マイコンデータシートの見かた(その2)

現役STマイクロエレクトロニクスの「メーカエンジニアの立場」から記載された、ユーザ質問の多かった事項を中心にマイコンデータシートの見かたを解説する記事(連載2回目)を紹介します。

全3回の連載記事内容

第1回:凡例、絶対最大定格、一般動作条件、電源電圧立上り/立下り(2017年10月1日投稿済み
第2回:消費電流、低消費電力モードからの復帰時間、発振回路特性(← 今回の投稿)
第3回:フラッシュメモリ特性、ラッチアップ/EMS/EMI/ESD、汎用IO、リセット回路

記事タイトル:データシート数値の “裏の条件” とは

先入観を与える前に、記事を読んでください。消費電流、復帰時間、発振回路特性の留意点が記述されています。記事タイトルの “裏の条件” とは何でしょうか?

私は、データシート数値は、理想的動作環境のマイコン単体の最高数値、これが裏の条件と理解しています。
例えば、車の性能を燃費で比較する方は、普通の運転では絶対に達成できないカタログ燃費で車を評価します。マイコンも同じです。データシート数値は、このカタログ燃費相当だと思います。

カタログ燃費(出典:日本自動車工業会)
カタログ燃費(出典:日本自動車工業会)

実際は、この最高数値にマージンを入れて考える必要があります。どの程度のマージンを入れるかが問題で、安全側評価ならデューティ50%、つまり性能半分位が良いと思います。

但し、これもマイコン単体の話で、マイコン:MCUと電源、発信器や必須周辺回路を含めた制御系で考えると、どの程度マージンを入れるかは複雑怪奇になります。

そこで、ベンダ開発の評価ボードを手本とする考え、つまり、10月1日投稿で示した評価ボードをハードウエアテンプレートとして用いる考え方を、私は提案しています。

10月15日記事のように、評価ボードでもWi-Fi起動時電流に電源部品の余裕が(短時間ですが)少ないものもありますが、大方のベンダ評価ボードは、実用に耐えられる厳選部品が実装済みです。そこで、プロトタイピング時には、この評価ボードで制御系を作り、実装部品のマージンが十分かを評価するのです。

マージンが足りない場合には、同じ評価ボードへ、より高性能な部品を載せ替えるなどの対策が簡単にできます。制御される側もこのようなモジュールで開発しておけば、モジュール単位の設計、変更が可能です。

ソフトウエアも同様です。評価ボードを使えば、少なくとも最低限のソフト動作環境は整いますので、プロトタイピングのソフトをなるべく早く開発し、動作マージンを確認しておきましょう。

完成・出荷時には、ソフトへ様々な機能が後追加されるので、プロトタイピング時はハード同様デューティ50%、つまりROM/RAMの残りに50%位は残しておくと安心です。

ソフトウエアのプロトタイピング開発には、弊社マイコンテンプレートが最適です。

連載第2回範囲のMCUハードウエアまとめ

  • 水晶振動子のMCUクロック供給は、発振波形が正弦波に近いため貫通電流が増え消費電流大となる。
  • 未使用GPIO端子は、外来ノイズ対策に10k~100kプルアップorダウンし、電位固定が望ましい。
  • データシート低消費電力復帰時間がクロックサイクル規定の場合はそのまま使え、㎲規定の場合は参考値。
  • 外付け水晶振動子の利用時は、ベンダ推薦部品を使う。
  • 内蔵発振回路の利用時に、MCU温度変化やリフローによる機械的応力による周波数変動が無視できない場合は、周波数トリミングソフトを組込む。
  • PLL動作最低/最高周波数の設定ミスは多いが、マージンがありそのまま動作するので注意。

マイコンデータシートの見かた(その1)

現役STマイクロエレクトロニクスの「メーカエンジニアの立場」から記載された、ユーザ質問の多かった事項を中心にSTM32マイコンデータシートの見かたを解説する記事(連載1回目)を紹介します。

全3回の連載記事内容

予定されている第2回、第3回の解説内容が下記です。

第1回:凡例、絶対最大定格、一般動作条件、電源電圧立上り/立下り(← 今回の記事)
第2回:消費電流、低消費電力モードからの復帰時間、発振回路特性
第3回:フラッシュメモリ特性、ラッチアップ/EMS/EMI/ESD、汎用IO、リセット回路

