STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰

STM32G0x専用テンプレートの開発着手にあたり、汎用STM32Fxテンプレート開発から2017年9月のテンプレート発売までをざっと振り返り、今回の専用開発との差分になりそうな箇所を示しSTM32G0x専用テンプレート開発全体像を俯瞰、力を入れる投稿予定を示します。

汎用STM32Fxテンプレート開発History

汎用STM32Fxテンプレート開発時の主な投稿と内容
年月日 投稿タイトル 主な内容
2017年5 STM32マイコンIDE構築 SW4STM32の構築
2017年6 STM32CubeMXの使い方 HAL APIの選定理由と利用法
STM32CubeMX生成ファイルのユーザ追記箇所 HAL利用時のユーザ追記箇所
2017年8 評価ボードの利用ピン指針 Baseboardとの接続指針
2017年9 STM32Fxテンプレート発売 汎用STM32Fxテンプレート発売

2017年5月当時は、4種ある無償IDEの中からマルチOS(Windows/MacOS/Linux)対応、仏/AC6社のSW4STM32を使いました。2017年末、無償IDE TrueSTUDIO提供のスウェーデン/Atollic社がSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)に買収され、公式にはTrueSTUDIOがSTM32マイコンの純正無償IDEに昇格(!?)したようです😅。

関連投稿:STM32のStep-by-Step Guideの、気になる点1:TrueSTUDIO参照

STM32G0x専用テンプレート開発IDE:TrueSTUDIO

そこで、STM32G0x専用テンプレート開発には、TrueSTUDIO無償版(Windows/Linux対応、MacOSなし)を使います。現在SW4STM32を使っている方にも判り易いようにTrueSTUDIOとの差分を説明する予定です。

但し、筆者はSW4STM32利用中の開発者が、あえてTrueSTUDIOに変更する必要は、今のところ少ないと考えています。ソフトウェア開発の主役は、STM純正コード生成ツールSTM32CubeMXだからです。最新STM32CubeMXを使えば、IDE差は少ないと今は思っています。

勿論、TrueSTUDIOの買収昇格時点でBetterなのは当然だと思います。専用テンプレート開発を通じBetterよりもSW4STM32からTrueSTUDIOへ変更するMust条件が判れば、本ブログでお知らせします。

Tips:STMの日本語資料強化の一環なのか、TrueSTUDIOはEclipseベースIDEなのにインストーラは日本語対応、メニューも日本語になっています(下図参照)。但し、C\ユーザ名\Atollic\TrueSTUDIO for STM32 9.3.0\Manuals\Generalにある重要マニュアル5種は全て英文です。例えば、SW4STM32プロジェクトのTrueSTUDIOインポート方法や注意点は、User GuideのP75~に英文で詳しく説明されています。

日本語対応のTrueSTUDIOメニュー
日本語対応のTrueSTUDIOメニュー

STM32CubeMX:LL API(Application Programing Interface)利用

STM32G0x専用テンプレートは、汎用STM32Fxテンプレート開発で使ったHAL(Hardware Abstraction Layer)APIに変わりLL(Low Layer)APIを使います。LL利用により、STM32CubeMX生成ファイルの初期化コードやユーザ追記箇所がHALとは異なります。LL APIの利用は、専用テンプレートの肝ですので、ブログで詳しく説明します。

IoTサービス例:2.5Msps12ビットADC必須+α

汎用STM32Fxテンプレートは、Baseboardと評価ボードを接続し、基本動作完成形のBaseboardテンプレートを開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、Arduinoコネクタに何らかのIoTサービスを示すシールドを接続する予定です。しかし、最悪の場合、汎用と同じBaseboard接続にする可能性もあります。

ただし、特に2.5Mspsの12ビットADCは、3タイプある全STM32G0xデバイスに実装済みで、IoTサービス必須機能ですので、このADCを活かしたIoTサービスは実装必須にします。その他のIoTサービスに関しては、今後決めます。

2.5Msps12ビットADC (RM0444より)
2.5Msps12ビットADC (出典:RM0444)

STM32G0x専用テンプレート発売:2019/3Q~

汎用STM32Fxテンプレートは、5か月の期間で開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、HALよりもLL API利用難易度が高いことを考慮すると、最低でも同じ開発期間が必要だと思います。

STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰の結果

以上、STM32G0x専用テンプレート開発の全体像を俯瞰しました。
SW4STM32からTrueSTUDIO IDEへの変更必要性、STM32CubeMX のLL API利用法、全STM32G0xデバイス実装済みでIoTサービス必須機能2.5Msps12ビットADC使用法、これらを読者の方々が理解できよう力を入れて投稿記事を作成します。



エレクトロニクス分析専門家が見るルネサス

本ブログに開発者の立場で何度かルネサスエレクトロニクス批判(本心は応援?)をしましたが、エレクトロニクス分析専門家、大山 聡氏(グロスバーグ代表)がEE Times Japanに寄稿された「なぜルネサスは工場を停止しなければならないのか ーー 半導体各社のビジネスモデルを整理する」で、数値分析結果を示され、明確な危機感・不安感に変わりました。

NXP、STMと大きく異なるルネサスのSG&A

SG&A(selling, general and administrative expenses)は、販売費及び一般管理費のことで、顧客に対するサポート負担経費を示します。売り上げ11%が業界平均なのに、ルネサスは19%と吐出しています。原因は、Intersil買収。巨額IDT買収は、今後の負担としてさらに悪化する方向になるようです。

関連投稿:ルネサスのIDE買収とリスク分散ルネサスエレクトロニクス、IDE買収

詳しくは、寄稿内にあるグロスバーグ作成の「主な半導体メーカーのR&Dおよび、SG&A比較」図を見ると一目瞭然です。

個人開発者としてルネサスの統合開発環境や評価ボードの価格の高さは、いかがなものか(でもルネサスを贔屓するバイアスはありました)と思ってきましたが、この寄稿を読んで国産MCUの先行きに不安感が大きくなりました。

技術的に勝っていてもビジネスでは成功しない例は、日本では多い歴史があります。

日立、三菱、NECの統合・融合したルネサス、日本全体の地盤沈下が見え隠れするなか、国産MCU技術力も同じ歴史をたどるのでしょうか?
もし自分がルネサスMCU研究開発担当なら、このままでライバルと競えると考えるでしょうか?

