TrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール方法、STM32G0xとSTM32F0xの差異

STM32G0x専用テンプレートのIDE:TrueSTUDIOを使った開発環境構築手順も、汎用STM32Fxテンプレートのそれと同じです。

本稿はSTM32G0x専用テンプレート開発用IDE TrueSTUDIOとスタンドアロン版STM32CubeMXのインストール方法を示し、インストールしたSTM32CubeMXを使って同じ汎用MCUでもSTM32G0xとSTM32F0xのどこが違うかを具体的にまとめます。

STM32G0x専用テンプレートIDE:TrueSTUDIOを使った開発環境構築手順

2017年5月投稿のSW4STM32のIDE構築手順が左側、これがTrueSTUDIOに変わると右側になります。

表1 TrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール手順とSW4STM32構築時の比較
手順 SW4STM32で構築(2017年5月) TrueSTUDIOで構築(本稿)
1 SW4STM32インストールとUpdate TrueSTUDIOインストールとUpdate
2 STM32CubeMXプラグインとUpdate STM32CubeMXスタンドアロン版とUpdate
3 評価ボードMCUコアのライブラリダウンロード STM32G0パッケージのダウンロード
4 ライブラリのファイル構成確認 同左(しかし、当面見合わせ)
5 評価ボードデモソフト説明と構築環境の動作検証 同左(しかし、当面見合わせ)

差分はIDEと、STM32CubeMXスタンドアロン版をインストールする点、評価ボードがNucleo-F072RBからNucleo-G071RBに変わったので、STM32CubeMXへダウンロードするMCUパッケージにSTM32G0を加える点です。

前半で手順1~5の簡単な説明、後半は、インストールしたSTM32CubeMXを使って同じ汎用MCUグループのSTM32G0xとSTM32F0xが、電源ピン数やデフォルト使用周辺回路が異なることを示します。

手順1 TrueSTUDIOインストールとUpdate

Atollic TrueSTUDIO for STM32 9.3.0(2019/2/22リリース)は、atollicサイトからダウンロードボタンのクリックで入手できます。以後、Windows版で説明します。

ダウンロード後、インストーラを実行すると言語選択ダイアログが現れます。日本語を選択するとインストール後のTrueSTUDIOメニューも自動的に日本語化されます。
インストール後、ヘルプ(H)>更新の検査、をクリックしTrueSTUDIO を最新状態にします。

※TrueSTUDIOインストール検討中の方は、手順4を読んだ後に再検討してください。

手順2 STM32CubeMXスタンドアロン版とUpdate

コード生成ツールSTM32CubeMX V5.1.0は、SW4STM32と今回インストールするTrueSTUDIOの両方で使います。そこで、各IDEのプラグインではなく、スタンドアロン版としてインストールします。インストール方法は、UM1718 Rev28の3.2を参照してください。
インストール後、Help>Check for Updates、をクリックしSTM32CubeMXを最新状態にします。

※UM1718は、チュートリアルも豊富でSTM32CubeMXの重要マニュアルです。全356ページと分量は多いのですが、読む章を選択するなどして目を通すことをお勧めします。

スタンドアロン版はSTM32CubeMX更新が簡単で、1つのSTM32CubeMXで両方のIDEに生成ファイルを出力する時に便利です。

手順3 評価ボードMCUコアのライブラリダウンロード

評価ボードNucleo-G071RBのMCUコアは、Cortex-M0+です。STM32Fxと同じMainstream(≒汎用)MCUですが、新世代の汎用MCUです。
関連投稿:STM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発

STM32CubeMXのHelp>Manage embedded software packagesでSTM32G0を選択し、最新版Package1.1.0をインストールします。

STM32G0インストール
STM32G0 MCU Packegae 1.1.0のインストール

手順4 ライブラリのファイル構成確認

STM32CubeMXは優れものソフトウェアで、IDEプラグインからスタンドアロン版へ途中変更してもデフォルトRepositoryディレクトリ(C:\Users\ユーザ名\STM32Cube\Repository)を変えなければ、プラグイン版Packagesの各MCUパッケージがスタンドアロン版へそのまま引き継がれます。

ただし今回のSTM32G0は、ライブラリファイル構成がSTM32F0/F1をインストールした時と一部異なります。

Repository/STM32Cube_FW_G0_V1.1.0\Projects\NUCLEO-G071RB\Templatesフォルダ内にTrueSTUDIOフォルダが無いのです(EWARM/MDK-ARM/SW4STM32は以前と同様有るが、UM1718にもTrueSTUDIO説明無し)。

残念ながら、手順3でインストールしたSTM32G0は、TrueSTUDIOへ生成コードを現状は出力できないようです😴。

SW4STM32の必然性
TrueSTUDIOではなくSW4STM32の必然性を示す結果となった

という訳で、手順4と5以降は、STM32G0がTrueSTUDIOへ対応した後に検証を行います。Communityによると次版のSTM32G0で対応予定だそうです。

STM32G0x専用テンプレート開発IDEに、SW4STM32からSTM買収後のAtollic TrueSTUDIOへの変更必要性を示すつもりが、今現在は、SW4STM32の使用を続ける必然性を示す結果となりました😴。

STM32CubeMXを使ったSTM32G0xとSTM32F0xの差異まとめ

TrueSTUDIOへ生成コードを出力しなければSTM32CubeMXに問題はないので、(個人的にはマルチOS対応SW4STM32が好きですし……気を取り直して…)、STM32CubeMXを使いSTM32G0xとSTM32F0xの違いをまとめます。

STM32G0xもSTM32F0xも共にMainstream、つまり、汎用MCUに属します。しかし、STM32CubeMXを使うと、評価ボード実装の同じ64ピンパッケージでも、電源ピン数やデフォルト利用の周辺回路が異なることが良く判ります。

Nucleo-G071RBとNucleo-F072RB差異
Nucleo-G071RB(左)とNucleo-F072RB(右)の利用ピン差異

Tips:STM32G0 1.1.0では、評価ボードNucleo-G071RB使用中のLD4(PA5)とB1(PC13)がPinout & Configurationに表示されません。その理由は不明ですが、手動で追加設定する必要があり上左図は設定済みのものを示しています。ちなみに、上右図Nucleo-F072RBは、LD2とB1がデフォルトで表示されます。

電源ピン(VDD/VSS)数

STM32G0xは、黄色で示された電源ピン(VDD/VSS)が1組、一方STM32F0xは4組あります。STM32G0xのCortex-M0+コアと70nmプロセスの結果、電力供給1組でも十分動作します。