今回の第1回を読むと、データシートの読み誤り易いポイントが説明されており、興味深いです。ハードウエアに興味がある、または、ハードも自分で設計するソフトウエア開発者は、読むことをお勧めします。

マイコンハード開発を数回経験すると、おおよその感触とデータシートの見る箇所が解ってきます。私も新人の頃は、網羅されたデータシートの、”どこの何を見れば良いかが判らず”困惑したものでした。

ハードウエアテンプレートは評価ボードがお勧め

私は、使用するマイコンの評価ボードを、ハードウエアのテンプレートとして使います。
例えば、STM32F072RB(=NUCLEO STM32F072RB)は、配線パターン(=gerber files)や使用部品リスト(=BOM)もサイトに公開されています。

これらのデータは、「短納期を要求される開発者の立場」なら、網羅的記載のデータシートよりも、効率よく回路設計をする手助けとなります。

データシートを見ることは、間違いなく重要です。

しかし、具体的にハードウエア設計をする時は、評価ボードのような既に設計済みの「ブツ」を参考にしながら、なぜこの部分はこうなっているのか?などの疑問を持ってデータシートを見る方が、効率が良く、しかも、分厚いデータシートのポイントを理解するのにも役立ちます。

アナログとデジタル電源の1点接地や、パスコン実装位置などは、文字で注意書きをいくらされても解り難くいものです。この点、実物は、文字に勝ります。

ソフトウエアテンプレートはマイコンテンプレートがお勧め

ソフトウエア開発は、マイコンテンプレートの宣伝をするな!と思われた、勘のいい読者の方は、コチラのサイトを参照してください。

サンプルソフトは、”メーカ立場での提供ブツですが、”開発者の立場からの実物として、STM32ファミリ、サイプレスPSoC、NXPのLPC8xx/LPC111x/Kinetis、ルネサスRL78/G1xの各種マイコンテンプレートを、ソフトウエア開発者様向けに提供中です。

連載第1回範囲のハードウエアまとめ

第1回記事の範囲で、マイコンハード開発ノウハウをまとめると、以下になります。

  • マイコン外部接続ハード駆動能力は、I2C、USART、数点のLED直接駆動可能端子を除いては極小で基本的には直接駆動はしない。
  • 外部接続ハードの駆動と接続方法は、Baseboard(mbed – Xpresso Baseboard)や、各種Arduinoシールドを参考にする。
  • マイコン電源は、評価ボードのパターン、実装部品も含めてまねる。
  • 開発製品版の未使用(空き)端子処理は悩ましいが、ソフトはデフォルト、ハードはソルダーブリッジ経由で接地。

私は、今後の連載を読んで、未使用(空き)端子処理の見識などを深めたいと思っています。

PSoC 6続報

MONOist組み込み開発ニュースに、PSoC 6と他社製品との性能、消費電力の比較が掲載されています(出典:「業界最小」の消費電力でセキュリティも、サイプレスがIoT向け「PSoC」を投入)。

PSoC 6の目標

「ある程度のシステム制御ができる性能+低消費電力+セキュリティ、これらの同時実現」というPSoC 6の目標のために採用された40nmプロセス技術とデュアルARMコアにより、PSoC 6の他社比、優れた性能が解ります。

PSoC 6 Comparison Table1
PSoC 6 Comparison Table1(記事より)
PSoC 6 Comparison Table 2
PSoC 6 Comparison Table 2(記事より)

青字が性能同等、または、より優れた項目を示しています。PSoC 4でも採用中の高性能CapSenseやアナログコンポーネント、多くのGPIO数、そして100MHz動作のCortex-M0+、ピーク時257DMIPSなど、弊社ブログ対象の従来MCUの性能枠を大きく超えるものです。

1MB ROM、288KB RAM、8KB キャッシュの意味

ディアルコアで、1MB ROM、288KB RAM、8KB キャッシュものリソースを持つPSoC 6制御には、RTOSが必要になると思います。MCU開発も、よいよOS必須時代になるのでしょうか?

