米Qualcomm、NXPを300億ドルで買収か?

2015年、Freescaleを買収したNXPを、スマートフォンで有名なクアルコムが300億ドル以上で買収するかもしれないというニュースが飛び込んできました。

記事によると、買収目的は、スマホ市場の成長が停滞しつつあるので、組込と車載市場へ参入することで、買収が成立すれば、半導体業界史上、最大規模のM&Aになるそうです。

クアルコム製品でスマホによく用いられているSnapdragonを使ったシングルボードコンピュータ:SBCは、チップワンストップのコチラで参照できます。

個人的観測ですが、このところNXPに限らずマイコンベンダーの新製品開発が鈍っている気がします。IoT無線規格の見極めや、Eclipse Neon対応かなと思ってきましたが、業界再編の可能性も影響しているかもしれません。

LPCXpresso v7.9.2とLPCOpen v2.19リリース

2015/09/14、LPCXpresso v7.9.2がリリースされました。

この新LPCXpressoのデフォルトインストール先、C:\nxp\LPCXpresso_7.9.2_493\lpcxpresso\Examples\LPCOpen
にLPCOpenの新バージョンv2.19 2015/09/01も同時にインストールされます。

残念ながらこのLPCOpen v2.19も、前版v2.15積み残しのGPIO_APIバグ、uinit8_tを修正してunit32_tを使うが解決されていません。従って、LPC824テンプレートも“開発待ち”を続けます。

NXPのFreescale買収は、2015年末完了予定で進行中です。マイコン部門のみを比較すると、NXPよりもFreescaleの方が大きいそうで、今回の積み残しはこれが反映されたのかもしれません。LPCXpressoとLPCOpenの組合せは、他社と比較しても使いやすいIDEなだけに残念です。

一方、FreescaleのKinetis Design Studio 3.0.0 IDEもEclipseのUpdateはありますが、メジャーバージョンアップはありません。

NXP、Freescaleともに2015年末に向けて忙しいのでしょう。両社のARM Cortex-M0+/M0マイコン状況は、様子がはっきりするまで待ったほうが良い、というのが現段階の判断です。そこで、先に取上げた、Cypress PSoC 4/PRoCの調査を次回報告する予定です。

LPCXpresso 7.9.0リリース

LPCXpressoが7.9.0にアップデートされました。
弊社Windows 10 Pro/Home(64ビット版)ともに動作確認しました。

リリースノートによると、Windows 10がサポートされ、Windows XPの動作テストを停止するそうです。

LPC8xx向けのLPCOpenは、12日現在、v2.15のままですので、LPC824対応テンプレート開発も一時停止を継続します。

 

マイコンIDE習得のポイント

Windows 10 Home Update制御

販売中のマイコンテンプレート説明資料は、テンプレートについて重点的に説明しています。しかし、ご購入者様から頂く質問には、テンプレート動作環境、つまりマイコンIDEに関するものも多くあります。
今回は、このマイコンIDE使い方のコツ、ポイントを説明します。

Windows 10発売を機に、皆さんは今新しいOSの機能や利用方法を習得中だと思います。マイコンIDEと、このWindows 10を関連付け解説を試みます。

マイコンIDEは、OSと考えるべし

Windows 10、旧Windows 7や8と比べると、新ハードウエアやネットワーク、セキュリティ対応に機能満載です。多くの設定項目がありますが、最初はデフォルト設定で動かすのが良いでしょう。慣れてくれば、設定をいろいろに変えて、自分好みにカスタマイズもできます。

マイコンIDEも同じです。IDEは、多くのマイコン機種、使用言語、デバッグ方法に対応できるよう多くの選択肢:プロパティを持ちます。ユーザマニュアルにも、多くのページを使ってプロパティの説明があります。しかし、IDEを使う時に、これら多くのプロパティを、全部知るのは無理ですし不要です。

Windowsと同じく最初はデフォルトで使用し、徐々にカスタマイズするのがIDEやOSなどの環境ソフトの使い方です。

初心者にとって、デフォルト設定でIDEが使えればありがたいのですが、多くのIDEは、中級~上級者へも対応する、いわば「初心者と中級者以上の二兎を追う方式」のため、多少のカスタム設定が必須です。
このカスタム設定が最も少ないのが、IDEベンダ提供の標準評価ボードを使ったマイコン開発時です。弊社テンプレートが、この評価ボードで動作確認しているのもこのためです。