STM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発

本稿は、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のSTM32G0xデバイス(Cortex-M0+/60MHz)が、汎用MCUのSTM32Fx(F0/Cortex-M0/48MHz、F1/Cortex-M3/72MHz)と異なり、IoT向きの新世代Edge MCUであること、そのテンプレート開発も汎用STM32Fxテンプレートと異なること、これら理由を説明します。

まとめ

はじめに内容をまとめた表1と表2、図1を示し、次章からその詳細理由を説明します。

要するに、STM32G0xデバイスのIoT Edge MCU向きの広いハードウェア性能を活かすには、LL(Low Layer)APIを利用したSTM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発が得策だということです。

表1 STM32G0xデバイスとSTM32F0/F1デバイスのハードウェア差
デバイス名 製造プロセス コア 最大動作周波数 Edge MCU向き周辺回路
STM32G0x
デバイス
70nm Cortex-M0+ 60MHz 2.5Msps 12ビットADC、USB Type-C、暗号化処理
STM32F0/F1
デバイス
120nm Cortex-M0/M3 48/72MHz 特になし(汎用MCU)
表2 STM32G0x Edge MCUテンプレートとSTM32Fxテンプレートの違い
テンプレート名 使用API 流用性 動作確認評価ボード IoTサービス 重点ポイント
STM32G0x Edge MCU
テンプレート
LL(+HAL) 低い STM32G071RB 今後決める(TBD) STM32G0x性能発揮
STM32Fx
テンプレート
HAL 高い STM32F072RB
STM32F103RB
特になし(汎用) デバイス間移植・流用性
テンプレート開発の方向性
図1 テンプレート開発方向性。同じメインストリームMCUでもSTM32G0xデバイスは専用性、STM32Fxデバイスは汎用性重視。

STM32G0xデバイス(Cortex-M0+/60MHz)の特徴

STMの場合、新世代Edge MCUと従来MCUの最も異なる点は、製造プロセスです。STM32G0xは70nm、STM32Fxは120nmの製造プロセスです。

製造プロセスによる性能差は、Intelプロセサでお馴染みだと思います。ごく簡単に言うと、製造プロセスを小さくすると、全く同じMCUでも、動作周波数が上がり、消費電力は下がる、販売コストも下がるなど、良いこと尽くめの効果が期待できます。

さらにSTM32G0xは、Cortex-M0の電力消費を改良しCortex-M3の良さを取り入れたCortex-M0+コアを採用しています。つまり、コアと製造プロセスの両方でCortex-M0のSTM32F0デバイスを上回り、動作周波数をCortex-M3のSTM32F1デバイス72MHzに近い60MHzとしたことで、STM32F1と同程度の高性能なのに超低電力動作します。まさに新世代のIoT MCUです。

また、2.5Mspsの12ビットADC、USB Type-C、暗号化処理などEdge MCUに相応しい周辺回路を実装しています(3タイプあるデバイスで実装周辺回路を変え、低価格供給中)。

STM32G0xデバイスとSTM32F0/F1デバイスのハードウェア差をまとめたのが表1です。STM32G0x出現で、STM32F1/F0デバイスで開発する意味は、低下したとも言えるでしょう。
※但し、他デバイスへの移植性・流用性を重視した開発ならSTM32F1/F0デバイスを使い汎用STM32Fxテンプレート使う意味は依然として大きいです。

現在はSTMから何のアナウンスもありませんが、STM32G0xと同じ70nm製造プロセスでCortex-M3/≦100MHzの上位デバイスSTM32G1xが発売されれば、なおさら低下します。

関連投稿に上記特徴の出典などがあります。
関連投稿:守備範囲が広いSTM32G0
関連投稿:STM新汎用MCU STM32G0

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートと汎用STM32Fxテンプレートの違い

STM32Fxテンプレートは、ハードウェア差を隠蔽するHAL(Hardware Abstraction Layer)APIを使い、万一性能不足などでデバイスを変える事態が生じても、同じソフトウェアを使えます。従って、STM32F0とSTM32F1の両デバイスで動作するアプリケーションが、ほんの少しの修正で素早く作成できます。

これは、HALのおかげです。HALがデバイスや周辺回路差を吸収するため、アプリケーション側は移植性の高いシンプルな記述ができるのです。その副作用として、アプリケーション記述コードは少なくてもコンパイル後のコードサイズは、周辺回路を直接制御するLL(Low Layer)に比べ大きくなります。

関連投稿:STM32CubeMXの使い方、STM32CubeMXの2種ドライバライブラリの章参照

HALを使うと言うことは、たとえデバイスが変わっても開発したソフトウェアとその労力を無駄にせず、流用・応用できることが最大のメリットです。

汎用「STM32Fxテンプレート」は、この流用・応用に適したテンプレートです。動作確認評価ボードは、STM32F072RBとSTM32F103RBのみですが、全ての汎用STM32Fxデバイスへ応用できます。勿論、ここで示したSTM32G0xデバイスにもこのHALを使う手法は適用可能です。