PSoC Creator News and InformationにNew FreeRTOS on PSoC 4 port が掲載されています(PSoC Creator 4.0のStart Pageからもアクセス可能)。弊社マイコンテンプレートで使ったCY8CKIT-042 評価ボードへも適用できそうです。ARMコアなので、mbed OS 5も気にはなりますが、FreeRTOSですので、RTOSへの備え記事が、理解に有効に活用できるでしょう。

弊社自作FreeRTOSサンプルソフト状況

RTOSへの備え記事は、LPCXpresso 824-MAXを使ってFreeRTOSサンプルソフトを自作しています(Lチカ、Q-通信、セマフォ同期、ミューティックス排他制御の4種)。

この自作サンプルを横展開してLPCXpresso 812/812-MAX、LPCXpresso 1114/5へ適用する予定でした。しかし、LPCXpresso 824-MAXで動作するサンプル(勿論GPIOとLPCOpenライブラリのみ変更)が、Lチカを除いて他の評価ボードでは動作確認ができないのが現状です。

原因が(僅か数十行の)自作サンプルにあるのか、それとも、それ以外かの見極めも、結構大変です。FreeRTOSもv9では、スタティックなセマフォ、ミューティックス割付ができるなど改良が進んでいるのでデバッグには良さそうですが、現状のv8は未だ非対応です。

LPCXpresso 824-MAX版だけでもFreeRTOSサンプルソフトを無償リリースするか、それとも、当初の予定どおり全評価ボード対応として問題解決後リリースするか3月末を目途に検討中です。

Bluetooth 5.0対応のIoT向けマイコンPSoC 6発表

3月14日のEE Times Japanに“Cypress、低消費でより強固なセキュリティ実現”という記事が掲載されました。この記事から、2017/4Q(10月~12月)量産予定のCypressの新しいIoT MCU、PSoC 6の特徴をまとめました。

PSoC 6の特徴

  • Cortex-M4+Cortex-M0+ のデュアルARMコア
  • プロセス技術にウルトラローパワー40nm SONOS採用(従来は130nm)した結果、Cortex-M0+:15uA/MHz、Cortex-M4:22uA/MHz、ローパワーモード動作電圧:1.1V、ウルトラローパワーモード動作電圧:0.9Vを実現。消費電流は、下表参照。
PSoC 6 Current consumption
PSoC 6 Current consumption(記事より)
  • ハードウエアでのセキュア データストレージ機能を備えたTEE : Trust Execution Environment実装
  • 暗号化アルゴリズム:楕円曲線暗号(ECC)、AES(Advanced Encryption Standard)、ハッシュ(SHA-1/2/3)ハードウエア実装
  • Bluetooth Low Energy 5.0対応
  • 評価ボード:PRoC 6 BLE Pioneer Kit(CY8CKIT-062-BLE)は75米ドル。
    弊社マイコンテンプレート使用中のPRoC 4 BLE Pioneer Kit (CY8CKIT-042-BLE)は49米ドルです、ディアルコアを考慮するとお買い得?

ハードによるセキュリティ機能はIoT MCUに必須

IoTマイコンにARMコアを使う場合、新しいCortex-M23/33コアによるアプローチと、従来コアにTEEなどのセキュリティ機能を付加したアプローチの2つがありそうです。CypressのPSoC 6は、後者です。

いずれも、ハッキングやウイルス対策に、ハードによるセキュリティ対策は必須です。私個人の感触では、どの程度の処理を MCUで行うかにもよりますが、たとえ専用セキュリティハードを追加したとしても、Cortex-M0/M0+/M23クラスの処理能力では、IoT通信制御だけでも重すぎるのではないかと思います。

そこで、より能力の高いCortex-M33やCortex-M3、M4を使うか、M0クラスとのディアルコア化も解として有力かもしれません(コア性能差は、コチラを参照、Cortex-Mxの特徴はコチラを参照)。

PSoC 6はBluetooth 5.0とデュアルコアでしたが、IoT通信規格の決定だけでなく、MCUアーキテクチャ、これら両方の観察がIoT MCU選択に必要になりそうです。

2016年マイコン業界と超速開発

2016年マイコン業界

Qualcomm ← NXP ← Freescale、買収先の企業へ矢印を付けるとこのようになります。
QualcommはSnapdragonなどのスマホチップセットを供給する半導体ベンダーです。車載を得意とするNXPの社名は残りそうですが、買収後のNXP/旧FreescaleのCortex-M系マイコンラインアップは気になります。
さらに、Windows 10がこのQualcommのSoCで動作するというニュースは、IoT向けPCやスマホにMicrosoftが参入し、数多くある無線規格の収束を早めるかもしれません。

