使えます。

あとがき

Code Bundleは、ハードレジスタをユーザ開発ソフトで直接いじる20世紀マイコン開発スタイルです。21世紀の現在は、ハードウェアに薄皮を被せAPI経由で開発するスタイルに変わりました。メリットは、ハードが変わってもユーザ開発ソフト側変更が少なく、マイグレーションに有利です。

ARMコアのマイコンは、全てこの21世紀スタイル:ARMスタイルです。ARMがCMSISなどを発表しているのは、ARMコアに依存しないユーザ開発ソフトを、資産として活用することが目的です(CMSISはこちらの投稿を参照)。

マイコンRTOSがWindowsのようにハードアクセスを全面禁止にすることはあり得ませんので、20世紀スタイルでRTOS化しても問題ありません。が、スイッチマトリクスが気に入っているLPC8xxシリーズだけが20世紀スタイルを使い続けるとは思えません。つまり、Code Bundleは、NXPサポート体制が整うまでの暫定措置だと思います。

この混乱の原因が、QUALCOMMによるNXP買収に絡んでないことを祈っています。

QUALCOMMのNXP買収、EUで一歩前進

2018年1月19日、米QUALCOMMの蘭NXPセミコンダクター買収計画がEU(欧州連合)当局で承認の記事が日経電子版に掲載されました。残るのは、中国の独占禁止法当局の承認だけです。遅れていた買収成立が一歩前進しました。

QUALCOMMのNXP買収
QUALCOMMのNXP買収

マイコンソフト開発の基礎知識と初心者、中級者向け開発方法(最終回)

前回までで初心者、中級者向けマイコンソフトの基礎知識と開発方法に、俯瞰視野でサンプルソフトを選び、サンプルソフト初期設定とループ内処理をライブラリとして評価ボードで動作確認しながら開発するサンプルソフトファーストの方法を述べました。

この方法は、サンプルソフトをジグソーパズルのピースとし、各ピースを弊社マイコンテンプレートへ入れさえすれば開発できるので、楽しくラクにマイコンソフトウェア開発ができます。

サンプルソフトを組合せるマイコンソフトウェア開発
サンプルソフトを組合せるマイコンソフトウェア開発

日本人は、サンプルソフトのコメントや概要記述の英語が苦手です。最終回は、ソフトウェアに使われる英語、特にサンプルソフト英語の扱い方を示し、本開発方法を総括します。

マイコンサンプルソフトの英語コメントは重要

初期設定+無限ループ内の1周辺回路制御という構造:フォーマットが決まっているマイコンサンプルソフトは、英語圏開発者によるものが殆どです。

彼ら彼女らにとって母国語英語ベースのC言語サンプルソフトは、ソースコードだけでも理解に支障はありません。また、関数をモニタ1画面(80字x 25行)以内の行数で記述する傾向もあります。ページスクロールせずに関数全体が見渡せるからです。

C関数の行数
C関数の行数

このような英語圏開発者があえて追記するコメントは、重要事項のみです。数行にまたがるコメントならなおさらです。つまり、なぜコメントしているかを理解することが大切です。といってもソースコードのコメント英語は、解り難いのも事実です。

英語コメントはブラウザ翻訳で日本語化

ブラウザアドレス窓に「翻訳」と入力すると、ブラウザ上で翻訳ができます。長い数行の英文でも瞬時に日本語になります。

ブラウザ翻訳
ブラウザ翻訳

サンプルソフトの英語コメントが解り難い時は、ブラウザ翻訳を使い日本語で読むと内容理解に効果的です。

マイコンソフト開発の基礎知識と初心者、中級者向け開発方法(総括)

従来のマイコンソフトウェア開発は、マイコンデータシートなど理解が先、次に理解した情報のプログラミングという順番でした。この方法は正攻法ですが、初心者、中級開発者には、限られた開発期間で理解対象が多いため開発障壁が高く、プログラミングの時間も相対的に短くなります。

マイコン応用製品の早期開発には、プログラミングを先にする方法へ見直すことが必要です。

それには、初心者、中級開発者が元々持つ俯瞰視野とサンプルソフト、ライブラリ、評価ボード、ブラウザ翻訳などの既存資産を上手く利用すれば良いのです。Arduinoシールドを使えば評価ボードへの機能追加も簡単で、製品版に近い開発環境でのプログラミングも可能です。

本投稿は、初心者、中級者向けのマイコンソフト開発の基礎知識として、サンプルソフト資産が多数あること、多くのサンプルの中から対象を絞り、一種のライブラリとして動作確認しながらソフト開発をするサンプルソフトファーストの方法を示しました。

