STM32MCUのアンチ・タンパ機能

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のSTM32MCUマンスリー・アップデート最新10月号から、アンチ・タンパ機能を紹介します。

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タンパとは

タンパ:tamperとは、(許可なく)いじくることです。例えば、MCUパッケージをこじ開けるなどの行為(=タンパイベント)を検出した場合、内部バックアップ・レジスタを全消去し、重要データが盗まれるのを防ぐのがアンチ・タンパ機能です。MCUハードウエアによるセキュリティの一種です。

※マンスリー・アップデート10月号、P13の“STM32のココが便利”、今月のテーマ:~その2~参照

セキュリティの重要性がユーザで認識されつつあるので、開発者としては、「タンパ保護」、「アンチ・タンパ」、「RTCレジスタ保護」、「GPIO設定ロック」などのキーワードは覚えておくと良いでしょう。基本機能実装後にセキュリティを追加する時や、他社差別化に役立つからです。

STM32MCUのセキュリティ機能

マンスリー・アップデート9月号、P12今月のテーマにもセキュリティ機能がありますが、これはSTM32MCU独自というより、ARM Cortex-MコアMCU全てに実装の機能です。STM32MCUと他社の差別化には使いにくいと思います。

差別化に適すのは、ARM Cortex-Mコア以外の周辺回路です。そこで、RTCとGPIOについて、本ブログ掲載中の評価ボード実装MCU、STM32F072RB(Cortex-M0)とSTM32F103RB(Cortex-M3)のタンパ機能設定方法をデータシートで調べました。

出典:STM32F071x8 STM32F071xBデータシート 2017/1版
出典:STM32F103x8 STM32F103xBデータシート 2015/8版

関連投稿:STM32マイコンの評価ボード選定

RTC

MCUで処理実時刻を記録する場合などには、RTCが便利です。

RTCのアンチ・タンパ機能は、アラーム・タイムスタンプとRTCレジスタ保護の2つがあります。RTCレジスタ保護は、RTCレジスタへのアクセス手順のことです。RTC利用時、通常レジスタと異なる面倒な手順でRTCレジスタを設定しているのをサンプルソフトで見た記憶があります。

アラーム・タイムスタンプは、タンパイベント発生時のカレンダーを記録する機能です。但し、データシート内の説明は少なく、実際にソフトウェアでどのように設定すれば機能するかは不明です。

試しにSTM32CubeMXでSTM32F072RBのRTCを設定すると、Tamper 2のみ設定可能です。ヘルプ資料UM1718の説明も少なく、やはり詳細は不明です。
但し、将来アンチ・タンパ機能を実装するなら、Tamper 2に連動してアクティブ化するPA0ピンは、リザーブした方が良さそうです。

STM32F072RBのTamper 2とPA0
STM32F072RBのTamper 2に連動してアクティブ化するPA0ピン

同じ理由で、STM32F103RBならPA13ピンをアンチ・タンパ機能用にリザーブできると良いでしょう。

GPIO設定ロック

GPIO機能を固定するGPIO設定ロックについては、データシート内をTamperで検索してもヒットせず記述もありません。

まとめ

STM32MCUのアンチ・タンパ機能を、STM32マイコン マンスリー・アップデートから抜粋、解説しました。

ユーザがMCUセキュリティを重視しつつあるので、STM32MCUハードウエアが提供するセキュリティの一種であるアンチ・タンパは、他社差別化機能として役立つと思います。

そこで、STM32F072RBとSTM32F103RBのRTC/GPIOソフトウェアでのアンチ・タンパ設定方法をデータシートで調査しましたが、具体的情報は得られませんでした。

対策として、RTC/GPIOサンプルソフトから設定を得る方法があります。但し、ソースコードには、アンチ・タンパ機能の目的や、なぜ面倒な設定手順が必要かについての記述は無いので、マンスリー・アップデートのアンチ・タンパ、RTCレジスタ保護やGPIO設定ロックの理解が、サンプルソフト解読に必要だと思います。

LPC8xxのGPIO制御とデバッグTips

NXP ARM Cortex-M0+マイコンLPCXpresso8xxのLPCOpenライブラリが、v3.01へ更新され、v2.x版から持ち越された多くのバグが修正されたようでした(結論から言うと、LPC81xにはバグが残っています。LPCXpresso8xxのLPCOpenライブラリv3.01は、前回の記事を参照してください)。

今回は、マイコン制御で最も基本となるGPIO制御を、MCUXpressoのサンプルソフトperiph_gpioと最新LPCOpenライブラリv3.01を使って解説し、さらにデバッグTipsを示します。