先ず2017年3月、開発環境LPCXpressoとKinetis Design Studioが新しいMCUXpressoに統合されます。また、先日発表の2017ロードマップによると、スイッチマトリクスを持つLPC8xxシリーズが充実します。QualcommとのシナジーによりIoT無線規格のIoTマイコン発売が期待できます。

一方、RunesasもSynergyで遅ればせながらARM Cortex-Mマイコン開発に乗り出し、従来からある独自コアを持つRL78の16ビットマイコンやIDE:CS+は肩身が狭くなった気がします。既存マーケットにはRL78、IoTにはSynergyのCortex-M23/M33という住み分けを意識したかのようです。

Cypressは、Spansion買収によりCortex-M0+コアを入手し、PSoC4へ適用し始めました。アナログ技術が豊富なPSoC4/PRoC/PSoC4 BLEマイコンが更に強化されました。私はCortex-M0/M0+開発では、最も使いやすいIDE:PSoC CreatorとPSoC4/PRoC/PSoC4 BLEの組合せがピカ一だと評価しています。Cortex-M23のラインアップ追加が待ち遠しいです。

※上記は、下記個人レベルで準備できる「入手性が良く、低コストマイコン」の選択基準に合致する半導体ベンダーに限定して分析しております。

超速開発環境

顧客が許容するマイコンソフト/ハード開発時間は、ますます短くなります。
顧客側の技術理解レベルが追い付かないのも原因の1つですが、状況変化が激しいので即開発し、市場でのフィードバック、改良などを繰り返しながら製品化が必要なことが大きな要因です。

短い開発時間は、マイコン開発者にプレッシャーや焦りを生じさせます。しかし、焦りは禁物です。
良い成果物を効率的に出力できるワザ、これがマイコン開発者には必要です。

このワザ習得には、時間を気にせずに没頭できる環境、例えば自宅などで、新しいマイコンや現状マイコンを、身銭を使うので低コストで、しかも短時間で習得できる方法が必要です。
技術は、食べ物と同じで自分で習得(食べ物なら消化)してこそ身に付きます。食べ過ぎて消化不良になるのを避ける手段/方法があります。

この習得方法が超速開発環境、マイコン評価ボード(=スターターキット)+拡張ボード(=mbed-Xpresso Baseboard)+そして弊社マイコンテンプレートです。

マイコンテンプレート(税込1000円)は、懇切丁寧な添付資料や多くの(冗長な!?)コメントをソースに付加しています。従って、初心者が陥りがちな初期トラブルを避けることができ、ベンダー提供のサンプルソフトを活用したマルチタスクで、評価ボードと拡張ボードを動かせます。
ソフト担当者は、マイコンを自分で動かせれば、安心して厳しい状況でも開発できます。

また、基板開発時に問題となるアートワーク(配線引き回し)に配慮したIO割付を実ボードで検証できるので、基板化障壁も下がります。
ハードのみの担当者であっても、この超速開発環境はマイコン回りのベンダー推薦配線チェック、アートワークに適したIO割付をソフト開発者へ提案、基板テストプログラム開発時などにも役立ちます。

*  *  *

販売中のマイコンテンプレート5種
販売中のマイコンテンプレート5種

「入手性が良く、低コストマイコン」という基準で、現在5種マイコンをピックアップし、そのマイコンテンプレートを開発/販売することで、超速開発をサポートするのが本サイトの目的です。ご要望により新たなマイコンを追加する可能性もあります。

サイトに対するご意見、ご要望、追加マイコンなどお気軽にinfo@happytech.jpへお寄せください。

本年もありがとうございました。来年も引き続き弊社サイト、どうぞよろしくお願い申し上げます。

BluetoothとTHREAD両サポートのKinetis KW41Z

NXPからBLE 4.2とThread両方をサポートするKinetis WシリーズKW41Zが発売されました。低価格で有名な評価ボードですがFRDM-KW41Zは、約1万6千円します。USB-KW41Z Sniffer/Development Boardでも約6千円です。

Multiprotocol MCU Kinetis KW41Z
Multiprotocol MCU Kinetis KW41Z(説明動画より)

IoTマイコン無線規格:BLEまたはThreadか

様々なIoT無線規格が乱立するなかで、KW41ZがBLE4.2とThreadを選んだのは、これらが生残る可能性が高いためでしょう(IoT無線規格はコチラを参照してください)。両方のプロトコルをサポートするため、Cortex-M0+コアで最大512KB ROM/128KB RAMと大容量が必要です。USB-KW41Z の価格から推測すると、MCU単体価格も高そうです。