IoT時代は、RTOSやセキュリティ知識など、より多くの情報を取り込んだマイコンソフトウェア開発になります。個々の情報の相対的な重要性さえ理解していれば、情報内容の理解よりも開発するソフトウェアへ組込む能力の比重が、ますます高まるでしょう。

開発者がこだわるべきは、短い期間内で開発するソフトウェア出力です。情報理解は、開発後でもOKです。

マイコンソフト開発の基礎知識と初心者、中級者向け開発方法(第2回)

第1回では、初心者、中級者はデータシートから開発着手せず、元々持っている俯瞰視野を忘れずにマイコンソフト開発をすることが重要だと述べました。
今回は初めにまとめを示し、次にその経緯や理由を説明、どうすれば初心者中級開発者が俯瞰視野でソフト開発できるかを示します。

第2回マイコンソフト開発の基礎知識と初心者、中級者向け開発方法のまとめ

  • サンプルソフトファースト:典型的な使用例、解り易さ重視、ソフトウエア開発立場のサンプルソフトから開発着手
  • サンプルソフトは、タイトルや概要のみを読み周辺回路の要求仕様に近いものを選ぶ
  • 開発の致命的ミスを避けるため、選定サンプルソフトから使用マイコンを再評価
  • サンプルソフト処理理解より、初期設定と無限ループ内処理の記述場所でライブラリとしての流用性を重視
  • ライブラリをマイコン評価ボードで動作確認後、要求仕様へカスタマイズ
  • 選出した複数サンプルソフトを、組み合わせて1パッケージ化できるツールあり

サンプルソフトファースト

マイコンソフトウエア開発は、ソフトウエア以外にもハードウエア、半導体など多くのことを理解した上で開発するのがBestです。しかし、限られた開発期間で全てを理解するのは、対象が多くしかも広すぎるため困難です。そこで、初心者、中級者がゴール(=開発完了)を目指すのに「必要最低限」な対象のみに絞り、ゴールインできるBetterな方法がサンプルソフトファーストです。

必要最低限の対象に絞る時に使うのが、マイコンのサンプルソフト(ベンダによってはアプリケーションノート、Code Examplesとも呼ぶ)です。サンプルソフトは、そのマイコンの「典型的な使用例」を「解り易さ重視」で「ソフトウエア開発の立場」から示す資料です。

「典型的な使用例」「解り易さ重視」「ソフトウエア開発の立場」で作られ、実際に動作するサンプルソフトを、一種のライブラリとして開発に使うのが本方法の骨子です。

マイコンソフトウエア開発対象の4分類

マイコンソフト開発を、制御する対象で4つに分類し、初心者、中級者がサンプルソフトを探すべき順位付けをしたのが下表です。

マイコンソフトウエア開発対象の4分類
分類(検索順位) 概要 対象例
周辺回路(1 マイコンソフト開発の基本中の基本。
周辺回路毎にサンプルソフト多数あり。
GPIO、ADCなど
通信(2 有線通信のサンプルソフト多数あり。
IoT無線通信プロトコルは、未確定。
USART、BLE、Threadなど
RTOS(3 複数タスクのリアルタイム処理に不可欠。
IoTマイコンには必須になる可能性大。
FreeRTOS、mbed OSなど
セキュリティ(4 IoT端末に不可欠。
処理内容は専門家任せでOK。
暗号化、セキィリティICなど

周辺回路は、GPIOやADCなどマイコン内蔵ハードウエアのことです。通信も周辺回路の1つですが、通信相手や有線/無線などにより制御ソフトがかなり変わり複雑度も増しますので、別項目として抜き出しています。また、IoT端末の場合には、BLE: Bluetooth Low EnergyやThreadなどのプロトコル候補がありますが、現状は未確定です。

RTOSやセキュリティも現状マイコンでは開発対象にはなりませんが、IoTが普及する頃には大きな対象になります。

巷にはセキュリティやIoT無線通信の情報が溢れていますが、当面は不要です。周辺回路(1)と有線通信(2)のみを検索すれば、現状のマイコンソフト開発には十分です。これで、探す対象が半分になりました。

サンプルソフト選定

マイコンには多くの周辺回路が実装済みです。しかし、各回路は独立していて、使う回路のみのソフトを開発すればOKです。周辺回路毎に、多くの典型的使用例、サンプルソフトがあります。

サンプルソフトには、内容概要を説明するタイトルや記述が必ずあります。この「タイトルや概要のみを読んで」要求された開発に使えそうか否かを判断します。判断の正確さに拘る必要はありません。気楽に、面白そうだと思ったサンプルソフトでも良いので、何個かピックアップします。