  • マイコンIDEのプロパティ設定が多いのは、しょうがない。
  • カスタムプロパティ設定の少ないIDE+標準評価ボードが、マイコン初心者には適す。

マイコンIDEの使い方ポイント

使用するマイコン、開発言語(C/C++ または アセンブラなど)、IDE(コンパイラやデバッガなどの開発環境)は選定済みとします。この時のIDE設定手順が下記です。3段階から構成されます。

マイコンIDE設定手順
マイコンIDE設定手順

IDEへ使用マイコンとデバッガなどの環境ツール設定が、最初の段階です。ここでは、Rapid Application Development: RADツールを使用するか否かなども選択肢になります。MCU:マイコン本体クロック設定と周辺回路の設定が、次の第2段階です。最後が、IDEが出力したスケルトンソースへ、ユーザソースを追加し、ビルド&ボードデバッグを繰り返し行い、アプリケーションを完成させます。

ポイント1:IDE生成スケルトン理解

直ぐにユーザソースを追記したい気持ちは解ります。しかし、使用するRADツールに応じてIDEが生成するスケルトンが異なることがよくあります。例えば、FreescaleのKinetis Design Studioの場合、RADツールにProcessor Expertを選ぶ場合と、Kinetis Software Development Kitを選ぶ場合とでは、スケルトンが異なります。ルネサスのCS+でも、コード生成の有無でスケルトンは全く異なります。

先ず、IDEが生成する「スケルトン動作を把握することが最重要」です。このために、RAD選択肢を変えることも必要でしょう。殆どのIDEの場合、第2段階のMCUクロックは、デフォルトで安全動作周波数に設定済みです。従って、周辺回路なしでも生成されたスケルトンコードでボードデバッグができます。

スケルトン動作把握とは、「マイコン電源投入後、順番にどの処理を行い、main()を呼出しているか、次に、割込み処理の記述はどこで行っているかを知ること」です。

main()呼出しまでの処理(スタートアップ処理)は、MCU動作クロックを変更する場合などを除けば、大体把握できればOKです。また、マイコン機種による違いも少ないです。

一方、割込み処理記述は、使用マイコンやIDEにより様々です。経験的に、IDEと標準評価ボードの組合せで用いる記述方法が、解りやすさや柔軟性に優れます。素直に、この方法でユーザ処理を追加することをお勧めします。

  • IDE生成スケルトンは、使用RADツールにより異なる。
  • 生成スケルトンの動作を把握することが最重要。

ポイント2:デバッガ接続

最初は、MCUクロックはデフォルト設定、周辺回路なし、スケルトンコードのみでビルドします。このビルドは、IDE生成分のみですので100%成功するハズです。

問題は、デバッガ接続です。

IDEがサポートするデバッガは、通常4~6種類もあります。デバッガに応じてさらに詳細設定が必要ですので大変です。ここは、ユーザマニュアルの「対応デバッガ部分のみ」を注意深く読んで、設定する必要があります。ユーザマニュアルが分厚いのは、このように対応種類が多いためです。使用するデバッガのみに絞って読めば、恐れるに足りません。

IDEとデバッガを接続後、ビルド出力をボードへダウンロードし、デバッガで動作確認します。何もユーザ処理を追加していない時の動作、例えばスタートアップ処理後のRAMクリア状態などが確認できます。

ユーザ処理は追加していませんが、これでIDEの処理全体を一通り試すことができます。

  • IDEとデバッガ接続は、ユーザマニュアルの対応部分を拾い読み。
  • 最初のビルドは、スケルトンコードのみでデバッガ接続しIDE全体処理を体験。

ポイント3:サンプルソフトAPI利用例を活用

スケルトンは、骨組みです。この骨組みに、ユーザ処理を追記すれば、アプリケーションが完成します。

骨組みには、IDEが使用周辺回路に応じてライブラリを生成します。このライブラリへのインタフェースがAPIです。IDEの役割は、APIの中身を作ることです。

ユーザソースは、このAPIの使用順序を記述するのみと考えても良いです。少し前までは、このライブラリもユーザが開発していました。しかし最近は、ライブラリはベンダが提供します。ベンダ提供ライブラリを使えば、ユーザソースは、API使用順序のみですので、移植性やメインテナンスも楽です。