IoTアプリケーションも身近になりつつあります。無線規格確定まで待てないとお考えの方には、早期開発を成功させるツールとして役立つかもしれません。

www.nxp.com/FRDM-KW41Z/startnowに解りやすいスタートアップ方法が掲載されています。無線デモソフトをクローン化し、ユーザアプリを作る手法のようです。IoT無線ソフトを1から開発することは難しい証左でしょう。ベンダー提供ライブラリの活用領域と思われます。

効率的マイコン習得の評価ボード

“学問に王道なし”とは言いつくされた諺です。しかし効率的にマイコンを習得する1番の方法は、ベンダー評価ボードを使うことだと私は思います。理由は、価格と確実動作、サンプルソフトの多さです。複雑な内容を理解、習得するには、文章説明だけでは限界があります。マイコンは、1つでも設定を間違うと、動作しない状態になるのも理由です。

ところが、このベンダー評価ボードも数多くあり、どれが良いか初めての開発者には分かり難い面も多いでしょう。そこで、個人的に最も好きなCypressマイコンの評価ボードを例に、評価ボードを分類し、特徴を解説します。

Cypressマイコンが好きな理由

ルネサス)RL78/G1x、NXP)LPC8xx/LPX111x、Kinetis L/Kと比較して、私がCypress)PSoC/PRoCが好きな理由は、ハード的にはアナログ/デジタル両方の機能が豊富な点、ソフト的にはIDEのPSoC Creatorが使いやすい点です。
また、Cypressサイトも他社より情報が豊富で充実しています。豊富なだけでなく、きちんと整理、分類されているので、検索も容易です。内容が良く解った技術者がサイトを構築すると、このようになると思います。

4種類のCypressマイコン評価ボート

そんなCypressマイコンの評価ボードは、4種類に分類されます。他社サイトでは、評価ボードが一覧で表示されることが多いのですが、最初にこのような分類が無いと混乱します。

4 Evaluation Board Types
4 Evaluation Board Types
Cypressの4種類の評価ボード比較
評価ボード分類 特徴 個人的解釈
Prototyping Kits 超低価格 単独で動作させるには十分だが、サンプルソフトテストには、外付けLEDやハードウエア追加が必要で、その手間暇がかかる。
Pioneer Kits 低価格 サンプルソフトテストに十分な外付けハードも一緒にした評価ボード。さらにArduinoコネクタ実装なので、拡張性も高い。
Arduino Shields Arduinoのシールド Arduinoコネクタ実装の拡張機能基板で、最近のマイコン開発にはArduinoコネクタがデファクトスタンダードになりつつある。
Partner Kits 高機能 高機能/高性能マイコンを評価するためのボード。

お勧めは、Pioneer Kitsです。この分類の評価ボードなら、サンプルソフトをそのままダウンロードして動作確認ができる上、Arduinoシールドを使って自分なりの拡張機能もテストできます。使用するMCUのPioneer Kitsを探して開発に着手すれば良い理由を以下に示します。

マイコン初心者トラブルの回避

経験からマイコン初心者がトラブル箇所で多いのが、MCU初期設定、IDE操作ミスです。いずれも、ユーザーマニュアルの初めの方に記述されていますが、読み間違いや勘違いにより発生します。
その結果、マイコンを思った通りに動かせず、最初の段階でつまずいてしまします。これがアセリを誘発し、さらに悪循環を生みます。チョットした事ですが、一度生じた先入観は簡単には元に戻りません。

Pioneer Kits評価ボード+サンプルソフトで確実にマイコンを動作させると、上記のミスはかなり防げます。とりあえず取説どおりに設定し、サンプルソフトが動けば、嬉しいしアセリは生じません。その後でMCUユーザーマニュアルを読めば、冷静に設定内容も理解できます。

MCUユーザーマニュアルは、文章だけで説明するが役目です。しかし、動く評価ボードを実際に操作しながら内容を理解すると、自分の勘違いやミスにすぐに気が付きます。本当に些細なミスであっても、アセリが有るのと無いのでは、雲泥の差です。