一方、「STM32G0x専用Edge MCUテンプレート」は、LL APIを使います。つまり、STM32G0x専用のテンプレートです。※LL APIは、使用デバイスにより異なるので専用テンプレートになります。

STM32G1xデバイスが持つCortex-M0からCortex-M3までをカバーする広い適用力と超低電力動作を活かすには、ソフトウェア開発にHAL比60~80%の高速処理のLLを使った方が得策と判断しました。

つまり、STM32G0xデバイスをEdge MCUと認め、そのSTM32G0xの性能や能力を十分に発揮する専用テンプレートがSTM32G0x専用Edge MCUテンプレートです。
※但し、流用性が高い一部機能には、HAL活用も考慮中です。LLとHALは混在可能です。

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートと汎用STM32Fxテンプレートの違いをまとめたのが表2、テンプレート開発の方向性を示したのが図1です。

STM32G0x Edge MCU評価ボード選定

STM32G0x専用Edge MCUテンプレートの動作確認評価ボードには、Nucleo-G071RB(¥1,203)を予定しています。

前投稿で示したEdge MCUテンプレート評価ボードの3要件を再掲します。

  • R1. 低価格、入手先豊富なEdge MCU評価ボード <¥3,000
  • R2. 最新Edge MCU使用(2018年後半の新しいIoTトレンドに沿って開発されたEdge MCUであること)
  • R3. 何らかのIoTサービス例を簡単に示せる

これら3要件のうち、R3:何らかのIoTサービス例を示す要件がNucleo-G071RB 単独ではNGですが、Arduinoコネクタに何らかのIoTサービスシールドを追加することで満たす予定です。

評価ボードNucleo-G071RB
評価ボードNucleo-G071RB。64ピンパッケージでも電源供給が2本のみのなのでアートワーク担当者が喜ぶ。

※STM32G0xデバイスの評価ボードで、IoTのUSB Type-Cサービスを示すSTM32G0 Discovery Kitや、暗号化処理サービスを示すSTM32G081B-EVALは、両方ともR3要件を満たしますが、価格要件R1<¥3,000を満たさないので利用を断念しました。

Edge MCU評価ボード要件と検索方法

前稿で示したEdge MCUテンプレート構想を具体化します。MCU動作だけでなく、IoTサービス例を、開発者個人が、低価格かつ簡単に示すことを目的とするこの新しい「Edge MCUテンプレート」は、弊社が従来から販売してきた「汎用MCUテンプレート」のアプローチとは少し異なります。

それは、テンプレート出力がMCU動作だけでなくIoTサービスも含めるからです。たとえEdge MCUであっても普通のデバイスです。ベンダーは、その評価ボードでEdge MCUの特性を活かしたIoTサービスを示す場合が多いです。
従って、Edge MCUテンプレートのポイントは、いかに上手くIoTサービスを示すベンダー評価ボードを選べるかに掛かっています。

本稿は、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件と、これら要件を満たす評価ボード検索方法を示します。

Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件

以下3要件を、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードと考えます。

  • R1. 低価格、入手先豊富なEdge MCU評価ボード <¥3,000
  • R2. 最新Edge MCU使用(2018年後半の新しいIoTトレンドに沿って開発されたEdge MCUであること)
  • R3. 何らかのIoTサービス例を簡単に示せる

要件(Requirements)を満たさない場合は、どの項目がNGかが解れば、開発者や場合によってはOKの場合もあります。¥3,000が低価格かは懐具合次第ですし、開発年度が新しいか古いか、何らかのIoTサービスなど、全て主観です。

ただ主観であっても、Edge MCU評価ボード選択にあたりR1~R3の要件があると、採否が簡単になります。仮に、最新Edge MCUでは無いが、低価格でIoTサービスも示せる評価ボードがあった場合には、「R2_NG」だが採用するなどの特例も取れます。そこで次に、この3要件を満たすEdge MCU評価ボードを効率的に選ぶ方法を示します。

3要件を満たすEdge MCU評価ボード検索方法

最新Edge MCUで、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードを選ぶには、Mouserの新製品(メーカー別)ページが便利です。DigiKeyやチップワンストップにも同様ページがありますが、サムネイル写真と概要付きなのでMouserが最も使いやすいと思います。

Mouser新製品ページ
Mouser新製品(メーカー別)ページ。メーカーロゴクリックで集計される。カテゴリ別や週別でも選べて便利。

例えば、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)をクリックすると、「発売日順」にサムネイルと商品名、概要が列挙されます。この中から、Edge MCUテンプレートに使えそうな評価ボードの商品詳細を読み、3要件で採否を判断すれば良いという訳です。

STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果
STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果。写真、製品名、概要が判る。

守備範囲が広いSTM32G0投稿で示したNucleo-G071RB(¥1,203)もこの方法で上位ページ、つまり新商品順に表示されるので、直に探せます。
※年始には1ページ目上部に示されたNucleo-G071RBが、2ページ目下部に示されました。STMは他ベンダー比、新製品が多いのにも驚かされます!
※このようにベンダー毎の新製品数、評価ボード搭載デバイスの単体価格なども簡単に分かる点がマウザー新製品ページの利点です。

NXP、サイプレス、ルネサスとベンダーを変えて上記検索をすれば、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードが簡単に見つかります。

ルネサスは投稿時3要件を満たすEdge MCU評価ボードなし

残念ながらベンダーをルネサスで検索しても、2月末時点では価格要件:R1を満たすEdge MCU評価ボードが見つかりません。

例えば、RL78ファミリのロードマップ投稿で示したRL78/G11評価ボードYQB-R5F1057A-TB(¥3,961…!)やYRPBRL78G11(¥6,437)※秋月電子でも¥4,320は、ともに¥3,000を超えます。