APIの使用法は、これも分厚いAPIレファンスマニュアルに記述されています。しかし、真面目にこれを読む前にサンプルソフトを参照します。典型的な周辺回路APIの使い方、これがサンプルソフトです。サンプルに出てくるAPIのみをレファレンスマニュアルでチェックすれば十分です。サンプルソフトの選び方は、コチラを参照ください。

  • IDEは、スケルトンと、使用周辺回路に応じたAPIを生成。
  • サンプルソフトを参照し、典型的なAPIの使い方を学ぶ。

まとめ

多くのプロパティがあり、付属マニュアルも厚いので取っ付きにくいマイコンIDEですが、ここで示した方法を用いれば、早く効果的にIDEを習得できます。

具体的な話が少ないので、皆様のお叱りを受けそうですが、少しでもご参考になれば幸いです。

* * *

Windowsには、様々なTipsがあります。各マイコンIDEのTipsも少なからずありますが、ここでは個々のIDEによる違いは無視して説明しました。実は、IDEで差が生じるのはRADです。RADに対しては、初心者の方は、少し力を入れてマニュアルを読む必要があるかもしれません。
但し、これも必要な周辺回路の箇所のみを拾読みすれば、事足ります。分厚いマニュアルは、読む箇所を間違わないように、拾読みで対処しましょう。

Windows 10 Home UpdateコントールTips

マイコンIDEで具体例が無かった代わりのTipsです。
Windows 10 HomeでOS Updateをユーザが制御できない問題に対し、フリーソフト: Winaero Tweakerが役立つかもしれません。Technical Preview対応ですが、製品版にも使えそうです。

Windows 10 Home Update Control
Windows 10 Home Update Control

LPCXpreeso824-MAXのCMSIS-DAP使用法

今回は、次期マイコンテンプレートのLPCXpresso824-MAXボードを、無償IDEのLPCXpressoで動作させる方法を示します。無償IDEでも、ROM 256KBまで開発できますので、LPC8xxには十分です。
LPCXpressoのインストールからアクティベーションの方法などは、トラ技サイトを参照してください。ここでは、LPCXpresso824-MAXボードとインスト済みのLPCXpresso IDEの設定を解説します。

LPCXpresso824-MAX and LPCXpresso IDE
LPCXpresso824-MAXとLPCXpresso IDE

mbed動作のLPCXpreeso824-MAX

LPCXpresso824-MAXボードは、mbed動作がデフォルトです。つまり、ボードとパソコンを接続すると、USBメモリとして認識され、このUSBメモリへmbedネット環境で作成したオブジェクトをダウンロードしさえすれば、LPC824が動きます。この時に必要なツールは、ネットアクセスのブラウザのみです。

このように手軽にネットでオブジェクトが作成できるのがmbedの利点です。しかし、デバッグ環境としては、今後の進展を待つ必要があります。効率的なデバッグを行うには、IDEデバッガは必須です。

mbed動作からCMSIS-DAPへの変更

ボードユーザマニュアルUM108304~5章にも方法が書かれていますが、要点を示します。この手順で、オブジェクト作成とLPCXpresso IDEデバッグができるローカル環境が整います。
1.mbed-windows-serial-portドライバをWindowsパソコンへインストール
2.LPCOpenのLPC824用サンプルプロジェクトv2.15 Release Date:01/08/2015をダウンロードし、LPCXpressoへインポート
※2015年3月最新版LPCXpresso v7.6.2_326をインスト済みならば、C:\nxp\LPCXpresso_7.6.2_326\lpcxpresso\Examples\LPCOpenフォルダ内に同じサンプルがあるので、ここからインポートしても良い。
3.periph_hello_worldプロジェクトをビルドし、デバッガ起動。起動時、下図CMSIS-DAP認識要

CMSIS-DAP認識
CMSIS-DAP認識

4.Tera Termなどのシリアル通信ソフトを1でインストしたmbed Serial Portと接続(115200bps, 8-Non-1)
5.デバッガでResume (F8)実行。シリアル通信ソフトのTerm画面にHello World!が2秒毎に表示