サンプルソフトに要求仕様の「一部しか含まれていないものでもOK」です。最後に示す、複数のサンプルソフトを組合せて1つにできるツールがあるからです。

概要やサンプルソフトのコメントが英語表記の場合も多いです。この場合は、第3回で示す英語対応方法を参考に対応してください。ここでは、全て日本語表記として続けます。

多くのサンプルソフトの中から、タイトルや概要のみで利用可否を判断するのは、日本語ですので簡単です。この操作で、内容まで目を通すサンプルソフトの対象数は、激減します。

ルネサスのIDE CS+で示されるアプリケーションノート例が下図です。

ルネサスCS+のサンプルソフトタイトル検索例
ルネサスのCS+サンプルソフトタイトル検索例

周辺回路の中で難易度が高いのは通信です。他と同様にサンプルソフトを選んでも良いですが、後回しでもOKです。周辺回路のサンプルソフト内に通信が含まれることも多いからです。さらに、通信は周辺回路の出力通知や遠隔制御に使うことも多いので、まずは周辺回路を開発した後でOKです。

重要なのは、「サンプルソフトの選出にも俯瞰視野を使う」ことです。いきなり細部へ入らず、常に俯瞰視野から多くの情報をふるいにかけ、その後で次ステップへ進むようにしましょう。

選出サンプルソフトから判る、開発仕様とマイコンのマッチング

サンプルソフトは、典型的な使用例です。もし、開発の要求仕様が、部分的にでもサンプルソフトに含まれない時は、サンプルの選び方が間違っているか、または仕様そのものの難易度が高いと言うことです。

もしかしたら、開発に使うマイコン選定ミスの可能性もあります。半導体ベンダは、様々なマイコンを発売しています。仕様に合うマイコンを使うのが開発の第1歩です。マイコン選定ミスは致命的です。

このように、サンプルソフトの概要だけでも要求仕様とマイコンのマッチングの良さ、悪さは判ります。ここでは、マッチングは良い、つまり開発見込みがあるマイコンを選定済みとして続けます。

※残念ながら既定方針で使用マイコンが決まっており、これで仕様を満たすものを開発する例も多くあります。しかし、仕様に近いサンプルソフトが無いということは、開発リスクが高いということです。
同一ベンダから汎用/専用など多くのマイコン機種を提供中なのは、開発リスクを下げるためです。選出したサンプルソフトからマイコン選定を再評価するのは良い方法です。

サンプルソフトはフォーマットから読み(見て)ライブラリとして活用

解り易さ重視のサンプルソフトは、構造にフォーマットがあります。周辺回路の「初期設定」と「無限ループ内での周辺回路制御」です。

初期設定で周辺回路の動作、割込みかポーリングかなどが変わります。サンプルソフトは、初期設定とループ内制御の2つに分けて読み(見)ます。初期設定は、周辺回路の使い方が同じなら、そのまま流用できます。

ループ内制御は、割込みの場合は、割込みサービスルーティン:ISRがそのまま流用できます。ISRで起動されるルーティンと、ポーリング処理は、簡単に理解していれば十分です。

つまり、サンプルソフトの処理理解よりも、処理がある場所で、自分の開発出力への流用性を読む(見る)のです。自分の開発に使えるものは、そのままサンプルソフトをライブラリとして使います。解り易さ重視で作ったサンプルソフトなので、ライブラリとしても使えます。

サンプルソフト抽出ライブラリを評価ボードで動作確認後カスタマイズ

サンプルソフトから抜き出したライブラリで本当に動くかを確かめるため、マイコン評価ボードで実際に動作させ確認します。マイコンは動けば開発は楽しくなります。

サンプルソフトとマイコン評価ボードは、ラクに楽しくマイコン開発を行う必須ツールです。

評価ボードでマイコンを動かし、もしも要求仕様と異なる箇所があれば、その箇所のみカスタマイズするのが初心者、中級者開発者向けにお勧めです。このカスタイマイズ時に、初めてデータシートを参照すれば良いのです。マイコンは動作し始めるまでに手間が掛かります。動作立上げを早くすれば、ラクに開発できます。

※サンプルソフトが提供する機能が要求仕様の一部のみの場合でも、複数のサンプルソフト機能を簡単に組み合わせることができる弊社マイコンテンプレートなどのツールがあります。

つまり、サンプルソフトライブラリを活用しジグソーパズルを組むような感覚でマイコンソフトウエア開発ができます。