サンプルソフトソースからポイントをつかむ

サンプルソフトは、マイコン開発のバイブルです。しかし付属の説明文章は、細かい内容や、開発のポイントは記載していません。開発で重要となるこの部分は、サンプルソフトのソースから、開発者自らが獲得するのが一番良いと思います。サンプルソフトの読み方は、コチラにも記述しています。“木を見て森を見ず”にならないようにしましょう。

動作ソフトへ変更を加え経験を積む

いろいろなサンプルソフトを動かしていると、ここを変更すればもっと良いのではないか?と思う箇所も発見します。そんな時は、変更を加えトライできます。もしNGなら、その原因が解ります。NG:失敗も経験です。効率的に経験を積むことができる、これがPioneer Kits評価ボードです。

超低価格のPrototyping Kitsでも外付けハードを追加すれば、Pioneer Kitsと同様のことができます。但し、追加の手間がかかります。ハード追加時にミスが発生するとソフト開発は先へ進みません。電子工作習得やハード開発の経験を積む意味では良いのですが、ここは割り切ってソフト開発に適したPioneer Kitsを選ぶのが得策です。

まとめ

マイコンテンプレートも数年前は、Prototyping Kits的な評価ボードを使って販売した経験があります。この時は、ご購入者様からは、ハードウエアを追加したが動ないというご相談を多数頂きました。トラブル原因は、UARTのTX/RX配線ミスなどで解決しましたが、動かないとご購入者様もストレスが溜まります。

そこで、ハード追加が不要なPioneer Kits相当の評価ボードで販売すると、不動作トラブルは無くなりました。簡単に動作することが、初期段階では重要である証左と言えます。

販売中のマイコンテンプレートは、全てPioneer Kits評価ボード相当を動作ボードに選定しています。是非、お試しになり、効率的にマイコンを習得してください。

※一部、配線のみ追加するBaseboardを使って機能拡張しています。配線のみですのでハード追加に比べミス確率は低いです。Baseboardでの機能拡張については、コチラなどを参照ください。

Atom新規開発中止とPSoCアナログ特化製品追加

IntelがAtomプロセサの新規開発を中止すると発表しました。
Cypressは、アナログ制御に特化したPSoC 4ベース新製品投入を発表しました。
所感を記載します。

Atom新規開発中止

Surface 3やEdisonなどの既存Atomを使った製品の今後も怪しくなってきますね。Galileoは Pentiumを使ったSoC: System on Chipなのでとりあえず安心ですが…。

少品種大量生産が 半導体メーカーのビジネスモデルなので、マッチしない製品群は、開発停止というユーザにとっては避けてほしいオプションが常に付きまといます。

マイコン開発者にとって、「代替品が可能なデバイス」に魅力を感じるのは、この最悪オプションのためです。

これはIntelの話でしたが、日本メーカー競争力と継続性強化のための方策についてコチラに興味深い記事があります。

PSoCアナログ特化新製品追加

一方Cypressは、Spansion買収で得たCortex-M0+ライセンスを使ったPSoC 4に、オペアンプやコンパレータ、アナログ・マルチプレクサなどのアナログに特化したプログラマブルアナログブロックを統合したPSoC Analog Coprocessor(Cy8C4Axx)新製品を追加しました。

コプロセサ化により、センサの変更を、ホストプロセサソフトへ及ぼさずに短時間でプロトタイピング開発できるメリットがあります。

PSoC Analog Coprocessor Merit
PSoC Analog Coprocessor Merit(記事より抜粋)

モーション、照度、湿度、近接センサ、サーミスタなど搭載の評価ボードCY8CKIT-048を使うと、アナログ・フロント・エンド(AFE)がPSoC Creatorで開発できるので、一般的に40時間かかる方法と比べ4時間で開発できるそうです。「1週間のスケジュールを、半日でできる!」、夢のようです。

無線通信規格の変更容易なコプロセサ化

評価ボードにはArduinoシールドコネクタも実装済みなので、Raspberry Pi 3などのIoTコンピュータ:MPU/SBCに直接搭載も可能でしょう。

また、対ホストプロセサ通信には、UARTが使えます。ここにUART over BLEやUART over Threadの適用が予想できます。

MCUとMPU/SBC間の無線通信規格が流動的な現状では、このアナログコプロセサ機能配分も適していると思います。CY8CKIT-042搭載のBLE 4.1がBLE 4.2に簡単に変更できたように、無線規格変更に対して柔軟に対応できるからです。