不要になった電源ピンは、GPIOに変更し同じ64ピンパッケージでもSTM32F0xよりも多くの外部制御が可能です。

パッケージのピン配置

STM32G0xシリーズのパッケージピン配置が下図です。将来リリース予定の4パッケージピン配置は一貫しています。これにより、基板アートワークや周辺部品の配置も一貫した設計計画が立てられます。

電源ピンはどのパッケージでも1組で、左辺中央です。

STM32G0xシリーズパッケージピン配置(出典:STM32G0 and CubeMX Webinar)
STM32G0xシリーズのパッケージピン配置(出典:STM32G0 and CubeMX Webinar)

デフォルト利用周辺回路

STM32G0xのConnectivity(通信処理)は、デフォルトでLPUART1(Low Power UART、Stopモードからの再起動可)ですが、STM32F0xはUSARTです。STM32G0xもUSARTを実装していますが、低電力動作に適したLPUARTを推薦しているためと思います。

LPUARTとUSARTの差異(出典:STM32G0オンライントレーニング)
LPUARTとUSARTの差異(出典:STM32G0オンライントレーニング)

その他の差異

これら以外にも、STM32G0xは、USB Type-C™ Power Delivery controllerや2.5MspsのADC、メモリープロテクションなどIoT Edge MCU向きの周辺回路を実装済みです。

また、Nucleo-G071RB評価ボードのUSBはMicro-Bコネクタ、Nucleo-F072RBはMini-Bコネクタです。

USB Micro-BとMini-Bコネクタ(出典:ウィキペディア)
USB Micro-BとMini-Bコネクタ(出典:ウィキペディア)

まとめ

STM32G0x専用テンプレート開発に使うTrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール方法を示し、そのSTM32CubeMXを使ってSTM32G0xとSTM32F0xの差異を示しました。

STM32CubeMXは2重起動可能です。STM32G0xとSTM32F0xそれぞれのSTM32CubeMXプロジェクトファイルを同時に開いて比べると、各デバイスのデータシートで比べるより差異が早く良く判ります。

STM32G0x専用テンプレート開発IDEには、当面、筆者が好きなSW4STM32が適していることも判りました。



STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰

STM32G0x専用テンプレートの開発着手にあたり、汎用STM32Fxテンプレート開発から2017年9月のテンプレート発売までをざっと振り返り、今回の専用開発との差分になりそうな箇所を示しSTM32G0x専用テンプレート開発全体像を俯瞰、力を入れる投稿予定を示します。

汎用STM32Fxテンプレート開発History

汎用STM32Fxテンプレート開発時の主な投稿と内容
年月日 投稿タイトル 主な内容
2017年5 STM32マイコンIDE構築 SW4STM32の構築
2017年6 STM32CubeMXの使い方 HAL APIの選定理由と利用法
STM32CubeMX生成ファイルのユーザ追記箇所 HAL利用時のユーザ追記箇所
2017年8 評価ボードの利用ピン指針 Baseboardとの接続指針
2017年9 STM32Fxテンプレート発売 汎用STM32Fxテンプレート発売

2017年5月当時は、4種ある無償IDEの中からマルチOS(Windows/MacOS/Linux)対応、仏/AC6社のSW4STM32を使いました。2017年末、無償IDE TrueSTUDIO提供のスウェーデン/Atollic社がSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)に買収され、公式にはTrueSTUDIOがSTM32マイコンの純正無償IDEに昇格(!?)したようです😅。

関連投稿:STM32のStep-by-Step Guideの、気になる点1:TrueSTUDIO参照

STM32G0x専用テンプレート開発IDE:TrueSTUDIO

そこで、STM32G0x専用テンプレート開発には、TrueSTUDIO無償版(Windows/Linux対応、MacOSなし)を使います。現在SW4STM32を使っている方にも判り易いようにTrueSTUDIOとの差分を説明する予定です。

但し、筆者はSW4STM32利用中の開発者が、あえてTrueSTUDIOに変更する必要は、今のところ少ないと考えています。ソフトウェア開発の主役は、STM純正コード生成ツールSTM32CubeMXだからです。最新STM32CubeMXを使えば、IDE差は少ないと今は思っています。

勿論、TrueSTUDIOの買収昇格時点でBetterなのは当然だと思います。専用テンプレート開発を通じBetterよりもSW4STM32からTrueSTUDIOへ変更するMust条件が判れば、本ブログでお知らせします。

Tips:STMの日本語資料強化の一環なのか、TrueSTUDIOはEclipseベースIDEなのにインストーラは日本語対応、メニューも日本語になっています(下図参照)。但し、C\ユーザ名\Atollic\TrueSTUDIO for STM32 9.3.0\Manuals\Generalにある重要マニュアル5種は全て英文です。例えば、SW4STM32プロジェクトのTrueSTUDIOインポート方法や注意点は、User GuideのP75~に英文で詳しく説明されています。

日本語対応のTrueSTUDIOメニュー
日本語対応のTrueSTUDIOメニュー

STM32CubeMX:LL API(Application Programing Interface)利用

STM32G0x専用テンプレートは、汎用STM32Fxテンプレート開発で使ったHAL(Hardware Abstraction Layer)APIに変わりLL(Low Layer)APIを使います。LL利用により、STM32CubeMX生成ファイルの初期化コードやユーザ追記箇所がHALとは異なります。LL APIの利用は、専用テンプレートの肝ですので、ブログで詳しく説明します。

IoTサービス例:2.5Msps12ビットADC必須+α

汎用STM32Fxテンプレートは、Baseboardと評価ボードを接続し、基本動作完成形のBaseboardテンプレートを開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、Arduinoコネクタに何らかのIoTサービスを示すシールドを接続する予定です。しかし、最悪の場合、汎用と同じBaseboard接続にする可能性もあります。

ただし、特に2.5Mspsの12ビットADCは、3タイプある全STM32G0xデバイスに実装済みで、IoTサービス必須機能ですので、このADCを活かしたIoTサービスは実装必須にします。その他のIoTサービスに関しては、今後決めます。

2.5Msps12ビットADC (RM0444より)
2.5Msps12ビットADC (出典:RM0444)

STM32G0x専用テンプレート発売:2019/3Q~

汎用STM32Fxテンプレートは、5か月の期間で開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、HALよりもLL API利用難易度が高いことを考慮すると、最低でも同じ開発期間が必要だと思います。

STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰の結果

以上、STM32G0x専用テンプレート開発の全体像を俯瞰しました。
SW4STM32からTrueSTUDIO IDEへの変更必要性、STM32CubeMX のLL API利用法、全STM32G0xデバイス実装済みでIoTサービス必須機能2.5Msps12ビットADC使用法、これらを読者の方々が理解できよう力を入れて投稿記事を作成します。