Hello world!表示とCMSIS-DAP、USB Com LEDs
Hello world!表示とCMSIS-DAP、USB Com LEDs

この時、ボードCMSIS-DAP LED緑が点灯し、シリアル通信時にUSB Com LED青が点灯します。これがCMSIS-DAP (Cortex Microcontroller Software Interface Standard – Debug Access Port) デバッグ状態のボードです。CMSIS-DAP認識は、プロジェクトデバッグ初回のみで、次回起動時はありません。

LPCOpenライブラリ

2でインポートしたLPCOpenは、LPCXpresso以外のKeilやIAR開発環境でも同じAPIを提供するなど、適用範囲が広く、可読性も優れたライブラリです。また、3で使用したperiph_hello_world プロジェクトを含め、LPC824周辺回路30種以上のサンプルソフトも付属しています。

mbed環境も多くのサンプルソフトがありますが、NXPのLPCOpenサンプルソフトは高品質で、NXP Forumサイトで情報共有もできます。

販売中のLPC812用テンプレートと同じく、LPC824用テンプレートもこのLPCOpenライブラリを使って開発します。

LPCXpresso824-MAXボードの留意点

LPCXpresso812やLPCXpresso1114/5ボードは、パソコンとの接続に一般的なUSBケーブルを使います。しかし、LPCXpresso824-MAXの接続には、スマートフォンの充電、データ転送に使われるMicro-USBケーブルが必要です。このケーブルは、ボードに付属していませんので別途必要です。

2でインポートした最新のLPCOpenライブラリv2.15は、LPCXpresso v7.5.0以降で動作確認されています。古い版使用時は、v7.5.0以降へ更新が必要です。
※私のパソコンのみの可能性もありますが、Windows8.1(無印)でLPCOpenライブラリをビルドすると本来発生しないハズのエラーが発生します(互換モード変更でも同じ)。Windows8.1ProとWindows7ではこの問題は発生しません(いずれも64bit版)。同じ現象の方は、Windows8.1 ProかWindows7のご使用をお勧めします。

LPCOpen v2.15対応LPC8xxテンプレート発売

LPC8xx用LPCOpenライブラリのv2.15バージョンアップに対応した、LPC8xxテンプレートVersion2を発売します。テンプレート概要と仕様は、こちらのサイトをご覧ください。

LPCOpen v2.15とv2.01の相違点

LPCOpen v2.15は、評価ボードにLPCXpresso824が新たに追加されました。これにより、対応ボードは、LPCXpresso812(テンプレート使用中)、LPCXpresso824、812-MAXの3種になりました。このボード関連で、v2.15には、プロジェクト名とBOARD層名、readme内容に変更があります。主な相違内容をまとめます。

相違点 内容
LPC812ボードプロジェクト名 CHIP層は、”lpc_chip_8xx”に変更

BOARD層は、”lpc_board_nxp_lpcxpresso_812”に変更

BOARD名変更 BOARD_NXP_LPCXPRESSO_812に変更
デフォルトIRC システム動作クロック源供給元が、デフォルトでIRCに変更
I2C I2c_common_8xx、i2cm_8xx.c(マスタ)、i2cs_8xx.c(スレーブ)の3つに分離

APIは不変

APIは、v2.15とv2.01は同じですので、LPC8xxテンプレートは、そのまま使えます。例外は、I2C初期化のみで、Chip_I2C_Init(void)が、Chip_I2C_Init(LPC_I2C)に変更が必要です。

追加されたLPC82xとは

LPC81xで搭載していなかったDMAとADCを搭載(12-bit, max 12ch )し、SCTimer(ステート・コンフィギュアブル・タイマ)/PWMという、ステートマシンとタイマを組み合わせ、イベントや状態遷移、割込み発生ができるタイマを搭載したLPC800シリーズの新マイコン。

 

今回のLPCOpenバージョンアップは、対応ボード追加が主目的と思われます。外部Xtal使用が、デフォルトでIRC使用に変わったことや、I2Cのマスタ/スレーブ分離は、評価ボードを実際のボードへ移植する際には役立つと思います(LPC8xxテンプレートv1では、既にIRC利用に変更済みです)。