また、低価格がセールスポイントのRX評価ボードTarget Board for RX130/231/65NでもR1を満たしません。

つまり、ルネサスEdge MCU評価ボードは、他ベンダー比、どれも価格高めです。企業レベルでの購入なら問題ないでしょう。しかし、これら価格は、実装部品から推測しても“個人開発者は顧客として眼中に無いのでは(!?)”、とも疑われるコスパだと思います。

※東洋経済Online2月19日に、ルネサス急ブレーキのしかかる1兆円買収記事が掲載されています。ルネサスを応援したいのですが、Edge MCU評価ボード入手も含め、手を出しにくい状況です。

2018年IoTトレンドと2019年予想記事をEdge MCU開発者観点で読む

セキュリティ、産業IoT、通信事業者との連携、ウェアラブルデバイスという4テーマで2018年IoTドレンドとその予想結果、2019年のそれらを予想した記事がTechTarget Japanに掲載されています。

本稿はこの記事内容を、マイコン:MCU、特に本ブログ対象Edge MCU開発者の観点から読みたいと思います。

IoTサービス観点からの顧客目線記事

一言でIoTと言っても様々な観点があります。本ブログ読者は、殆どがMCU開発者なので、顧客がどのようなIoT開発を要求し、それに対して自社と顧客双方のビジネス成功をもたらす「ソリューション提供」が最も気にする点だと思います。

一方、要求を出す側の顧客は、記事記載の「IoTサービス」に注意を払います。そのサービス実現手段として、ベンダー動向やMCU開発者自身の意見を聞いてくるかもしれません。そんな時、日頃の技術動向把握結果を具体的に顧客に提示できれば、顧客案件獲得に有効なのは間違いありません。

顧客と開発者のIoT捉え方は異なる。
顧客はサービス観点でIoTを捉える。開発者はソリューション提供でIoTを捉える。

そこで、記事の4テーマ毎にEdge MCU開発者の観点、特にEdge MCU最新動向を関連投稿とともに示します。

セキュリティ

Edge MCUセキュリティ強化策として、昨年頃からMCUにセキュリティ機能を内蔵するか、または、MCU外付けに専用セキュリティチップを追加する動きが出始めました。
要するに、IoTではEdge MCUでデジタルデータ暗号化機能実装が必須になりつつあるのです。
関連投稿:守備範囲が広いSTM32G0のアクセス・ライン製品
関連投稿:IoTマイコンとセキュリティの色々なセキュリティ強化方法

産業IoT

産業機器データ収集と分析の重要性は顧客に認識されていますが、IoT導入は記事にあるように初期段階です。Edge MCUも、産業用にも流用できるメリットを示すIoT MCU新製品もありますが、車載用の新製品が多い状況です。
関連投稿:NXP新汎用MCU S32K1

通信事業者との連携

国により大きく異なる通信事業者とそのサービスや連帯を一言で表すことは困難です。ただし、日本国内でのIoTフィールドテストは、今一つ盛り上がりに欠ける感じが個人的にはします。やはり、黒船(海外発のIoT通信デファクトスタンダードとその普及)が必要かな?と思います。

ウェアラブルデバイス

Edge MCUに近距離無線通信(NFC)機能を搭載したり、AI機能(機械学習)を搭載しHuman Activity Recognition:人間活動認識を実現したりする新しいEdge MCI製品が登場しています。
関連投稿:NFCを使うLPC8N04のOTA
関連投稿:MCUのAI機能搭載

2019年2月18日速報:タイムリーなことに、Motor Fan Techという自動車関連の情報誌で、次世代ARM v8.1-Mアークテクチャが、業界最小の組み込みデバイス向けに、強力な信号処理を実現が掲載ました。次世代Cortex-Mプロセサは、機械学習(ML)パフォーマンスを最大15倍、信号処理パフォーマンスを最大5倍向上させるそうです。

IoTサービス例を顧客に示せるEdge MCUテンプレート構想

2018年3月の弊社LPC8xxテンプレートV2.5改版以降、新開発のマイコンテンプレートはありません。その理由は、記事にもあるIoTの急速な普及・変化が無かったことも1つの理由です。

これまでの弊社マイコンテンプレートの目的は、「開発者個人が低価格でMCU開発を習得すること」でした。このため、各ベンダーの汎用MCUとBaseboardを使い、そのMCU基本的動作開発までを1つの到達点としてきました。

2018年後半から新しいIoTトレンドに沿った新Edge MCUが各ベンダーから発売済みです。そこで、マイコンテンプレートも、顧客目線やその観点を取り入れた到達点へステップアップしようと思います。

顧客は単にMCUが動作するだけでなく、何かしらのサービス提供をしているIoT MCUを見たいでしょう。この「IoTサービス例を、開発者個人が、低価格かつ簡単に示せるマイコンテンプレート」が新しいEdge MCUテンプレートの構想です。

IoTサービス例を示すEdge MCUテンプレート
IoTサービス例を示すEdge MCUテンプレート

この場合の顧客とは、ビジネス顧客に限らず、開発者の上司や同僚、さらに、開発者自身でも良いと思います。開発結果がIoTサービスに関連していれば、誰でもその効果が判り易いハズです。

期待されているIoTサービスならば、開発者もMCU開発がより楽しく、その習得や応用サービスへの発展もより具体的かつアグレッシブになると思います。と言っても、クラウドを含めたIoTサービスを開発・提供するのは、個人レベルでは無理です。
従って、ほんの触り、一部分のIoTサービスになります。それでも、見る側からは、開発内容が解りやすくなります。