STM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発

本稿は、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のSTM32G0xデバイス(Cortex-M0+/60MHz)が、汎用MCUのSTM32Fx(F0/Cortex-M0/48MHz、F1/Cortex-M3/72MHz)と異なり、IoT向きの新世代Edge MCUであること、そのテンプレート開発も汎用STM32Fxテンプレートと異なること、これら理由を説明します。

まとめ

はじめに内容をまとめた表1と表2、図1を示し、次章からその詳細理由を説明します。

要するに、STM32G0xデバイスのIoT Edge MCU向きの広いハードウェア性能を活かすには、LL(Low Layer)APIを利用したSTM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発が得策だということです。

表1 STM32G0xデバイスとSTM32F0/F1デバイスのハードウェア差
デバイス名 製造プロセス コア 最大動作周波数 Edge MCU向き周辺回路
STM32G0x
デバイス
70nm Cortex-M0+ 60MHz 2.5Msps 12ビットADC、USB Type-C、暗号化処理
STM32F0/F1
デバイス
120nm Cortex-M0/M3 48/72MHz 特になし(汎用MCU)
表2 STM32G0x Edge MCUテンプレートとSTM32Fxテンプレートの違い
テンプレート名 使用API 流用性 動作確認評価ボード IoTサービス 重点ポイント
STM32G0x Edge MCU
テンプレート
LL(+HAL) 低い STM32G071RB 今後決める(TBD) STM32G0x性能発揮
STM32Fx
テンプレート
HAL 高い STM32F072RB
STM32F103RB
特になし(汎用) デバイス間移植・流用性
テンプレート開発の方向性
図1 テンプレート開発方向性。同じメインストリームMCUでもSTM32G0xデバイスは専用性、STM32Fxデバイスは汎用性重視。

STM32G0xデバイス(Cortex-M0+/60MHz)の特徴

STMの場合、新世代Edge MCUと従来MCUの最も異なる点は、製造プロセスです。STM32G0xは70nm、STM32Fxは120nmの製造プロセスです。

製造プロセスによる性能差は、Intelプロセサでお馴染みだと思います。ごく簡単に言うと、製造プロセスを小さくすると、全く同じMCUでも、動作周波数が上がり、消費電力は下がる、販売コストも下がるなど、良いこと尽くめの効果が期待できます。

さらにSTM32G0xは、Cortex-M0の電力消費を改良しCortex-M3の良さを取り入れたCortex-M0+コアを採用しています。つまり、コアと製造プロセスの両方でCortex-M0のSTM32F0デバイスを上回り、動作周波数をCortex-M3のSTM32F1デバイス72MHzに近い60MHzとしたことで、STM32F1と同程度の高性能なのに超低電力動作します。まさに新世代のIoT MCUです。

また、2.5Mspsの12ビットADC、USB Type-C、暗号化処理などEdge MCUに相応しい周辺回路を実装しています(3タイプあるデバイスで実装周辺回路を変え、低価格供給中)。

STM32G0xデバイスとSTM32F0/F1デバイスのハードウェア差をまとめたのが表1です。STM32G0x出現で、STM32F1/F0デバイスで開発する意味は、低下したとも言えるでしょう。
※但し、他デバイスへの移植性・流用性を重視した開発ならSTM32F1/F0デバイスを使い汎用STM32Fxテンプレート使う意味は依然として大きいです。

現在はSTMから何のアナウンスもありませんが、STM32G0xと同じ70nm製造プロセスでCortex-M3/≦100MHzの上位デバイスSTM32G1xが発売されれば、なおさら低下します。

関連投稿に上記特徴の出典などがあります。
関連投稿:守備範囲が広いSTM32G0
関連投稿:STM新汎用MCU STM32G0

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートと汎用STM32Fxテンプレートの違い

STM32Fxテンプレートは、ハードウェア差を隠蔽するHAL(Hardware Abstraction Layer)APIを使い、万一性能不足などでデバイスを変える事態が生じても、同じソフトウェアを使えます。従って、STM32F0とSTM32F1の両デバイスで動作するアプリケーションが、ほんの少しの修正で素早く作成できます。

これは、HALのおかげです。HALがデバイスや周辺回路差を吸収するため、アプリケーション側は移植性の高いシンプルな記述ができるのです。その副作用として、アプリケーション記述コードは少なくてもコンパイル後のコードサイズは、周辺回路を直接制御するLL(Low Layer)に比べ大きくなります。

関連投稿:STM32CubeMXの使い方、STM32CubeMXの2種ドライバライブラリの章参照

HALを使うと言うことは、たとえデバイスが変わっても開発したソフトウェアとその労力を無駄にせず、流用・応用できることが最大のメリットです。

汎用「STM32Fxテンプレート」は、この流用・応用に適したテンプレートです。動作確認評価ボードは、STM32F072RBとSTM32F103RBのみですが、全ての汎用STM32Fxデバイスへ応用できます。勿論、ここで示したSTM32G0xデバイスにもこのHALを使う手法は適用可能です。

一方、「STM32G0x専用Edge MCUテンプレート」は、LL APIを使います。つまり、STM32G0x専用のテンプレートです。※LL APIは、使用デバイスにより異なるので専用テンプレートになります。

STM32G1xデバイスが持つCortex-M0からCortex-M3までをカバーする広い適用力と超低電力動作を活かすには、ソフトウェア開発にHAL比60~80%の高速処理のLLを使った方が得策と判断しました。

つまり、STM32G0xデバイスをEdge MCUと認め、そのSTM32G0xの性能や能力を十分に発揮する専用テンプレートがSTM32G0x専用Edge MCUテンプレートです。
※但し、流用性が高い一部機能には、HAL活用も考慮中です。LLとHALは混在可能です。

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートと汎用STM32Fxテンプレートの違いをまとめたのが表2、テンプレート開発の方向性を示したのが図1です。

STM32G0x Edge MCU評価ボード選定

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートの動作確認評価ボードには、Nucleo-G071RB(¥1,203)を予定しています。

前投稿で示したEdge MCUテンプレート評価ボードの3要件を再掲します。

  • R1. 低価格、入手先豊富なEdge MCU評価ボード <¥3,000
  • R2. 最新Edge MCU使用(2018年後半の新しいIoTトレンドに沿って開発されたEdge MCUであること)
  • R3. 何らかのIoTサービス例を簡単に示せる

これら3要件のうち、R3:何らかのIoTサービス例を示す要件がNucleo-G071RB 単独ではNGですが、Arduinoコネクタに何らかのIoTサービスシールドを追加することで満たす予定です。