個人的には、LPC81xでLPCOpen v2.01ご利用中の開発者様は、あえてv2.15対応にせず、そのまま継続利用することをお勧めします。

NXP ARMコアマイコン利用メリット検証(その2)

ARMコアマイコン利用メリット検証の2回目は、テンプレート開発で気がついたCortex-M0+とM0の差分を示します。

GPIOセット/クリアレジスタの有無

32ビットマイコンのCortex-M0/M0+は、GPIOレジスタに対して、ビット単位のセット/クリア処理が必要です。レジスタのビット位置が、IOピンの操作に対応しており、ピン単位の入出力方向や初期値設定を行うからです。

後発のCortex-M0+のLPC820には、GPIOポートセットレジスタ:SET0、クリアレジスタ:CLR0、トグルレジスタ:NOT0が追加されました。これらは、先に開発されたCortex-M0のLPC1114にはありません。

LPC820GPIOのセット、クリア、トグルレジスタ
LPC820GPIOのセット、クリア、トグルレジスタ

これら追加レジスタを使うと、特定ビットを変更するビット演算時に、ソフト記述が簡単です。例を示します。

ARMマイコン Cortex-M0+ / LPC820 Cortex-M0 / LPC1114
ビット演算例 ビット演算1 ビット演算2
説明 ビットクリア、セットともにビット演算子「|=」を使う ビットクリア時は、演算子「&=~」、ビットセット時は、演算子「|=」を使う

 

このように、LPC820は、同じオペランド「|=」を使って、ビット単位のセット/クリア/トグルを表現できます。一方、LPC1114は、セット時は「|=」、クリア時は、「&=~」を使い分ける必要があります。

これらレジスタは、Cortex-M0+の特徴の1つ、「Single-cycle fast I/O access port」の実現手段かもしれませんが、ここでは、ソフト記述の容易さに着目して差分を説明しました。

I2C APIの差

これは、前回記事に記載したように、LPCOpen版数の差に起因していると思いますので、簡単に現状での差分を示します。

ARMマイコン Cortex-M0+ / LPC820 Cortex-M0 / LPC1114
I2C APIマスタライト例  マスタタイト1  マスタタイト2

 

主観評価

販売中のテンプレートで使った差分を示しました。これ以外はそのまま使えるので、差分がデメリットになるほど労力がいらないこと、後発マイコンCortex-M0+には、ソフト記述が容易になるようなレジスタが追加されたことがお判りになったと思います。

つまり、GPIOの場合、Cortex-M0からM0+への移植:ポーティングは、LPC1114でポート番号が0~3あったものが、LPC820では0のみになったことに注意すれば、殆どそのまま使えます。但し、新たに追加されたGPIOセット/クリア/トグルレジスタを活用すれば、より簡単にソフトが記述できます。LPC8xxテンプレートも、これらレジスタを活用しています。

新しいCortex-M0+マイコンほど、よりソフト開発が容易なっていると言えるでしょう。

NXP ARMコアマイコン利用メリット検証(その1)

ARM Cortex-M0搭載のLPC111xテンプレート発売で、同一ベンダNXPでのARMコアCortex-M0+からCortex-M0へのテンプレート移植が完了しました。そこで、NXP ARMコアマイコン利用のメリット/デメリットについて、数回に分けて示します。

NXP Cortex-M0+マイコンのテンプレート移植

NXP Cortex-M0+マイコンからCortex-M0マイコンへの移植
NXP Cortex-M0+マイコンからCortex-M0マイコンへの移植

同一ベンダのCortex-M0/M0+ソフトの差

一言で言うと、NXP Cortex-M0/M0+のソフト差は、殆どありません。ルネサスのRL78/G13(S2コア)とRL78/G14(S3コア)と同じ程度と言えば、RL78/G1xユーザには判っていただけるでしょう。

差がある箇所(概要)

アナログ入力は、コンパレータとADCで内蔵周辺回路が異なるため、制御ソフトは異なります。

一方、内蔵周辺回路名が同じでも、後発のLPC820では異なるものがあります。LPC820のGPIOクリアレジスタがそれで、LPC1114にはありません。これは、ソフト記述がより簡単になるように専用レジスタが追加されたと推測します。