もはやMCUが動作するのは、当たり前です。その上で、+αとしてEdge MCUがIoTで出来るサービス例を示し、さらに、Edge MCU習得も効率的にできるのがEdge MCUテンプレートです。

今後開発するEdge MCUテンプレートは、IoTサービス指向の結果、これまでマイコンテンプレートが持っていた汎用性が少し犠牲になる可能性もあります。ただ、従来の汎用MCUの意味・位置づけもIoTで変わりつつあります。
関連投稿:RL78ファミリから解る汎用MCUの変遷
関連投稿:STM新汎用MCU STM32G0

MCU基本動作に加え、何らかのIoTサービス提供例を示す工夫をEdge MCUテンプレートへ加えるつもりです。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由

ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例
ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例

本稿は、Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由を、少し丁寧に説明します。上図は、Arduinoコネクタレベルでコンパチブル(=置換え可能)なSTマイクロエレクトロニクス、サイプレス・セミコンダクター、NXPセミコンダクターズ各社のMCU評価ボードを示しています。

Arduinoコネクタ

イタリア発で「オープンソースハードウェア概念」の発端となったArduino(アルデュイーノ、もしくはアルドゥイーノ)。その制御系とArduinoシールドと呼ばれる被制御系ボード間の物理インタフェースがArduinoコネクタ(右下)です。
I2C(SCL/SDA)/ADEF(アナログ基準電位)/DIGITAL(PWM兼用)/ IOREF(IO基準電位)/RESET/POWER/ANALOG INのピン配置が決まっています。

Arduinoコネクタのおかげで、制御系とシールドに分離して開発でき、それぞれをArduinoコネクタで接続すれば、Arduinoボードシステムが完成します。

Wikipediaによると、2013年には制御系とシールド、公式非公式合わせて140万台ものArduinoボードが販売されていて、安価にプロトタイプシステム構築が可能となっています。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1:市販安価シールド資産が使える

既にこれだけの数のシールドが販売中ですので、MCU開発にそのまま流用や小変更で使えるシールドもあります。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1が、この既製品で安価なシールド資産が使えるからです。使用部品選定やアートワークパターンなども十分に練られた既製品が入手できるのです。しかもこれらは殆どの場合、オープンソースハードウェアなので詳細が開示済みです。

シールドは縦方向に段重ね(スタッカブル)できますので、複数段を重ね機能増加も可能です。

ハードウエア基板を0から動作するレベルにまでもっていくのは、時間もコストも掛かります。市販シールドを利用したプロトタイプ開発が可能なことが、MCU評価ボードにArduinoコネクタを持つ理由です。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その2:MCU性能評価に使える

シールドを使ってハードウエアが用意されれば、後はソフトウェアです。

図のようにシールドは、複数ベンダーのMCU評価ボードに使えますし、同一ベンダー内の異なるMCUの性能評価にも使えます。

例えば、最も重要な処理に必要なシールドと、その制御ソフトウェアのみをプロトタイプ開発し、MCU性能が重要処理に十分か否かの評価を行います。この評価結果で、コストパフォーマンスに優れたMCU選択が可能となります。

場合によっては、ピンコンパチブル性を利用して他ベンダーのMCU選択も可能です。Cortex-M系MCUはどれも似通ってはいますが、例えば、サイプレスのPSoCシリーズはアナログブロントエンド機能内蔵など、各ベンダーでそれぞれ特徴があります。これらMCU特徴を活かした開発で競合他社との差別化もできます。

MCU評価ボードプロトタイプ開発スピードを上げるマイコンテンプレート

その1もその2もポイントは、プロトタイプ開発のスピードです。効率的に、しかも精度良くプロトタイプ構築し評価するには、MCU製品で使用頻度が高いLCD出力やアナログポテンショメータ入力、LED出力などの単機能シールドを複数使うよりも、これら機能実装済みの汎用Baseboardを使う方が、より低コストにプロトタイプハードウエアの構築ができます。

関連投稿:CY8CKIT-042とCY8CKIT-042-BLEへの機能追加、サンプルソフトが直に試せるマイコン開発環境の章

弊社マイコンテンプレートは、Baseboard動作に必要なソフトウェアをBaseboardテンプレートで提供済みです。開発要件に必要なシールドを見つけ、シールド単体でMCU性能評価を行い、さらにBaseboard実装機能を付加すれば、MCU製品完成形により近いプロトタイプシステムでの評価も可能です。

MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート
MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート

マイコンテンプレートは、MCU評価ボードプロトタイプ開発の「速さ」をより早めます。

MCU評価ボード、IDE、開発ツール、ベンダーが変わってもテンプレート本体は不変

テンプレート本体、具体的にはアプリケーションのLauncher機能は、MCU評価ボード、IDE、コード生成ツールなどの開発ツール、ベンダー各社には依存しません。つまり、単純なC言語でできています。

従いまして、開発ツールやIDEが時代により変化・更新しても、テンプレート本体は変わりません。ご購入頂いた弊社マイコンテンプレートの付属説明資料は、発売当時の環境をベースに解説しております。しかし、最新版のIDEやコード生成ツールに更新されても、このテンプレート本体は不変ですので、安心してお使いください。

まとめ

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由は、市販安価シールド資産を活用し、MCU性能評価へも活用すれば、MCUプロトタイプ開発が効率的かつ容易になるからです。プロトタイプ開発スピードをさらに上げるためマイコンテンプレートが役立つことも示しました。

マイコンは種類が多く、どのベンダーの何を使って開発すれば良いかというご質問を時々頂きます。お好きなベンダーのArduinoコネクタを持つMCU評価ボードを使ってプロトタイプ開発することをお勧めしています。制御系ベンダー差は、Arduinoコネクタで消えます。先ずは着手、あえて言えば被制御系の開発着手が先決です。