評価ボードNucleo-G071RB
評価ボードNucleo-G071RB。64ピンパッケージでも電源供給が2本のみのなのでアートワーク担当者が喜ぶ。

※STM32G0xデバイスの評価ボードで、IoTのUSB Type-Cサービスを示すSTM32G0 Discovery Kitや、暗号化処理サービスを示すSTM32G081B-EVALは、両方ともR3要件を満たしますが、価格要件R1<¥3,000を満たさないので利用を断念しました。

Edge MCU評価ボード要件と検索方法

前稿で示したEdge MCUテンプレート構想を具体化します。MCU動作だけでなく、IoTサービス例を、開発者個人が、低価格かつ簡単に示すことを目的とするこの新しい「Edge MCUテンプレート」は、弊社が従来から販売してきた「汎用MCUテンプレート」のアプローチとは少し異なります。

それは、テンプレート出力がMCU動作だけでなくIoTサービスも含めるからです。たとえEdge MCUであっても普通のデバイスです。ベンダーは、その評価ボードでEdge MCUの特性を活かしたIoTサービスを示す場合が多いです。
従って、Edge MCUテンプレートのポイントは、いかに上手くIoTサービスを示すベンダー評価ボードを選べるかに掛かっています。

本稿は、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件と、これら要件を満たす評価ボード検索方法を示します。

Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件

以下3要件を、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードと考えます。

  • R1. 低価格、入手先豊富なEdge MCU評価ボード <¥3,000
  • R2. 最新Edge MCU使用(2018年後半の新しいIoTトレンドに沿って開発されたEdge MCUであること)
  • R3. 何らかのIoTサービス例を簡単に示せる

要件(Requirements)を満たさない場合は、どの項目がNGかが解れば、開発者や場合によってはOKの場合もあります。¥3,000が低価格かは懐具合次第ですし、開発年度が新しいか古いか、何らかのIoTサービスなど、全て主観です。

ただ主観であっても、Edge MCU評価ボード選択にあたりR1~R3の要件があると、採否が簡単になります。仮に、最新Edge MCUでは無いが、低価格でIoTサービスも示せる評価ボードがあった場合には、「R2_NG」だが採用するなどの特例も取れます。そこで次に、この3要件を満たすEdge MCU評価ボードを効率的に選ぶ方法を示します。

3要件を満たすEdge MCU評価ボード検索方法

最新Edge MCUで、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードを選ぶには、Mouserの新製品(メーカー別)ページが便利です。DigiKeyやチップワンストップにも同様ページがありますが、サムネイル写真と概要付きなのでMouserが最も使いやすいと思います。

Mouser新製品ページ
Mouser新製品(メーカー別)ページ。メーカーロゴクリックで集計される。カテゴリ別や週別でも選べて便利。

例えば、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)をクリックすると、「発売日順」にサムネイルと商品名、概要が列挙されます。この中から、Edge MCUテンプレートに使えそうな評価ボードの商品詳細を読み、3要件で採否を判断すれば良いという訳です。

STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果
STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果。写真、製品名、概要が判る。

守備範囲が広いSTM32G0投稿で示したNucleo-G071RB(¥1,203)もこの方法で上位ページ、つまり新商品順に表示されるので、直に探せます。
※年始には1ページ目上部に示されたNucleo-G071RBが、2ページ目下部に示されました。STMは他ベンダー比、新製品が多いのにも驚かされます!
※このようにベンダー毎の新製品数、評価ボード搭載デバイスの単体価格なども簡単に分かる点がマウザー新製品ページの利点です。

NXP、サイプレス、ルネサスとベンダーを変えて上記検索をすれば、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードが簡単に見つかります。

ルネサスは投稿時3要件を満たすEdge MCU評価ボードなし

残念ながらベンダーをルネサスで検索しても、2月末時点では価格要件:R1を満たすEdge MCU評価ボードが見つかりません。

例えば、RL78ファミリのロードマップ投稿で示したRL78/G11評価ボードYQB-R5F1057A-TB(¥3,961…!)やYRPBRL78G11(¥6,437)※秋月電子でも¥4,320は、ともに¥3,000を超えます。

また、低価格がセールスポイントのRX評価ボードTarget Board for RX130/231/65NでもR1を満たしません。

つまり、ルネサスEdge MCU評価ボードは、他ベンダー比、どれも価格高めです。企業レベルでの購入なら問題ないでしょう。しかし、これら価格は、実装部品から推測しても“個人開発者は顧客として眼中に無いのでは(!?)”、とも疑われるコスパだと思います。

※東洋経済Online2月19日に、ルネサス急ブレーキのしかかる1兆円買収記事が掲載されています。ルネサスを応援したいのですが、Edge MCU評価ボード入手も含め、手を出しにくい状況です。

2018年IoTトレンドと2019年予想記事をEdge MCU開発者観点で読む

セキュリティ、産業IoT、通信事業者との連携、ウェアラブルデバイスという4テーマで2018年IoTドレンドとその予想結果、2019年のそれらを予想した記事がTechTarget Japanに掲載されています。

本稿はこの記事内容を、マイコン:MCU、特に本ブログ対象Edge MCU開発者の観点から読みたいと思います。

IoTサービス観点からの顧客目線記事

一言でIoTと言っても様々な観点があります。本ブログ読者は、殆どがMCU開発者なので、顧客がどのようなIoT開発を要求し、それに対して自社と顧客双方のビジネス成功をもたらす「ソリューション提供」が最も気にする点だと思います。

一方、要求を出す側の顧客は、記事記載の「IoTサービス」に注意を払います。そのサービス実現手段として、ベンダー動向やMCU開発者自身の意見を聞いてくるかもしれません。そんな時、日頃の技術動向把握結果を具体的に顧客に提示できれば、顧客案件獲得に有効なのは間違いありません。

顧客と開発者のIoT捉え方は異なる。
顧客はサービス観点でIoTを捉える。開発者はソリューション提供でIoTを捉える。

そこで、記事の4テーマ毎にEdge MCU開発者の観点、特にEdge MCU最新動向を関連投稿とともに示します。

セキュリティ

Edge MCUセキュリティ強化策として、昨年頃からMCUにセキュリティ機能を内蔵するか、または、MCU外付けに専用セキュリティチップを追加する動きが出始めました。
要するに、IoTではEdge MCUでデジタルデータ暗号化機能実装が必須になりつつあるのです。
関連投稿:守備範囲が広いSTM32G0のアクセス・ライン製品
関連投稿:IoTマイコンとセキュリティの色々なセキュリティ強化方法

産業IoT

産業機器データ収集と分析の重要性は顧客に認識されていますが、IoT導入は記事にあるように初期段階です。Edge MCUも、産業用にも流用できるメリットを示すIoT MCU新製品もありますが、車載用の新製品が多い状況です。
関連投稿:NXP新汎用MCU S32K1