解説:マイコン評価ボード

マイコン開発には、各社が低価格で提供している評価ボードは必須です。
弊社マイコンテンプレートも、各ベンダの評価ボードで開発しています。この評価ボードを解説します。

採算度外視の低価格、高信頼ハードウエア

ソフト開発者に「確実に動くハードウエア」を「低価格」で提供する、これが評価ボードです。

マイコン開発には、「専用」のソフトウエアと「専用」のハードウエアの両方が必要です。そして片方のデバッグには、もう片方にバグが無いことが必須です。つまり、ソフトデバッグには、バグなしのハードが必須なのです。そこで、バグなしで確実に動作する「汎用」ハード、これが各ベンダ提供の評価ボードです。

但し、専用ハードがいずれ開発されるので、汎用の評価ボードは低価格とならざるをえない運命です。高ければ誰も買ってくれないからです。しかし開発者にとっては、以下のように優れた教材と言えます。

  1. ソフト開発者が、専用ハードが出来上がる前にソフトデバッグ可能な環境を自由に構築できる
  2. ハード開発者が、そのまま専用ハードにも使える高信頼ハード設計を学べる
  3. マイコン初心~中級者が、ベンダ標準のデバッグ技術で低価格な開発環境を使って自習できる
  4. 評価ボードは、各ベンダフォーラムで多くの情報が記載されており、適用サンプルソフトも多い

ターゲットMCU、デバッグインタフェース、拡張コネクタの3構成

評価ボードは、ターゲットMCU、デバッグインタフェース、拡張コネクタの3つから構成されます。

NXPの評価ボード:LPCXpresso LPC812とルネサスのRL78G13-Stick、CypressのCY8CKIT-042 の例を示します。

LPCXpresso LPC812構成
NXP LPCXpresso LPC812構成
RL78G13-Stick構成
Runesus RL78G13-Stick構成
CY8CKIT-042構成
Cypress CY8CKIT-042構成

ターゲットMCU

ターゲットMCUとは、開発MCUそのものの部分です。残りのデバッグインタフェースと拡張コネクタは、ターゲットMCUが異なっても同一です。

拡張コネクタ

最近はArduino用シールドコネクタを拡張コネクタに用いる評価ボードが多いです。これは、市販Arduinoシールドの種類が増えたため、上手く探せれば汎用の評価ボードに複数のArduinoシールドを拡張コネクタで接続し、専用ハードに近い、いわば「疑似専用ハード」を市販品のみで作れます。ボード単位のハード部品化がもたらした結果と言えます。

個人的には、シールドよりも、mbed – Xpresso Baseboardの方がより低コストで疑似専用ハード実現ができると思っています(こちらに詳しく記載しました)。

デバッグインタフェース

デバッグインタフェースは、IDEデバッグ機能を使うために必要な部分で、ターゲットMCUのシリアル入出力とパソコンUSBを変換する機能もここに含みます。この機能専用のマイコンが実装されることが多くなりました。このマイコンでデバッガ機能も代行するので、別途デバッガを購入せずにソフトデバッグが可能です。

MCUがARM Cortex-M0/M0+の場合には、ARM標準のCMSIS-DAPでMPUコアをデバッグできるインタフェースも実装されます。CMSIS-DAPはこちらの記事も参照してください。

CMSIS-DAPは、ターゲットMCUとデバッグインタフェースを切り離した後に、ソフトデバッグする時、別途ARM専用デバッガが必要ですが使えます。このように、1つの評価ボードで複数のデバッグ方法が使えるのも特徴です。

ARM系コアの場合は、ベンダ評価ボードもほぼ同じ構成で、ARM専用デバッガを1台持っていれば、ベンダ各社の評価ボードをまたがっても使えるのがメリットです。マイコン開発のデファクトスタンダートになりつつあります。

一方、デバッグインタフェースをE1コネクタでしか持たないルネサスのCPUボードをデバッグする際は、別途E1デバッガを接続しないとデバッグができません。この点は、Cortex-M0/M0+コアのMCUと比べるとコスト的に劣ると言えるでしょう。

Runesus QB-R5F104LE-TB構成
Runesus QB-R5F104LE-TB構成

デバッガ機能なしの統合開発環境:IDEの背景

シールドなどのボード単位の部品化が進んだ結果、専用ハードは、もはや既存ハードを組み合わせて、その小型化のみを行う設計、つまり専用基板化が主な開発内容と言えるかもしれません。