MCUパラメタ設定を改善したSTM32CubeMX version 5

2018年12月STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のMCUコード生成ツール:STM32CubeMXがversion 5にメジャー更新しました。本稿は、このSTM32CubeMX version 5について主に旧version 4をご利用中の方を対象に説明します。初めてSTM32CubeMXを利用される方は、インストール方法などは旧version 4で示したコチラの関連投稿と同じですのでご覧ください。

STM32CubeMX version 5への更新方法

STM32CubeMXは、スタンドアロンアプリケーションとして動作させる場合と、Eclipse IDEのプラグインとして動作させる場合があります。更新が簡単なのは、先に説明するスタンドアロン版です。Eclipse IDEは、SW4STM32を例にプラグイン更新方法を示します。

スタンドアロン版STM32CubeMXの更新方法

デフォルト設定を変えてなければ、STM32CubeMX起動時に自動的に更新を検出しInstall Nowクリックで最新版がダウンロードされます。ダウンロード後、一旦STM32CubeMXを終了し、再起動でversion 5への更新が始まります。

STM32CubeMX version 5への更新(スタンドアロン版)
STM32CubeMX version 5への更新(スタンドアロン版)

スタンドアロンの場合は、更新開始時Access Errorが表示されることもあります。この時は、「管理者として実行」で更新プロセスが始まり、STM32CubeMX version 5の初期画面になります。

STM32CubeMX version 5初期画面
STM32CubeMX version 5初期画面

Eclipse IDE(SW4STM32)プラグイン版STM32CubeMXの更新方法

Eclipse IDEのプラグインでSTM32CubeMX機能を追加した場合は、旧プラグインを削除した後にversion 5プラグインをインストールします。SW4STM32のプラグイン削除は、Help>About EclipseからInstallation Detailsボタンをクリックし、Installed Softwareタブから旧STM32CubeMXを選択、Uninstallまたは、Updateクリックで行います。

旧版STM32CubeMXプラグイン削除
旧版STM32CubeMXプラグイン削除

Uninstallの方が確実です。削除後、新しいSTM32CubeMX version 5プラグインを再インストールすれば、スタンドアロンと同じ初期画面が示されます。SW4STM32のUpdate checkでは、STM32CubeMXの更新を検出できませんので、手動でプラグイン削除、更新された新プラグインのインストールが必要です。

STM32CubeMX version 5改善点

version 5のユーザマニュアルUM1718 Rev 27から、以下の点がversion 4から改善されました。
関連投稿:MCU更新情報取得方法と差分検出ツール、の “2PDF資料を比較するDiffPDF” の章参照

・MCUパラメタ設定にマルチパネルGUI採用(UM1718、5章)
・CMSIS-Packサポート(UM1718、7章)
・X-Cube-BLE1ソフトウェアパック(UM1718、14章)
・ST-TouchGFX追加(UM1718、17章)

一言で言うと、5章:カラフルになったパラメタ設定、7章:CMSIS-Pack追加が可能、14章と17章:2チュートリアル追加です。CMSIS-Packとチュートリアルは、必要に応じて理解すれば良いでしょう。

そこで、基本操作の5章STM32CubeMX version 5のパラメタ設定を、弊社STM32F0シンプルテンプレートで用いたSTM32CubeMX version 4プロジェクトファイルを使って説明します。
※STM32F0シンプルテンプレート(¥1,000販売中)をご購入頂いてない方のために、上記プロジェクトファイルのみをコチラから無料でダウンロードできます(zipファイルですので解凍してご利用ください)。

マルチパネルGUIによるMCUパラメタ設定改善の実例

Open Existing Projectsで上記STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトファイル:F0SimpleTemplate.iocを選択すると、旧versionで作成されていること、FWも更新されていて、最新環境へ更新(Migrate)するか、FWはそのままSTM32CubeMXのみ更新(Continue)かの選択肢が表示されます。
※MigrateとContinueの差は後述します。

旧版プロジェクトファイルを開いた時のメッセージ
旧版プロジェクトファイルを開いた時のメッセージ

今回は、Migrateを選択すると、見慣れたPinout & Configuration画面が現れます。

STM32F0シンプルテンプレートのプロジェクトを開いた画面
STM32F0シンプルテンプレートのプロジェクトをversion 5で開いた画面

Connectivity >を開くと、STM32F0シンプルテンプレートで使用中USART2の各種パラメタ設定値がマルチパネルで表示されます。

STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトのUSART2マルチパネル画面
STM32F0シンプルテンプレートプロジェクトのUSART2マルチパネル画面

このマルチパネル表示がversion 5で最も改善された機能です。従来版では、複数タブで分離表示されていた設定が、1画面のユーザインタフェース:UIに集約されました。より解りやすく、より簡単にMCUパラメタ設定ができます。

その他の機能は、カラフルな見た目になってはいますが、旧versionと殆ど同じと考えて良いと思います(開発元には失礼ですが…😅)。不明な点は、HelpでUM1718が直に表示されるので調べられます。

また、販売中の弊社STM32Fxテンプレート付属説明資料のSTM32CubeMXは、version 4で説明しておりますが、この程度の改版ならば、説明資料をversion 5用に作り直さなくても、ご購入者様に内容をご理解頂けると思います。

旧版プロジェクトファイルを開いた時のMigrateとContinueの差

STM32CubeMXは、UIをつかさどる共通部分と、STM32MCUファミリ毎の個別ファームウエア:FW部分の2つから構成されています。本稿は、UI共通部分の更新を説明しました。FWもバグとりや、ファミリへの新MCU追加などで更新されます。周辺回路の初期化CコードやHAL:Hardware Abstraction Layer library 、LL: Low-Layer library利用のAPI生成は、FW部分が担います。