通信事業者との連携

国により大きく異なる通信事業者とそのサービスや連帯を一言で表すことは困難です。ただし、日本国内でのIoTフィールドテストは、今一つ盛り上がりに欠ける感じが個人的にはします。やはり、黒船(海外発のIoT通信デファクトスタンダードとその普及)が必要かな?と思います。

ウェアラブルデバイス

Edge MCUに近距離無線通信(NFC)機能を搭載したり、AI機能(機械学習)を搭載しHuman Activity Recognition:人間活動認識を実現したりする新しいEdge MCI製品が登場しています。
関連投稿:NFCを使うLPC8N04のOTA
関連投稿:MCUのAI機能搭載

2019年2月18日速報:タイムリーなことに、Motor Fan Techという自動車関連の情報誌で、次世代ARM v8.1-Mアークテクチャが、業界最小の組み込みデバイス向けに、強力な信号処理を実現が掲載ました。次世代Cortex-Mプロセサは、機械学習(ML)パフォーマンスを最大15倍、信号処理パフォーマンスを最大5倍向上させるそうです。

IoTサービス例を顧客に示せるEdge MCUテンプレート構想

2018年3月の弊社LPC8xxテンプレートV2.5改版以降、新開発のマイコンテンプレートはありません。その理由は、記事にもあるIoTの急速な普及・変化が無かったことも1つの理由です。

これまでの弊社マイコンテンプレートの目的は、「開発者個人が低価格でMCU開発を習得すること」でした。このため、各ベンダーの汎用MCUとBaseboardを使い、そのMCU基本的動作開発までを1つの到達点としてきました。

2018年後半から新しいIoTトレンドに沿った新Edge MCUが各ベンダーから発売済みです。そこで、マイコンテンプレートも、顧客目線やその観点を取り入れた到達点へステップアップしようと思います。

顧客は単にMCUが動作するだけでなく、何かしらのサービス提供をしているIoT MCUを見たいでしょう。この「IoTサービス例を、開発者個人が、低価格かつ簡単に示せるマイコンテンプレート」が新しいEdge MCUテンプレートの構想です。

IoTサービス例を示すEdge MCUテンプレート
IoTサービス例を示すEdge MCUテンプレート

この場合の顧客とは、ビジネス顧客に限らず、開発者の上司や同僚、さらに、開発者自身でも良いと思います。開発結果がIoTサービスに関連していれば、誰でもその効果が判り易いハズです。

期待されているIoTサービスならば、開発者もMCU開発がより楽しく、その習得や応用サービスへの発展もより具体的かつアグレッシブになると思います。と言っても、クラウドを含めたIoTサービスを開発・提供するのは、個人レベルでは無理です。
従って、ほんの触り、一部分のIoTサービスになります。それでも、見る側からは、開発内容が解りやすくなります。

もはやMCUが動作するのは、当たり前です。その上で、+αとしてEdge MCUがIoTで出来るサービス例を示し、さらに、Edge MCU習得も効率的にできるのがEdge MCUテンプレートです。

今後開発するEdge MCUテンプレートは、IoTサービス指向の結果、これまでマイコンテンプレートが持っていた汎用性が少し犠牲になる可能性もあります。ただ、従来の汎用MCUの意味・位置づけもIoTで変わりつつあります。
関連投稿:RL78ファミリから解る汎用MCUの変遷
関連投稿:STM新汎用MCU STM32G0

MCU基本動作に加え、何らかのIoTサービス提供例を示す工夫をEdge MCUテンプレートへ加えるつもりです。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由

ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例
ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例

本稿は、Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由を、少し丁寧に説明します。上図は、Arduinoコネクタレベルでコンパチブル(=置換え可能)なSTマイクロエレクトロニクス、サイプレス・セミコンダクター、NXPセミコンダクターズ各社のMCU評価ボードを示しています。

Arduinoコネクタ

イタリア発で「オープンソースハードウェア概念」の発端となったArduino(アルデュイーノ、もしくはアルドゥイーノ)。その制御系とArduinoシールドと呼ばれる被制御系ボード間の物理インタフェースがArduinoコネクタ(右下)です。
I2C(SCL/SDA)/ADEF(アナログ基準電位)/DIGITAL(PWM兼用)/ IOREF(IO基準電位)/RESET/POWER/ANALOG INのピン配置が決まっています。

Arduinoコネクタのおかげで、制御系とシールドに分離して開発でき、それぞれをArduinoコネクタで接続すれば、Arduinoボードシステムが完成します。

Wikipediaによると、2013年には制御系とシールド、公式非公式合わせて140万台ものArduinoボードが販売されていて、安価にプロトタイプシステム構築が可能となっています。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1:市販安価シールド資産が使える

既にこれだけの数のシールドが販売中ですので、MCU開発にそのまま流用や小変更で使えるシールドもあります。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1が、この既製品で安価なシールド資産が使えるからです。使用部品選定やアートワークパターンなども十分に練られた既製品が入手できるのです。しかもこれらは殆どの場合、オープンソースハードウェアなので詳細が開示済みです。

シールドは縦方向に段重ね(スタッカブル)できますので、複数段を重ね機能増加も可能です。

ハードウエア基板を0から動作するレベルにまでもっていくのは、時間もコストも掛かります。市販シールドを利用したプロトタイプ開発が可能なことが、MCU評価ボードにArduinoコネクタを持つ理由です。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その2:MCU性能評価に使える

シールドを使ってハードウエアが用意されれば、後はソフトウェアです。

図のようにシールドは、複数ベンダーのMCU評価ボードに使えますし、同一ベンダー内の異なるMCUの性能評価にも使えます。

例えば、最も重要な処理に必要なシールドと、その制御ソフトウェアのみをプロトタイプ開発し、MCU性能が重要処理に十分か否かの評価を行います。この評価結果で、コストパフォーマンスに優れたMCU選択が可能となります。

場合によっては、ピンコンパチブル性を利用して他ベンダーのMCU選択も可能です。Cortex-M系MCUはどれも似通ってはいますが、例えば、サイプレスのPSoCシリーズはアナログブロントエンド機能内蔵など、各ベンダーでそれぞれ特徴があります。これらMCU特徴を活かした開発で競合他社との差別化もできます。

MCU評価ボードプロトタイプ開発スピードを上げるマイコンテンプレート

その1もその2もポイントは、プロトタイプ開発のスピードです。効率的に、しかも精度良くプロトタイプ構築し評価するには、MCU製品で使用頻度が高いLCD出力やアナログポテンショメータ入力、LED出力などの単機能シールドを複数使うよりも、これら機能実装済みの汎用Baseboardを使う方が、より低コストにプロトタイプハードウエアの構築ができます。

