STM32マイコンへ深層学習実装、「走る」「歩く」動作判断

日刊工業新聞3月7日電子版掲載の日本で2桁成長を狙っているSTマイクロエレクトロニクス、このSTMが、STM32シリーズマイコンへディープニューラルネットワーク:DNN(深層学習)を実装し、マイコンの「走る」「歩く」状態を正確に判断するデモを展示しました。

STM32F7(Cortex-M7)搭載時計でユーザ動作を正確に判断(記事より)
STM32F7(Cortex-M7)搭載時計でユーザ動作を正確に判断(記事より)

マイコンDNN実装の3課題と解決ツール

記事によるとSTM32マイコンへDNNを実装する時の3つの課題、

  • マイコン実装のためのコードサイズ実現
  • ソフトウェア最適化
  • マイコンとクラウドの相互運用性

解決のため、STM32CubeMx.AI(現在αバージョンで2018年後半リリース予定)ツールを使うそうです。

このSTM32CubeMx.AIは、STM32CubeMXの機能拡張版だと思います。
現在のSTM32CubeMXも、全てのSTM32シリーズで共通に使えるAPIを自動生成します(STM32CubeMXのTipsはコチラの投稿も参照)。機種共通API生成とソフトウェア最適化は、既にSTM32CubeMXでも実現済みです。

従って、弊社STM32Fxテンプレートも、STM32CubeMXを使えばSTM32シリーズ全般にテンプレートが適用できるハズです(STM32F0とSTM32F1のみ実機検証済み。APIが共通なので機種差は、インクルードするヘッダーファイルなど数点のみ。他機種は未検証です念のため…)。

※STM32マイコンの開発環境は、弊社ブログのカテゴリで、“STM32マイコン”をクリックすると投稿がカテゴライズされ読みやすくなります。投稿ページの初めの方に開発環境構築方法などの投稿が集まっています。

STM32マイコン重点分野

電子版によるとSTM32マイコンは、自動車、産業用、スマートホームなどのIoT分野を重点にして市場拡大を狙うそうです。STM32マイコンに、上記クラウドAI技術が適用され、その開発環境の使い勝手も良いとなると、かなり期待ができます。

STM32評価ボードNUCLEO-F072RB選定理由

STM32マイコンテンプレートを開発するにあたり、秋月電子さん販売中の多くのSTM32評価ボードのうち、Cortex-M0のNUCLEO-F072RBとCortex-M3のNUCLEO-F103RBを選びました。今回は、この選定理由を示します。

STM Evaluation Boards and MCUs Performance
STM Evaluation Boards and MCUs Performance

NUCLEO-F072RB選定の理由(ARM Cortex-M0)

STMサイトに散りばめられたSTM32 MCU情報から、NUCLEO-F072RB選定の決め手となった資料が下記4つです。UM: User Manual、AN: Application Noteです。

1) UM1779          Getting started with STM32CubeF0 for STM32F0 Series
2) AN4735           STM32Cube firmware examples for STM32F0 Series
3) UM1718          STM32CubeMX for STM32 configuration and initialization C code generation
4) UM1727          Getting started with STM32 Nucleo board software development tools

1)はボード毎に提供されるサンプルソフト数を記載し、STM32F072RBが134個と断トツに多いことが判ります。STM32F072RBとは、NUCLEO-F072RB実装MCUです。MCU/ボードの混在表記なので注意が必要です。2)は、1)のサンプルソフト詳細内容が示されています。

3)は、2)のサンプルソフトを生成するコード生成ツールSTM32CubeMXのユーザマニュアルで、スタンドアロンやEclipse IDEプラグインなどの3動作モードと使用法が書かれています。4)は、STM32MCU開発に使える4IDEの紹介です。

これら資料から、STM32マイコンテンプレートの開発環境を以下としました。

・評価ボード: NUCLEO-F072RB(64ピンSTM32F072RBT6実装、ROM 128KB/RAM 16MB、DAC/CAN/USB等)
・統合開発環境:SW4STM32(無償版コード生成サイズ制限なし)+STM32CubeMxプラグイン

※KeilのuVision(MDK-Lite)は、STM32F0/L0専用ライセンスを使うとコードサイズ256KBまで利用可能です。しかし、F0/L0専用となりSTM32F1開発(NUCLEO-F103RB選定理由参照)には残念ながら使えませんのでやめました。F0/L0のみ開発をする方は、2018年2月までの期間限定のようですが、無料で全機能使えます(少し使ってみた感想はエディタが貧弱ですがまあまあという感じです)。