Migrateは、このUIとFWを同時に最新版へ更新します。一方、Continueは、UI部分のみ更新しFWは既存のままです(安全側更新とも言えます)。FW更新で既製ソフトウェアへ悪影響がでる場合には、Continueを選択することもあるでしょう。しかし、基本的にはUI、FWともに最新版へ更新するMigrateが本来の更新方法です。

万一FW更新でトラブルが発生した時は、デフォルトでSTM32Cube>Repositoryフォルダに新旧FWがzipファイルで保存されていますので、FWのみ元に戻すことも容易です。

*  *  *

Postscript:24日午前3時~午前4時5分に実施されたSTM32G0 and STM32CubeMX 5.0ウェブナーどうでしたか? 解りやすいスライドが豊富で、STM32G0の良さがより理解できました。全機能無償のKeil uVision5対象デバイスにSTM32L0、STM32F0とSTM32G0も加わりました。STM32CubeMX 5.0と評価ボードNUCLEO-G071RBを使ったLチカコード生成も解りやすかったですね😃。
※タイムリーなことに、1月25日STM公式ブログ上で上記一連の処理がYouTubeに投稿されました。

さて、ウェブナー参加で目から鱗が落ちたのは、STM32G0の広い応用範囲と低電力動作を活かすには、デバイス間移植に優れるHAL APIよりも、デバイス最適化のLL API利用が適してかもしれない点です。
HAL利用のSTM32Fxテンプレートとは異なるアプローチ、例えば、STM32Gxテンプレートの新開発が必要になりそうです👍。

関連投稿:HALとLLの違いは、STM32CubeMXの使い方、“STM32CubeMXの2種ドライバライブラリ”の章参照
関連投稿:STM32Fxテンプレートのアプローチは、STM32評価ボードNUCLEO-F072RB選定理由参照

MCU更新情報取得方法と差分検出ツール

MCUプロジェクト開発中は、雑音に邪魔されず当面の課題解決に集中したいものです。しかし、MCU最新情報や開発ツール更新などは、いつ発生するかが不明で、開発中であってもこれらの情報把握は大切です。新情報が、課題解決の決め手になる可能性もあるからです。各ベンダーもこの最新情報提供のために便利機能を提供中です。

今回は、 STマイクロエレクトロニクス(以下STM)に追加された更新情報メール通知機能と、更新情報量が多い時に効率的に差分を検出するツール:DiffPDFを紹介します。

STM最新MCUと更新情報のメール通知機能

STMは、STM32マイコンマンスリー・アップデートを配布中です。月一回、MCU最新情報や資料の更新情報へ簡単にアクセスできます。ただし、マンスリー・アップデートは、全てのSTM32MCU更新情報を集約した言わばポータルサイトです。自分が開発中のMCU情報を含む場合もありますし、そうでない場合もあります。開発スケジュールが押し迫ると、当該重要情報や更新を見落とす事があるかもしれません。

そこで、自分の開発関連情報のみをピックアップし、コンテンツ更新時は毎週木曜日にメール通知する機能がSTMサイトに追加されました。設定方法を、STM32MCUコード生成ツール:STM32CubeMXのユーザマニュアル:UM1718を例に紹介します。

UM1718をお気に入りに登録
UM1718をお気に入りに登録する方法

STMサイトにアクセスし、UM1718で検索すると、右上に「お気に入りに登録>」ボタンが現れます。これをクリックし、「更新情報メールを受け取りますか?」に「はい」を選択するだけです。UM1718以外でも同様です。

更新情報がほしいページの「お気に入りに登録>」クリックで、マイページのお気に入り一覧に追加され、更新発生の木曜に一括してメール通知されます。削除も簡単です。

マイページのお気に入り一覧
マイページのお気に入り一覧、削除も簡単

マンスリー・アップデートよりも早く、しかも、自分の開発必須情報に絞った更新通知メールなので、更新イベントの見落とがなく便利です。

効率的に更新情報量をさばく

更新通知を受け取った後は、どこが変わったかを素早く把握したいものです。新しいSTM32CubeMX version 5のユーザマニュアル:UM1718 Rev 27全327ページを例に、更新箇所特定ツールDiffPDFを紹介します。

STM32CubeMXは、MCU処理スケルトンと周辺回路初期化処理Cソースを生成するツールです。周辺回路の設定はGUIで行い、STM32MCU開発の最初の一歩を踏み出す時に使います。2018年末、このSTM32CubeMXがversion5に更新されました。

STM32CubeMX v5は、v4にマルチパネルGUIを加えパラメタ設定をより容易に、さらに、MCU性能評価やシミュレーション機能なども追加されました。このSTM32CubeMXのユーザマニュアルがUM1718です。

既にSTM32CubeMXを使いこなしている方にとって、Rev 27の327ページは分量が多すぎます(初めてSTM32MCUを使う方は、UM1718を読むことをお勧めします。日本語版もありますが最新版和訳ではないことに注意してください)。このように改版資料の情報量が多い時は、DiffPDFが便利です。

2PDF資料を⽐較するDiffpdf Portable

Diffpdf Portableは、2つのPDF資料を比較し差分を明示するWindows 8.1用のツールで、Windows 10でも動作します。UM1718 Rev27とRev 25をCharactersで比較した例が下記です。

DiffPDF新旧UM1718比較結果
DiffPDFで新旧UM1718を比較した結果

マルチパネルGUI によりSTM32CubeMXのuser interfaceが大きく変わったことが一目で解ります。
※効率的に更新箇所、差分を見つけることに焦点を置きましたので、新しいSTM32CubeMX version 5の説明は、後日改めて行う予定です。