また、テンプレートではLPCOpenライブラリの版数が異なるため、I2C関連のAPIも異なります。これは、版数が同じになれば、同一APIになると思います。敢えて、異なるAPIにする意味はないためです。対策に変換関数を自作すれば済むことですが、一方に合わせずに素のAPIをそれぞれのテンプレートに使いました。

これら差分箇所は、次回以降、詳細に示していきます。

一致する箇所

マイコンコア制御、つまりCMSISライブラリに相当する部分については、APIレベルで一致します。従って、Cortex-M0+とCortex-M0のARMコア差はソフトでは見えなくなります。

主観評価

半導体は、ムーアの法則にしたがって、微細加工とハード集積化が進みます。マイコン半導体ベンダは、市場が、動作電圧や、周辺回路などのハード互換性要求が強いため、これまではこのムーア則を、主としてハード低価格化、利益増加へ使っていたと思います。

しかし、徐々にソフト開発の要求も、この法則へ適用しつつある気がします。例えば、LPC820のGPIOクリアレジスタ追加や、ROMライブラリ追加などがそれです。これらハード追加により、従来ソフトがそのままでは使えませんが、同じ機能を、より高速、かつ簡単なソフト記述でできます。

ARM Cortex-M0+のLPC8xxシリーズは、Cortex-M0のLPC111xシリーズよりも後発であるため、これらの恩恵を受けて、より効率的なソフト開発ができます。また、従来Cortex-M0ソフト資産を活かしてM0+へ移植する際も、少ない手間でポーティングできるでしょう。

ARMコア利用メリットは、後発ハードの性能向上、既存ソフト資産の継承のし易さ、これら両者がもたらす「確実な処理能力の向上」にあると思います。機種が異なるマイコンへのソフト移植は、処理能力が本当に向上するか否かは、実際に開発完了するまでは「賭けの要素」もありました。

しかし、少なくともARMコアを使う限り、この「掛けのリスク」がかなり減るということを、今回のテンプレート移植は、M0+からM0という時間を逆に遡る方向でしたが、実感しました。

 

本記事は、同一ベンダNXPのARMコア利用のメリットを概観しました。デメリットに相当する差分の詳細は、次回以降に示します。また、別ベンダで同一ARMコアのテンプレート移植例として、freescaleのKinetis Eシリーズ/Cortex-M0+で評価します。

LPC111xテンプレート発売

ARM Cortex-M0 LPC111xテンプレート発売開始

Cortex-M0搭載のLPC111xテンプレート(LPCOpenライブラリ版)を¥1000(税込)で販売します。テンプレート概要と仕様は下記です。

LPC111xテンプレート説明資料P1
LPC111xテンプレート説明資料P1
LPC111xテンプレート説明資料P2
LPC111xテンプレート説明資料P2

テンプレートは、LED出力とSW入力のみを組込んだ「シンプルテンプレート」と、組込み必要機能をほぼ全て盛込んだ「メニュードリブンテンプレート」の2つセットで、もくじ内容の説明資料添付で¥1000です。

購入ご希望の方は、メール(宛先:info@happytech.jp)にてお知らせください。銀行振込口座を返信いたしますので、税込代金¥1000円を振込でください。入金確認後、全説明ページとテンプレートプロジェクトをメールにてお送りします。後は、ご自由にテンプレートへ変更や修正を加えて頂いて、LPC111xx習得や、本来のアプリ開発に役立てて頂ければ幸いです。

「シンプルテンプレート」は、LPCXpressoプロジェクトファイルで、LED出力とSW入力のみの機能をプログラム済みです。

「メニュードリブンテンプレート」は、シンプルテンプレートにADC、I2C EEPROM、LCD、UARTなどの組込みマイコンに必要な機能をほぼ全て実装したテンプレートです。

どちらのテンプレートもLPCXpressoLPC1114評価ボード(NXP製)mbed-Xpresso BaseBoard(NGX Technologies製)を接続し、動作確認済みです。PC接続のメニュードリブン方式のため、関数単位で移植性が高いソフトです(もくじP1動作中の写真、P5ファイル一覧、P11ハードウエア構成などを参照)。