関連投稿:CY8CKIT-042とCY8CKIT-042-BLEへの機能追加、サンプルソフトが直に試せるマイコン開発環境の章

弊社マイコンテンプレートは、Baseboard動作に必要なソフトウェアをBaseboardテンプレートで提供済みです。開発要件に必要なシールドを見つけ、シールド単体でMCU性能評価を行い、さらにBaseboard実装機能を付加すれば、MCU製品完成形により近いプロトタイプシステムでの評価も可能です。

MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート
MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート

マイコンテンプレートは、MCU評価ボードプロトタイプ開発の「速さ」をより早めます。

MCU評価ボード、IDE、開発ツール、ベンダーが変わってもテンプレート本体は不変

テンプレート本体、具体的にはアプリケーションのLauncher機能は、MCU評価ボード、IDE、コード生成ツールなどの開発ツール、ベンダー各社には依存しません。つまり、単純なC言語でできています。

従いまして、開発ツールやIDEが時代により変化・更新しても、テンプレート本体は変わりません。ご購入頂いた弊社マイコンテンプレートの付属説明資料は、発売当時の環境をベースに解説しております。しかし、最新版のIDEやコード生成ツールに更新されても、このテンプレート本体は不変ですので、安心してお使いください。

まとめ

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由は、市販安価シールド資産を活用し、MCU性能評価へも活用すれば、MCUプロトタイプ開発が効率的かつ容易になるからです。プロトタイプ開発スピードをさらに上げるためマイコンテンプレートが役立つことも示しました。

マイコンは種類が多く、どのベンダーの何を使って開発すれば良いかというご質問を時々頂きます。お好きなベンダーのArduinoコネクタを持つMCU評価ボードを使ってプロトタイプ開発することをお勧めしています。制御系ベンダー差は、Arduinoコネクタで消えます。先ずは着手、あえて言えば被制御系の開発着手が先決です。

MCUパラメタ設定を改善したSTM32CubeMX version 5

2018年12月STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のMCUコード生成ツール:STM32CubeMXがversion 5にメジャー更新しました。本稿は、このSTM32CubeMX version 5について主に旧version 4をご利用中の方を対象に説明します。初めてSTM32CubeMXを利用される方は、インストール方法などは旧version 4で示したコチラの関連投稿と同じですのでご覧ください。

STM32CubeMX version 5への更新方法

STM32CubeMXは、スタンドアロンアプリケーションとして動作させる場合と、Eclipse IDEのプラグインとして動作させる場合があります。更新が簡単なのは、先に説明するスタンドアロン版です。Eclipse IDEは、SW4STM32を例にプラグイン更新方法を示します。

スタンドアロン版STM32CubeMXの更新方法

デフォルト設定を変えてなければ、STM32CubeMX起動時に自動的に更新を検出しInstall Nowクリックで最新版がダウンロードされます。ダウンロード後、一旦STM32CubeMXを終了し、再起動でversion 5への更新が始まります。

STM32CubeMX version 5への更新(スタンドアロン版)
STM32CubeMX version 5への更新(スタンドアロン版)

スタンドアロンの場合は、更新開始時Access Errorが表示されることもあります。この時は、「管理者として実行」で更新プロセスが始まり、STM32CubeMX version 5の初期画面になります。

STM32CubeMX version 5初期画面
STM32CubeMX version 5初期画面

Eclipse IDE(SW4STM32)プラグイン版STM32CubeMXの更新方法

Eclipse IDEのプラグインでSTM32CubeMX機能を追加した場合は、旧プラグインを削除した後にversion 5プラグインをインストールします。SW4STM32のプラグイン削除は、Help>About EclipseからInstallation Detailsボタンをクリックし、Installed Softwareタブから旧STM32CubeMXを選択、Uninstallまたは、Updateクリックで行います。

旧版STM32CubeMXプラグイン削除
旧版STM32CubeMXプラグイン削除

Uninstallの方が確実です。削除後、新しいSTM32CubeMX version 5プラグインを再インストールすれば、スタンドアロンと同じ初期画面が示されます。SW4STM32のUpdate checkでは、STM32CubeMXの更新を検出できませんので、手動でプラグイン削除、更新された新プラグインのインストールが必要です。

STM32CubeMX version 5改善点

version 5のユーザマニュアルUM1718 Rev 27から、以下の点がversion 4から改善されました。
関連投稿:MCU更新情報取得方法と差分検出ツール、の “2PDF資料を比較するDiffPDF” の章参照

・MCUパラメタ設定にマルチパネルGUI採用(UM1718、5章)
・CMSIS-Packサポート(UM1718、7章)
・X-Cube-BLE1ソフトウェアパック(UM1718、14章)
・ST-TouchGFX追加(UM1718、17章)

一言で言うと、5章:カラフルになったパラメタ設定、7章:CMSIS-Pack追加が可能、14章と17章:2チュートリアル追加です。CMSIS-Packとチュートリアルは、必要に応じて理解すれば良いでしょう。

そこで、基本操作の5章STM32CubeMX version 5のパラメタ設定を、弊社STM32F0シンプルテンプレートで用いたSTM32CubeMX version 4プロジェクトファイルを使って説明します。
※STM32F0シンプルテンプレート(¥1,000販売中)をご購入頂いてない方のために、上記プロジェクトファイルのみをコチラから無料でダウンロードできます(zipファイルですので解凍してご利用ください)。

マルチパネルGUIによるMCUパラメタ設定改善の実例

Open Existing Projectsで上記STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトファイル:F0SimpleTemplate.iocを選択すると、旧versionで作成されていること、FWも更新されていて、最新環境へ更新(Migrate)するか、FWはそのままSTM32CubeMXのみ更新(Continue)かの選択肢が表示されます。
※MigrateとContinueの差は後述します。

旧版プロジェクトファイルを開いた時のメッセージ
旧版プロジェクトファイルを開いた時のメッセージ

今回は、Migrateを選択すると、見慣れたPinout & Configuration画面が現れます。

STM32F0シンプルテンプレートのプロジェクトを開いた画面
STM32F0シンプルテンプレートのプロジェクトをversion 5で開いた画面

Connectivity >を開くと、STM32F0シンプルテンプレートで使用中USART2の各種パラメタ設定値がマルチパネルで表示されます。

STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトのUSART2マルチパネル画面
STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトのUSART2マルチパネル画面

このマルチパネル表示がversion 5で最も改善された機能です。従来版では、複数タブで分離表示されていた設定が、1画面のユーザインタフェース:UIに集約されました。より解りやすく、より簡単にMCUパラメタ設定ができます。