数種類の評価ボードが簡単に入手できても、STM提供サンプルソフト数が少ないものもあります。弊社マイコンテンプレートは、これらサンプルソフトが簡単に組込めることを特徴としますので、サンプル数の多さは、テンプレート活用機会も多くします。

以上のことから、STM32マイコンテンプレート開発環境を決めました。

STM32 Template Development Environment
STM32 Template Development Environment

STM32マイコンテンプレート開発方針

これら4つ以外にも、様々な有用資料(例えばAN4617:Migrating between STM32F0 and STM32L0 microcontrollersなど)がサイト内に散りばめられていて、ハッキリ言ってCypressサイトなどと比較すると、平面的で資料が見つけにくいサイト構成です。応答速度も遅いです。
しかし、掲載資料は、いずれも優秀なエンジニアが書いたものと思われ、英文量は多いものの中身は良好です。

STM32マイコンテンプレート開発では、このSTMサイトリンクもブログ記事に積極的に掲載しようと思います。私の下手なブログ記事を読むより、STMサイトへ直接アクセスする方が良い読者も多いと思うからです。その結果、2016年マイコン売上5位の実力を持つSTM MCUを使う弊社STMマイコンテンプレートのご購入者が増えることも期待もしております。

NUCLEO-F103RB選定の理由(ARM Cortex-M3)

これまで弊社テンプレート対象MCUは、Cortex-M0/M0+クラスでした。しかし、前回記事に記載したようにRTOSやCMSIS普及を考慮すると、このクラスに拘る必要が薄くなってきました。

MCU価格では、Cortex-M4のSTM32F303K8T6が410円、Cortex-M0のSTM32F042K6T6が250円とややM4が高いものの、ここで使うM0/M3評価ボード価格は、どちらも1500円で同じです(2017年5月秋月販売価格)。

製品の大きさが許せば、評価ボードをそのまま製品へ実装するというのは、いつも私が考える製品構想です。評価ボードが同価格なので、コア性能が不足しても、ホードごと載せ替え可能で安心です。STM32評価ボードは、UM1724: STM32 Nucleo-64 boardで詳細が解ります。

しかも、STM32ソフトウエアスタック(UM1779掲載)から、コアクラスの依存性が低いテンプレート作りも可能だと思います。つまり、LL: Low Layerの代わりにHAL: Hardware Abstraction Layerを使ってテンプレート開発すれば、STM32F0(Cortex-M0)以外にSTM32F1(Cortex-M3)、他のコアへも適用できると考えるからです。

STM32CubeMx Software Stack
STM32CubeMx Software Stack

この可能性を検証するために選んだCortex-M3評価ボードが、NUCLEO-F103RB(64ピンSTM32F103RBT6実装、ROM 128KB/RAM 20MB、CAN/USB等)です。勿論、LLの方が高速処理可能でしょうが、HALの移植性の高さも捨てがたい利点があります。

NUCLEO-F103RB
NUCLEO-F103RB

そこで、STM32マイコンテンプレートでは、あえてF0やF1などと対象コアを明記せず、両方に対応できる(と今は思っている)HAL版テンプレートと、速度重視のLL版テンプレートの両方を開発する予定です。HALで共通化できない場合には、LL版のみをリリースします。この開発経緯などもブログに記載していきます。

*  *  *

STMのMCUが、2016年マイコン売上5位というのは驚きでした。少なくとも私の周りにはSTMマイコンを使う人がいなかったからです。入手性も良く評価ボードも低価格です。STMサイトの情報がもう少し解り易く整理されれば、日本でも人気がでるMCUだと思います。また、HALやCMSIS対応も他社に比べて早そうなので、今後の発展性も期待できます。

まとめると、STM評価ボードは、サンプル数の多さからCortex-M0のNUCLEO-F072RBを選び、M0/M0+とM3とのテンプレート共通化検証のためCortex-M3のNUCLEO-F103RBを選びました。IDEは、Eclipse IDEベースのSW4STM32へSTM32CubeMXをプラグインしてテンプレート開発に使います。

私は、STMサイト構成が、平面的、網羅的で情報検索しにくいと思うので、ブログに関連資料などへのリンクを掲載し、テンプレート開発経緯を記載していきます。