同様に、ソフト開発もベンダが、多くのライブラリを提供することで、専用ソフトをライブラリの組合せで完成できるレベルを目指しているようです。IDEにデバッガ機能がないArduino IDEなどは、この現れのような気がします。

ハードとソフトのオープンソース

ハード版オープンソースとしてArduinoシールドコネクタを持つ既成基板は、増えつつあります。

オープンソースを活用したソフト開発は、Unix系では当たり前です。この流れがマイコンソフトへも徐々に浸透する可能性を感じています。この場合、ハードの専用基板化開発に相当するのは、RTOS適用や弊社のマイコンテンプレートになるかもしれません。

マイコンIDE更新

扱うMCUデバイスの追加、WindowsやiOSなどのOS変更、Eclipseそのものの変更、バグ修正など様々な要因によりマイコン開発環境:IDEの更新は発生します。今回は、マイコンIDE更新について解説します。

更新通知と更新理由

マイコンアプリケーションソフト開発中ならば、リスクが増える可能性もあるIDE更新は避けたいものです。
このため「開発者が更新をするか否かを選択」できるのがマイコンIDEの特徴です。Windowsと大きく異なる点ですね。

更新判断には、「更新が発生」したか、「更新の理由」は何か、この2つを知る必要があります。この情報をIDEのWelcome画面のWebリンクで教えてくれるのがEclipseベースのIDEです。NXPのLPCXpressoの例を示します。

LPCXpresso Welcome page
LPCXpresso Welcome page

赤矢印のリンク先をみると、最新版IDEと、変更内容などが解ります。使用中のIDEと版数が異なる場合には、この内容を読んで更新判断ができます。新旧LPCXpressoは、緑囲いで示した版数毎に別フォルダへインストールされるので、IDE更新リスクがフォルダ内に閉じ込められるので安心です。

また、NXPに買収された旧FreescaleのKinetis Design Studio: KDSの例が下図です。Welcome画面に加え、Help>Check for Updatesで更新確認と新版インストールまでバックグラウンドで可能です。この機能は、LPCXpressoにはありません。

Kinetis Design Studio Check for Updates
Kinetis Design Studio Check for Updates

但し、私の環境では、ベースとなるEclipseのメジャー更新が関係しているのかもしれませんが、KDS V3.1からV3.2への更新ができませんでした。V3.2更新は、別途インストーラで可能です。やはりIDE更新確認ツールがあっても、時々サイトでIDEの最新版確認は、必要だと思いました。

また、CypressのPSoC Creatorは、Update Managerツールで更新確認とインストールができます。旧版はアーカイブ保存されるので、万一最新版にトラブルが発生しても安心です。

Cypress Update Manager
Cypress Update Manager

以上3社のマイコンIDEは、どれもEclipseベースのIDEですが、更新方法や旧版の扱いは各社異なります。

一方、ルネサス独自仕様のIDE:CS+もアップデート・マネジャーツールで更新します。独自仕様なので、細かい更新内容確認や、一部選択更新なども可能です。ツール・ニュースなどで更新、バグ情報を知らせてくれるのも役立ちます。
また、更新前に、「開発ツールをパックして保存(K)…」を実行すると、更新トラブル対策も可能です。

Runesus CS+ Packing tool
Runesus CS+ Packing Tool

マイコンIDE更新を安全にするには

マイコンIDEの更新トラブル回避には、OS起因でない場合は、旧版のIDEへ戻せることが必要です。また、Eclipseのメジャー更新時などは、操作方法が変わることもあるので注意が必要です。
開発案件のキリが良い時期に更新するのが安全策でしょう。

マイコンIDE開発経験を活かすには

弊社マイコンテンプレートで使用中の各社IDE特徴を示します。マイコンIDEは、Eclipseベースに集約されつつあるようです。今回は、同じベースでもIDEの更新方法が異なることを示しました。

これは、EclipseベースのIDEを使う時に覚えておくと役立つのが、各社共通のエディタやデバッグなどのコア機能であることを暗示しています。他社IDE使用時に、この経験が活かせるからです。

MCU IDE Comparison
マイコンIDE比較

マイコンIDE習得のコツやTipsは、コチラのページにもまとめています。参考にしてください。