テンプレートは、NXP/ARM社提供の最新版LPCOpenライブラリ(v2.00a)を使っています。LPC111xは、上記の他に、従来版ライブラリもありますが、本テンプレートは使っていません(もくじP7に詳細記載)。

Cortex M0マイコンのLPC1114は、8/16ビットマイコンの置換えを狙った、従来品より高性能な割込み専用回路や低消費電力、低価格が売りの、世界定番ARM32ビットマイコンです。本テンプレートと確実に動作する市販評価ボードを使えば、LPC111x習得、早期アプリ開発や評価に最適な環境が得られます。

このテンプレート対象者は、初級~中級のソフト開発者です。上級者は、これに似たテンプレートを既に持っているからです。本来は、上級者がテクニックを含む自分のテンプレートを初級~中級者へ教え、教えられた側でさらに、テンプレートに修正を加えれば、技術継承も容易です。しかし、この継承は、習得済みの者にとっては、オーバーヘッドで、未習得の者にとっては、理解困難な面が多いものです。

販売テンプレートには、詳細なもくじ資料が付いていますので、だれにでもその内容が理解できます。また、テンプレートソースには、「判りにくい英語ではなく、日本語コメント」を豊富につけていますので可読性も高いと思います。

販売テンプレート一覧

このテンプレートを含めて、3種テンプレートが各1000円(税込)販売中で、本年末にさらに1種追加予定です。

テンプレート名 対象マイコン(ベンダ) 動作ハード 備考 ブログ検索タグ 最新版リリース日
LPC111xテンプレート(Cortex-M0 LPC1114/1115 (NXP) LPCXpressoLPC1114+BaseBoard LPCOpenライブラリ使用 LPC1114 2014/09/06
LPC8xxテンプレート(Cortex-M0+ LPC8xx (NXP) LPCXpressoLPC820+BaseBoard LPCOpenライブラリ+ROMライブラリ版 LPC820 2014/05/18
RL78/G1xテンプレートV2(RL78-S2/S3コア) RL78/G13、G14 (Runesas) ・BB-RL78G13-64(V2で追加)
・G13スタータキット
・G14スタータキット
・QB-R5F100LE-TB
・QB-R5F104LE-TB
(+ブレッドボード)
CubeSuite+のコード生成API利用。BB-RL78G13-64以外は、ブレッドボード上にマイコン周辺回路製作要。 RL78/G13
RL78/G14
2014/10/10
Kinetis Eテンプレート(Cortex-M0+ Kinetis E/40MHz (freescale) FRDM-KE02Z40M+BaseBoard 【開発中】 Kinetis E 2014/12E予定

※ARM Cortex-M0/M0+マイコンの周辺回路は、BaseBoard実装済み回路を使います。
※RL78/G1xテンプレートは、周辺回路実装済みのBB-RL78G13-64(NGX Technologies製)で改版、改良を行う予定です。

本ブログは、これらのテンプレート情報や、開発Tipsなどを混載していますが、各記事にはブログ検索タグを付けています。このタグ、またはテンプレートでブログ右上のSearch:検索を実行して頂くと、タグ別表記になります。テンプレート毎の詳細記事や記載内容を個別にご覧頂く際に便利です。

テンプレートご購入者様の特典

既にテンプレートをご購入された顧客の皆様への特典として、新たに別テンプレート購入の際には、半額(500円、税込)にディスカウント致します。是非、新しいテンプレートを活用して、別マイコン開発へ挑戦して頂く際にご利用下さい。

また、ご購入頂いたテンプレートに関するご意見、ご希望なども、テンプレート改版や新テンプレート選定などへ反映させて頂きますので、既にお知らせした宛先までお寄せ下さい。

テンプレート移植(Cortex-M0+ → M0編)

ARM Cortex-M0+のLPC8xxテンプレートをCortex-M0テンプレートへ移植するに際し、使用評価ボードを比較し、既存テンプレートのどこに変更が必要かを把握します。

評価ボード比較

評価ボード LPCXpresso LPC820 REV A LPCXpresso LPC1114 REV A
ボード写真(LPC-Link部除く)