その他の機能は、カラフルな見た目になってはいますが、旧versionと殆ど同じと考えて良いと思います(開発元には失礼ですが…😅)。不明な点は、HelpでUM1718が直に表示されるので調べられます。

また、販売中の弊社STM32Fxテンプレート付属説明資料のSTM32CubeMXは、version 4で説明しておりますが、この程度の改版ならば、説明資料をversion 5用に作り直さなくても、ご購入者様に内容をご理解頂けると思います。

旧版プロジェクトファイルを開いた時のMigrateとContinueの差

STM32CubeMXは、UIをつかさどる共通部分と、STM32MCUファミリ毎の個別ファームウエア:FW部分の2つから構成されています。本稿は、UI共通部分の更新を説明しました。FWもバグとりや、ファミリへの新MCU追加などで更新されます。周辺回路の初期化CコードやHAL:Hardware Abstraction Layer library 、LL: Low-Layer library利用のAPI生成は、FW部分が担います。

Migrateは、このUIとFWを同時に最新版へ更新します。一方、Continueは、UI部分のみ更新しFWは既存のままです(安全側更新とも言えます)。FW更新で既製ソフトウェアへ悪影響がでる場合には、Continueを選択することもあるでしょう。しかし、基本的にはUI、FWともに最新版へ更新するMigrateが本来の更新方法です。

万一FW更新でトラブルが発生した時は、デフォルトでSTM32Cube>Repositoryフォルダに新旧FWがzipファイルで保存されていますので、FWのみ元に戻すことも容易です。

*  *  *

Postscript:24日午前3時~午前4時5分に実施されたSTM32G0 and STM32CubeMX 5.0ウェブナーどうでしたか? 解りやすいスライドが豊富で、STM32G0の良さがより理解できました。全機能無償のKeil uVision5対象デバイスにSTM32L0、STM32F0とSTM32G0も加わりました。STM32CubeMX 5.0と評価ボードNUCLEO-G071RBを使ったLチカコード生成も解りやすかったですね😃。
※タイムリーなことに、1月25日STM公式ブログ上で上記一連の処理がYouTubeに投稿されました。

さて、ウェブナー参加で目から鱗が落ちたのは、STM32G0の広い応用範囲と低電力動作を活かすには、デバイス間移植に優れるHAL APIよりも、デバイス最適化のLL API利用が適してかもしれない点です。
HAL利用のSTM32Fxテンプレートとは異なるアプローチ、例えば、STM32Gxテンプレートの新開発が必要になりそうです👍。

関連投稿:HALとLLの違いは、STM32CubeMXの使い方、“STM32CubeMXの2種ドライバライブラリ”の章参照
関連投稿:STM32Fxテンプレートのアプローチは、STM32評価ボードNUCLEO-F072RB選定理由参照

2018 IoT MCUを振り返る

今年も多くの方々に本HappyTechブログをご覧いただき、また、多くの方々にマイコンテンプレートをご購入いただいたことに心より感謝いたします。ありがとうございました。

2018年の弊社ブログ投稿を振り返って、IoT MCUの2018動向を総括します。

ノードとエッジに2層化するIoT MCU

IoT時代には、数十億個以上もの膨大な数が必要と言われるIoTエッジMCU、これが本ブログ対象マイコンです。低コスト、低消費電力、効率的ハードウェア/ソフトウェア生産性が求められます。

これらIoTエッジMCUを束ね、クラウドと無線通信するのがIoTノードMCU。IoT MCUは、ノードとエッジの2層化傾向があります。

IoT MCU日本ベンダー動向

ルネサス エレクトロニクス:アナログフロントエンド強化の買収継続
NXPセミコンダクターズ:クアルコム買収断念で独自性維持
サイプレス・セミコンダクター:超低電力Cortex-M0+製品強化
STマイクロエレクトロニクス:日本語資料強化

自動車と産業、セキュリティがIoT MCUを牽引

超高性能、セキュリティ、CAN FD、低電力が自動車向け要求、同じくセキュリティ重視だが、コストパフォーマンスも重視、低電力が産業向け要求、両要求ベクトルがIoT MCUベンダー開発を牽引中。

MCUコアのこだわり不要

要求を満たすには広いMCUカバー能力と低電力動作が必要で、Cortex-M0+とCortex-M4のマルチコアや、シングルコア動作周波数の引上げが見られます。製造プロセス微細化も進むでしょう。

エンドユーザ(顧客)は、いわゆるソリューション(解)を求めていて、要求を満たせばMCUコアが何でも構わないので、開発者は、手段であるMCUコアにこだわる必要性を少なくすることが求められます。

つまり、最適ソリューションのハードウェア/ソフトウェアを、様々なベンダー、MCUから自ら選択し、効率的に解を提供できるIoT MCU開発者がプロフェッショナルです。

そこで、ソリューション提供・提案をする開発者個人向けツールとして、弊社マイコンテンプレートを発展させる予定です。ブログ対象IoT MCUも、この基準にフォーカスし情報提供します。

以上簡単ですが2018年のIoT MCUを総括しました。2019年も引き続きよろしくお願いいたします。

STM新汎用MCU STM32G0

2018年12月4日、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)の公式ブログで新汎用MCU STM32G0、Cortex-M0+/64MHzを発表しました。以下の特徴があります。
※汎用=メインストリームと本稿では考えます。

新汎用STM32G0、Cortex-M0+/64MHz、メインストリーム90nmの特徴

STM32メインストリームMCU
STM32メインストリームMCU:STM32FxとSTM32G0の違い(出典:STM32 Mainstream)
  • 「メインストリーム初の90nmプロセスMCU」:従来メインストリームSTM32F0は180nmプロセス
  • 「ハイブリッド」:STM32L4(90nmプロセス)の低消費電力とSTM32F0のメインストリームの両方をハイブリッド
  • 「モアIO」:64ピンパッケージSTM32F071比較でIOピン9本増加、48ピンでもIOピン7本増加
  • 「単一電源供給」:PCBパターン設計が容易
  • 「セキュリティハード内蔵/非内蔵」:128/256ビットAES、セキュアブート、乱数発生器、Memory Protection Unit (MPU)
  • 「USB-C」: IPによりUSB-Type-C可能
  • NUCLEO-G071RB board」:低価格評価ボード提供中、「STM32G081B-EVAL board」:$382
STM32G0ラインナップ (出典:STM公式ブログ)
供給中の3種製品とSTM32G0ラインナップ (出典:STM公式ブログ)
STM32G0 Product Lines(出典:STM32G0 Serie Presentation)
STM32G0 Product Linesから3種製品の違いが解る(出典:STM32G0 Series Presentation)

