SPI/I2Cバスの特徴と最新表示デバイス

IoT MCUは、従来の2×16文字のLCDから、SPIバス接続でよりリッチな表示ができるものへと変わりつつあると前投稿で述べました。

SPIバスは、従来MCUでも実装しています。ただし、多くの場合I2Cとポート共用で、センサやEEPROMとI2C接続するサンプルソフトが多数派でした。IoT MCUでは、センサ接続とリッチ表示を同時にサポートするので、I2C/SPIポートを2個以上装備するMCUが多くなりました。

本稿は、SPI/I2Cバスの特徴と、SPI接続の最新表示デバイスを示します。

SPIバスとI2Cバスの特徴

SPI Bus vs. I2C Bus (Source: Wikipedia)
SPI Bus vs. I2C Bus (Source: Wikipedia)

SPI(3線式)とI2C(2線式)は、どちらも制御ボード内で使うシリアル通信インタフェースです。少ない線数で複数デバイスを接続できますので、制御ピン数を少なくしたいMCUには適しています。
※SPI:Serial Peripheral Interface
※I2C:Inter-Integrated Circuit

仕様の解説などは、ネット内に数多くありますので省略します。

前投稿のNXP Swiss Army Knife Multi toolのWebinarで示されたSPIとI2Cの特徴に、MCU使用例を加筆したのが下表です。

SPI vs. I2C (Source: NXP Swiss Army Knife Multi tool Webinar)
  SPIバス I2Cバス
長所

・高速

・5V/3.3V デバイス混在可能

・2線でバス接続可能
短所

・デバイス毎にチップセレクト必要

・4動作モードがあるためバス接続時面倒

・低速

・同一Vddでデバイスプルアップ

使用例 リッチ液晶ディスプレイ, SD/MMCカードなど EEPROM, 加速度センサ, 気圧センサなど

※NXPは、当初I2Cバスで液晶ディスプレイ接続を試みたが、結局SPIバス接続になったそうです。Webinarだと、アプリケーションノートに記載されないこのような貴重な情報が入手できます。

SPI接続の最新表示デバイス

検討の結果NXPは、128×64ドット1.3“のOLED: Organic LED(有機LED)ディスプレイをMicro SDカードとSPIバス接続しています(前回投稿Swiss Army Knife Multi tool Block図参照)。
※有機LEDは、輝度や視野角、消費電力などの面で優れた特性を持つLEDです。

SPI OLED Display
SPI OLED Display

*  *  *

一方CypressのCY8CKIT-062-BLE Webinarでは、264×176ドットのE-INKディスプレイシールドが使われました。E-INKディスプレイは、電源OFFでも表示が残る画期的な表示デバイスです。しかもシールド基板なので、Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードへの装着も可能です。

E-INK Display Shield
E-INK Display Shield

記載インタフェース信号名から、このE-INKディスプレイもSPI接続であることが解ります。

SPI E-INK Display
SPI E-INK Display (Source: PSoC® 6 BLE Pioneer Kit Guide, Doc. # 002-17040 Rev. *B, Table 1-3)

CY8CKIT-062-BLEは、このE-INKディスプレイのシールド基板付きで8,600円(Digi Key調べ)で入手可能なのでお得です。

しかし、E-INKディスプレイの制御方法が、PSoC Creatorの専用ライブラリ経由で、PSoC MCUファミリで使うには(多分)問題ありませんが、他社評価ボードでこのシールドを使う時は、専用ライブラリの詳細解析などが必要になると思います。

まとめ

SPIバスとI2Cバスの特徴と、SPI接続の最新表示デバイスを2つ示しました。

MCU評価ボードで使われた有機LEDディスプレイやE-INKディスプレイには、I2Cよりも高速なSPIバスが接続に使われています。

有機LEDディスプレイは、輝度や視野角、消費電力などの面で従来LEDディスプレイよりも優れています。

E-INKディスプレイシールドは、電源OFFでも表示が残りArduinoコネクタを持つ他社評価ボードにも装着可能ですが、Cypress制御ライブラリの解析が必要になります。