DiffPDFを使えば、どこが変わったかを素早く見つけられるので、ハイライト箇所のみを読めば短時間で内容把握ができます。その結果、更新内容が、現状課題の解決に役立つか否かの判断も早くできます。

まとめ

忙しいプロジェクト開発中であっても、MCU最新情報や開発ツール更新イベントは発生します。

STMサイトに追加されたお気に入り登録を使えば、自分の開発に必要情報の更新時のみ木曜メールで通知されるので、プロジェクト関連情報の変更イベントを見落としなく把握できます。

さらにDiffPDFを使えば、更新情報量が多くても、どこが変わったかが簡単に見つけられるので、更新内容がプロジェクトの課題解決に役立つか否かの判断が早くできます。

MCUのAI機能搭載

スマホの顔/指紋認証や、写真の高度処理などにAI機能(機械学習)が搭載され始めています。本稿は、AI機能搭載プロセッサ最新記事からルネサスマイコン:MCU関連を抜き出し、さらに、STマイクロエレクトロニクスのコード生成ツールSTM32CubeMXに追加されたAI機能拡張パックSTM32Cube.AIを紹介します。

ルネサスMCU AI機能の現状

2019年1月10日のEE Times Japanに、“2019年も大注目! 出そろい始めた「エッジAIプロセッサ」の現在地とこれから”が掲載されました。

MCUだけでなく、スマホ、車載などAI機能を処理するプロセッサ全般の現状分析と今後について、分かりやすく解説されています。AI機能の搭載は、一過性ブームではなくADAS(先進運転支援システム)やセキュリティなど更に多くの処理へ適用されると予想しています。

この記事で、昨年本ブログ投稿のRZファミリ搭載「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」の現状(図1)と、7nm製造プロセス換算での性能比較(図5)が示されています。

関連投稿:NXPとルネサスのMCU開発動向、ルネサスのMCU開発動向の章

図1:AIプロセッシングを実行する演算器の関係(出典:テカナリエレポート)
図1:AIプロセッシングを実行する演算器の関係(出典:テカナリエレポート)
図5:7nmプロセスで製造した場合の性能(出典:カタリナレポート)
図5:7nmプロセスで製造した場合の性能。小さい程高性能。(出典:カタリナレポート)

日本オリジナルのルネサスAI IPが、公表通り推論処理能力1000倍の開発ロードマップで進めば、低コスト/低電力なMCU AI機能が実現できそうです。RZだけでなく、RL78やRX MCUへの搭載も期待します。

STM32CubeMXにAI機能拡張パックを提供

STMのコード生成ツールSTM32CubeMX version 5.0.1以降から、AI機能実装の拡張パックSTM32Cube.AIが2019年1月3日に発表されました。

Cortex-M4クラスの低電力MCUが前提ですが、ニューラルネットワークを使ったHuman Activity Recognition:人間活動認識(HAR)や、Acoustic Scene Classification:音響シーン分類(ASC)のアプリケーションに適しているそうです。

Human Activity Recognition (HAR)(出典:Neural Networks on the STM32)
Human Activity Recognition (HAR)(出典:Neural Networks on the STM32)
Audio Scean Classification (ASC)(出典:Neural Networks on the STM32)
Audio Scean Classification (ASC)(出典:Neural Networks on the STM32)

MCU AI機能の搭載

現状は、ルネサスはRZ、STMはCortex-M4と高性能MCUがAI機能の対象デバイスです。

例えば、スマホで指紋認証時、本人なのに認証されないとイラッ😡ときます。安全側評価で仕方がないとは思いますが、リアルタイムで結構な処理を行っているのでしょう。例外処理で、カメラ起動などは認証なしで動作させるなどの工夫が見られます。

AI機能は、このように相手が人間なだけにリアルタイムで高負荷な処理になります。MCUへのAI機能搭載は、このかなり高いハードルをこなせる処理能力が必要です。記事にもあるように、プロセス微細化による低コスト/低電力化や、開発環境を含めたベンダー側の対応が普及の鍵になるでしょう。

個人的には、AI機能の「アプリケーションレベルでのライブラリ化」を望みます。ベンダー側でMCU処理能力に応じてライブラリ内部を工夫し、開発者である我々は、MCU選択でAI機能レベル(誤認識率、深層解析能力など)も選択できれば嬉しいですね😁。

STM32G0とSTM32CubeMX 5.0ウェビナーのお知らせ

STM32G0とSTM32CubeMX 5.0ウェビナー
STM32G0とSTM32CubeMX 5.0ウェビナー(出典:STMサイト)

STM32G0とSTM32CubeMX 5.0のWebinarが、日本時間2019年1月24日、木曜午前3時から午前4時に開催されます。アジェンダは、下記です。

  • Overview of STM32 microcontrollers, with focus on the STM32G0
  • Key features and peripherals embedded in the STM32G0
  • Description of the STM32CubeMX 5.0 graphical software configuration and code generation tool
  • Demonstration of hands-on examples running on the STM32G0 developed with the full-featured, free-to-use Keil MDK for STM32G0 and STM32CubeMX 5.0

木曜勤務に差し支えるかもしれない深夜ですが、PCさえあれば誰でも無料で視聴できます(要ログイン)。

関連投稿:守備範囲が広いSTM32G0

1週間位待てば、STMサイトのビデオコーナーでいつでも見ることができようになるとは思いますが、新汎用MCU STM32G0とそのAPI開発ツールSTM32CubeMX 5.0の新鮮な情報、参加者主催者のQ&Aが直接聞ける機会ですので、お知らせします。