STM32G0オンライントレーニング

データシートよりも解りやすいSTM32G0オンライントレーニング資料が多数あります(要ログイン)。

例えば、以下のような興味深い情報が得られます。各数ページの英文スライド形式ですので、STM32G0以外のMCUを使用中の方でも、チョットした空き時間に読めます。

  • STM32G0 Series Presentation:内蔵ハードウェアによりValue/Access/Access & Encryptionの3種製品特徴
  • ARM Cortex-M0+ (Core):Cortex-M0とM0+の差、Memory Protection Unit 説明
  • Safety:安全基準とその実現方法
  • Random Number Generator (RNG):アナログノイズに基づいた32ビット乱数発生
  • STM32G0 Boards:NUCLEO-G071RB board解説

STM32CubeMX V5.0.0

STM32G0のコード生成は、STM32CubeMX V5.0.0からサポートされました。

V4までと同じSW4STM32、TrueSTUDIO、両方のIDEで使えます。STM32CubeMX V5が提供するMCUファームパッケージで、本ブログ関連を抜粋したのが下表です。

STM32CubeMX V5.0.0提供MCUファームウェア版数
対象MCU firmware(評価ボード、STM32G0ボード暫定) 最新Version
STM32F1(STM32F103RB、Cortex-M3/64MHz V1.7.0
STM32F0(STM32F072RB、Cortex-M0/48MHz V1.9.0
STM32G0(V5で新設、STM32G071RB、Cortex-M0+/64MHz V1.0.0

STM32Fxテンプレートでも使用中のHAL(Hardware Abstraction Layer)ライブラリでコード生成すれば、STM32F1、STM32F0とSTM32G0間で、流用/応用が容易なソフトウェア開発ができると思います。

まとめ

新発売のSTM32G0は、90nmプロセス初のメインストリーム汎用MCUです。一般的に製造プロセスを微細化すれば、動作クロックが高速になり電力消費も低下します。さらに、STM32G0は、Cortex-M0より性能が向上したCortex-M0+コアの採用により、Cortex-M3のSTM32F1クラスに並ぶ高性能と超低消費電力動作をハイブリッドした新汎用MCUと言えます。

周辺回路では、IoTで懸念されるセキュリティ対策をハードウェアで実施、IOピン数増加、PCB化容易、USB-Type Cインタフェース提供など、各種IoTエッジMCU要求を満たす十分な魅力を持つMCUです。

競合するライバルMCUは、Cortex-M0+のNXP S32K116/S32K118(2018/7発売)などが考えられます。

関連投稿:NXP新汎用MCU S32K1

NXP新汎用MCU S32K1

NXPセミコンダクターズ(以下NXP)から車載・産業機器向けの、新しい汎用Cortex-M0+/M4 MCU S32K1ファミリが発売中です。
同社の汎用MCUと比べ、何が新しいかを調べました。

S32K1の特徴(汎用MCUとの差分)

セキュリティ強化ARMコアは、Cortex-M23/M33があります。ところが、NXPのS32K1ファミリは、従来のCortex-M0+/M4コアを使います。Cortex-M0/M0+/M3汎用MCUと比べると、差分として以下の特徴があります。

AEC-Q100グレード1規格準拠

AEC-Q100:Automotive Electronics Council、車載用電子部品信頼性の規格化団体の規格AEC-Q100は、世界標準規格で欧米の車載向け集積回路の規格。製品使用温度範囲によりグレード0~3まであり、グレード0が-40℃から+150℃で最も広範囲、グレート1は-40℃から+125℃。

セキュリティ強化ハードウェア内蔵MCU

SHE準拠Cryptographic Services Engine (CSEc) - AES128、セキュアブート、ユニークID

専用IDEのソフトウェア開発

S32 Design Studio(Processor Expert)、無償、コードサイズ制限なし

車載・産業 両方向けの汎用MCUで最低15年供給

S32K11x(Cortex-M0+):S32K116/S32K118(2018/7発売)、評価ボード$49
S32K14x(Cortex-M4):S32K142/S32K144/S32K146/S32K148(2017/12発売)、評価ボード$49/$149

S32K MCUs for Automotive and Industrial Applicationsから抜粋したS32K1ファミリの特徴が下図です。図はAEC-Q100グレード0と表記がありますが、Cortex-M0+のS32K11xは、データシートによるとグレード1です。

S32K1特徴
S32K1の特徴 (出典:S32K MCUs for Automotive and Industrial Applications)

S32K118EVB-Q064はDigiKeyで購入可能

新汎用MCUのセキュリティ強化策と専用IDE:S32 Design Studio(Processor Expert)

IoTでは汎用MCUであってもセキュリティ強化が必須です。現在、対策として3アプローチあります。

  1. 汎用コアMCUに、セキィリティ強化回路を内蔵(本稿)
  2. 汎用コアMCUに、外付けセキュリティデバイスを追加 → 関連投稿:セキュリティ強化デバイス:A71CH
  3. セキュリティ強化コアを採用 → 関連投稿:セキュリティ強化ARMコアCortex-M23/M33

1のメリットは、2と比べ部品点数が少ないこと、3と比べ従来の汎用コア開発との親和性が高く、セキュリティ関連開発が容易になる可能性があることです。

専用IDE:S32 Design StudioのAPI生成ツールは、旧FreescaleのProcessor Expertです。NXPが、なぜ既存LPCXpresso IDEでなく、専用S32 Design studioとProcessor Expertを用いたかは不思議です。が、Processor Expertという優れたAPI生成ツールのことを知っている開発者にとっては朗報になるかもしれません。

S32K1の魅力:車載・産業機器・IoT全共用

現在のS32K1ファミリ想定アプリケーションは下記です。車載・産業向けに別々のS32K1が有るわけではなく共用です。

S32Kアプリケーション
S32Kアプリケーション(出典:車載・産業機器向け Arm® Cortex®ベース S32Kマイクロコントローラ (REV 3.1))

2017~2018年に供給が始まり、最低15年の供給保障、全てに評価ボードもあります。Cortex-M0+とCortex-M4間の接続は、次世代車載ネットワークCAN FDです。

S32K14x(Cortex-M4)がNode MCU化しIoT無線通信機能を実装すれば、S32K11x(Cortex-M0+)をEdge MCUとして利用可能で、S32K1が「車載・産業機器・IoT全てを狙える新しい汎用MCU」に大化けする可能性はあると思います。

関連投稿:Node MCUとEdge MCU、気になる点2の章参照

そのほか、FlexIO、FlexTimerなどの新しい周辺回路も実装されていますので、S32K1を引き続き調査する予定です。