そこで、SPIバス接続を使ったArduinoシールド基板で、リッチ表示可能、サンプルソフトなどの情報多数、入手性が良く低価格、という条件で調べたところ、Adafruit(エイダフルート)の1.8“カラーTFTシールド(128×160ドット)、microSDカードスロットとジョイスティック搭載(秋月電子3,680円)を見つけました。

1.8" TFT Shield Schematic
1.8″ TFT Shield Schematic

TFT コントローラICのST7735Rのデータシートも開示されていますので、OLEDやE-INKシールドよりも使いやすいと思います。

しかも、メニュー表示した画面に、付属ジョイスティックを使ってユーザが処理選択することもできるので、お勧めのSPI接続表示シールド基板です。

評価ボードから読む最新マイコン技術動向

最新マイコンの評価ボードから、IoT向けMCU技術動向を考察します。参考にしたのは2017年後半開発の下記2種評価ボードです。

つい最近、2ボードはWebinarで解説されており充実内容でした。興味がある方は、上記リンクから探せばOn Demandでも見られると思います。英語ですが非常に参考になります。

CY8CKIT-062-BLE
CY8CKIT-062-BLE

私は、「ベンダ製評価ボードは、ハード/ソフト両方の早期開発レファレンスとすべきだ」と何度か説明してきました。この認識に基づき最新評価ボードから今後のIoT MCU技術動向を抽出したのが下記です。

リッチ表示、タッチパッド、大容量ストレージ、IoT無線通信、FreeRTOS

IoTマイコンには、以下5項目が現状MCU技術に加わると思います。

IoT MCU技術動向(2017年11月)
追加技術 概要
リッチ表示出力 2×16文字程度のLCD表示から、128×160ドットカラーTFTディスプレイなどよりリッチ表示が可能な出力。
タッチパッド入力 従来タクトスイッチから、タッチパッドなどのより柔軟なユーザインタフェース入力。
大容量ストレージ 小容量EEPROM or RAMから、ロギングデータ等の保存も可能なSDカードなどの大容量ストレージ。
IoT無線通信 UART/SCIから、IoTプロトコルに応じた間欠動作で低電力志向の無線通信。
FreeRTOS ベアメタル開発から、複雑なリアルタイム処理実現のためのRTOS開発。

※IoT通信は様々なプロトコルが乱立状態ですが、BLE/Thread両方サポートに集約されそうな気配です。
※RTOSもCMSIS_RTOS/mbed OS 5/FreeRTOSと様々ですが、FreeRTOS利用例が多いです。

5項目全てが追加される訳ではなく、現状MCUにIoT通信処理のみを追加したコスト重視IoT MCUと、全て追加した高機能IoT MCUの2タイプに分かれそうです。

2タイプのIoTエンド端末

IoT MCUで開発するデバイスを、ここではIoTエンド端末と呼びます。端末の方がイメージし易いからです。コスト重視IoT MCUは、低価格IoTエンド端末へ、高機能IoT MCUは、IoTの申し子となる高機能IoTエンド端末へ搭載されます。

IoT端末の多くはこの低価格タイプになると思います。

ADCなど従来MCUのアナログ入力にセンサを接続し、IoT通信でクラウドへセンサデータを定期的に送信します。低電力処理重視のためリッチ表示などは不要で、数年~10年程度はバッテリー動作可能です。

IoT通信機能は現状未実装ですが、ルネサスエレクトロニクスのOktoberfestコースターなどが実例です。通信機能搭載で、店員のスマホから飲み物の有無や温度が解るなどの使い方が想定できます。

Oktoberfestコースター
Oktoberfestコースター

つまり、IoTクラウドの5感センシング(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)が主機能で、クラウド処理結果やユーザへのアクション指示は、スマホなどの別端末が行うのがこのタイプです。

*  *  *

高機能IoTエンド端末は、低価格端末機能に加え、リッチ表示ディスプレイでユーザに端末やクラウド解析結果なども表示可能で、ユーザが状況に応じて判断するためのタッチパッド入力なども備わっています。

端末データをローカルなSDカードなどのストレージへ蓄積し、一括してクラウド送信することや、ディスプレイ表示を状況に応じて変更するための画像データをローカル保存することもなどもできます。