LPCXpresso LPC820
LPCXpresso LPC820

LPCXpresso LPC1114
LPCXpresso LPC1114
実装マイコン LPC820
LPC812M101JDH20 TSSOP20
LPC1114 LPC1100L(第2世代)シリーズ
LPC1114FBD48/302 LQFP48
CPUコア ARM Cortex-M0+ 30MHz(max) ARM Cortex-M0 50MHz(max)
動作電圧 1.8~3.6V 1.8~3.6V
実装水晶発振子 12MHz 12MHz
内蔵発信器 12MHz 12MHz
内蔵フラッシュ・メモリ 16KB 32KB
内蔵RAM 4KB 8KB
内蔵EEPROM なし なし
GPIO 18本(5V-tolerant I/O)
GPIO0_0~GPIO0_17
42本(5V-tolerant I/O)
GPIO0_0~GPIO0_11
GPIO1_0~GPIO1_11
GPIO2_0~GPIO2_11
GPIO3_0~GPIO3_5
アナログ入力 アナログ・コンパレータ
5ビット×1チャネル
ADC
10ビットx8チャネル
汎用タイマ 16/32ビット・タイマ(SCT)×1 16ビット・タイマ(CT16Bx)×2
32ビットタイマ(CT32Bx)×2
実装LED 3色(RED:P0_15、GRN:P0_17、BLU:P0_16) 1色(RED:P0_7)
シリアル通信 USART×1チャネル USART×1チャネル
SPI クロック同期式×1チャネル クロック同期式×1チャネル
I2C フルスペック×1チャネル フルスペック×1チャネル
消費電流
(マイコン単体)
通常時(3.3V/30MHz):3.3mA
スリープ・モード:1.8mA
ディープ・スリープ:150μA
パワーダウン・モード:0.9μA
ディープ・パワーダウン:170nA
通常時(3.3V/50MHz):7mA
スリープ・モード:5mA
ディープ・スリープ:2mA
パワーダウン・モード:なし
ディープ・パワーダウン:220nA
デバッグ機能 SWD SWD
スイッチ・マトリクス あり なし
USB なし なし

LPC820評価ボードのCortex-M0+は、Cortex-M0をさらに小型、省電力するための見直しが行われた結果、M0に比べ消費電流の少なさが際立ちます。

一方、Cortex-M0のLPC111xも、低消費電力とフラッシュ大容化の方向に進化中で、比較マイコンは、第2世代LPC1100Lシリーズです。トラ技2012年10月号掲載のLPC1114は、一つ前の第1世代でした。LPC111xには、第3世代LPC1100XLシリーズやフラッシュを64KBに増加したLPC1115などのバリエーションがあります。

しかし、このシリーズの基本は、第2世代のLPC1114 LQFP48で、シリーズ最大IOピン数の48で関連情報も多く、LPCOpenライブラリもありますので、Cortex-M0テンプレートの評価ボードは第2世代LPC1114を選びました。

なお、この評価ボードの代わりに、回路図が同じLPCXpresso LPC1115を使うこともできます。この場合の注意事項はコチラを参照して下さい。

テンプレート変更項目

テンプレートのライブラリは、LPCOpen最新版V2.xxを使用しますので、Cortex-M0+とM0のARMコア差はライブラリが収集してくれるハズです。つまり、APIがそのまま使えます。すると、テンプレート移植で変更が必要な個所は、ボード比較から差がある個所で、以下となります。

項目 変更内容
CPUコア動作周波数 30MHz動作を50MHz動作へ変更
GPIO GPIOポート番号0が0~3へ増加
アナログ入力 アナログ・コンパレータからADCへ変更
タイマ SysTickTimerは、同じものを使用するので変更なし
評価ボード実装LED 3個LED出力を1個出力へ変更
評価ボードとBaseBoardの接続 BaseBoard実装SWやその他信号線の割付変更

LPC8xxテンプレートで使ったBaseBoardは、LPC111xテンプレートでも使います。従って、BaseBoardのUART入出力、アナログ入力、LCD出力、EEPROM入出力、ブザー出力等をLPC1114評価ボードに割付けます。

こう見ると、コア動作周波数を除けば、ADCやタイマなどの周辺回路が違いますので、その制御は必要ですが、殆どIO関連です。APIが同じだと1から作るのに比べ、とても楽という気がします。M0+からM0に変わっても、既存Cortex-M0+テンプレートの殆どがそのまま使えるからです。