IoT普及時の高機能端末がこれで、言わば簡易スマホ機能も備えた端末と言えます。最新評価ボードは、このタイプの開発レファレンスに使えるように設計されています。

実時間で複雑な並列動作が要求されるので、RTOS(FreeRTOS)が用いられます。

NXPのSwiss Army Knife Multi toolなどが実例です。

Swiss Army Knife Multi tool Block Diagram
Swiss Army Knife Multi tool Block Diagram

まとめ

最新MCU評価ボードから、現状MCUへの技術追加(強化)5項目を抽出しました。追加項目により低価格IoT MCUと高機能IoT MCUの2つに分け、IoTエンド端末イメージを示しました。

現状MCUにIoT無線通信を追加した低価格IoTエンド端末は、IoTセンサとして機能し通信プロトコルが確定すれば、現状技術でも実現性は高そうです。

簡易スマホ機能も備えた高機能IoTエンド端末は、新技術(IoT無線通信、FreeRTOS)や、従来MCUであまり使われなかったリッチ表示出力、パッチパッド入力、大容量ストレージ技術が強化されそうです。

リッチ表示出力や大容量ストレージには、高速大容量向きのSerial Peripheral Interface:SPIバス接続が有力です。センサ接続には、従来同様低速なInter Integrated Circuit:I2Cバスを使い続けるでしょう。

タッチパッド入力は、ベンダ提供の独自ライブラリを利用する形態になります。ベンダ毎にセンス能力やウエット耐性などに性能差が生じる可能性があります。

IoT通信処理とRTOSは、様々な仕様が混在中ですが、BLEとThread両用、FreeRTOSに収束しそうな気配があります。

Bluetooth 5.0対応のIoT向けマイコンPSoC 6発表

3月14日のEE Times Japanに“Cypress、低消費でより強固なセキュリティ実現”という記事が掲載されました。この記事から、2017/4Q(10月~12月)量産予定のCypressの新しいIoT MCU、PSoC 6の特徴をまとめました。

PSoC 6の特徴

  • Cortex-M4+Cortex-M0+ のデュアルARMコア
  • プロセス技術にウルトラローパワー40nm SONOS採用(従来は130nm)した結果、Cortex-M0+:15uA/MHz、Cortex-M4:22uA/MHz、ローパワーモード動作電圧:1.1V、ウルトラローパワーモード動作電圧:0.9Vを実現。消費電流は、下表参照。
PSoC 6 Current consumption
PSoC 6 Current consumption(記事より)
  • ハードウエアでのセキュア データストレージ機能を備えたTEE : Trust Execution Environment実装
  • 暗号化アルゴリズム:楕円曲線暗号(ECC)、AES(Advanced Encryption Standard)、ハッシュ(SHA-1/2/3)ハードウエア実装
  • Bluetooth Low Energy 5.0対応
  • 評価ボード:PRoC 6 BLE Pioneer Kit(CY8CKIT-062-BLE)は75米ドル。
    弊社マイコンテンプレート使用中のPRoC 4 BLE Pioneer Kit (CY8CKIT-042-BLE)は49米ドルです、ディアルコアを考慮するとお買い得?

ハードによるセキュリティ機能はIoT MCUに必須

IoTマイコンにARMコアを使う場合、新しいCortex-M23/33コアによるアプローチと、従来コアにTEEなどのセキュリティ機能を付加したアプローチの2つがありそうです。CypressのPSoC 6は、後者です。

いずれも、ハッキングやウイルス対策に、ハードによるセキュリティ対策は必須です。私個人の感触では、どの程度の処理を MCUで行うかにもよりますが、たとえ専用セキュリティハードを追加したとしても、Cortex-M0/M0+/M23クラスの処理能力では、IoT通信制御だけでも重すぎるのではないかと思います。

そこで、より能力の高いCortex-M33やCortex-M3、M4を使うか、M0クラスとのディアルコア化も解として有力かもしれません(コア性能差は、コチラを参照、Cortex-Mxの特徴はコチラを参照)。

PSoC 6はBluetooth 5.0とデュアルコアでしたが、IoT通信規格の決定だけでなく、MCUアーキテクチャ、これら両方の観察がIoT MCU選択に必要になりそうです。