サンプルソフトperiph_gpioのGPIO API

LPCOpen v3.01のGPIO API数は、GPIO機能初期化、GPIOピン単位制御、GPIOポート単位制御の3種類で35個あります。全部使う必要はありませんので、最も基本的なGPIO APIを抜粋し使っているのがperiph_gpioで下記7個です。

periph_gpioのGPIO API一覧(その1)
GPIO API 概要
1 Chip_GPIO_Init(LPC_GPIO_PORT); GPIO機能初期化(=クロック供給)
2 Chip_GPIO_SetPinDIROutput(LPC_GPIO_PORT, 0, ledBits[i]); ピン(入)出力方向設定
3 Chip_GPIO_GetPinState(LPC_GPIO_PORT, 0, ledBits[LEDNumber]); ピン入力値取得
4 Chip_GPIO_SetPinState(LPC_GPIO_PORT, 0, ledBits[i], true); ピン出力値設定
5 Chip_GPIO_SetPinToggle(LPC_GPIO_PORT, 0, ledBits[LEDNumber]); ピン出力値反転

LPCXpresso8xxは、Portは0しかありませんので、「LPC_GPIO_PORT, 0,」は決まり文句、最後のパラメタは、GPIO0_xyzのGPIO論理ポート番号を示します。物理ピン番号ではない点に注意してください。

periph_gpioのGPIO API一覧(その2)
GPIO API 概要
6 Chip_GPIO_SetPortMask(LPC_GPIO_PORT, 0, ~PORT_MASK); ポートマスクレジスタ設定
7 Chip_GPIO_SetMaskedPortValue(LPC_GPIO_PORT, 0, count); ポート出力値設定(マスクレジスタ経由)

ポート単位のGPIO APIは、複数の出力ピン出力を同時に設定するもので、バス出力時に便利です。これら7個のGPIO APIのみを習得していれば、基本的なGPIO制御ができます。

評価ボード実行結果

LPC81xは、LPCXpresso812、LPC82xは、LPCXpresso824-MAXの評価ボードで実行した結果が下図です。

periph_gpio実行のデバッグ画面
periph_gpio実行のデバッグ画面(赤色がLPC824、青色がLPC812)

LPC81xとLPC82xでは、同じソースでも、ポート出力値が異なります。期待値は、LPCXpresso824-MAXでしか得られません。つまり、LPC81xにはGPIO APIのポート制御にバグがあることが判ります。

デバッグTips

ここで、デバッグのTipsを解説します。

MCUXpressoのローカル変数は、Quick Start ViewのVariablesタブで、周辺回路状況は、Workspace ViewのPeripherals+タブで表示可能です。適当な場所にブレークポイントを設定しF8クリックで、ブレークポイントまで実行します。評価ボード実行結果は、この操作で得られたものです。

現行版MCUXpressoは、デバッグでよく使うファンクションキーのツールチップが一部表示されません。
F8(実行)と、F5(ステップ実行)、F6(ステップオーバー:関数に入って処理「後」停止)、F7(ステップリターン:関数に入った状態で処理「後」停止)を覚えておくとデバッグ効率が良くなります。

LPCOpenライブラリv3.01のLPC81xポート制御、バグ回避方策

LPC812とLPC824はGPIOレジスタ構成が異なります。後で開発されたLPC824の方が、より制御し易いレジスタを備えています(ハードウエアマニュアルより抜粋)。

LPC824とLPC812のGPIOレジスタ比較
LPC824とLPC812のGPIOレジスタ比較

バグがあったLPC81xのポート出力値設定の代替として、他のGPIO API利用または、直接ハードレジスタ操作などを試しましたが、LPCOpen v3.01では、代替方法が見つかりません。思うにLPC81xライブラリの結構深い場所にバグがある可能性があります。

そこで、LPC81x動作には、旧LPCOpenライブラリv2.15を、LPC82x動作には、最新LPCOpenライブラリv3.01を使ってLPC82xテンプレート開発をすることに方針変更しました。当初目標のLPC8xxテンプレート、つまりLPC82xとLPC81xの両方を同じテンプレートソースで実現することは、残念ながら諦めました。

MCUXpressoでの旧LPCOpenライブラリv2.15の使い方

MCUXpressoは、このようなバグの場合に備えて旧LPCOpenライブラリ群も備えています(C:\nxp\MCUXpressoIDE_10.0.2_411\ide\Examplesフォルダ参照)。最新版MCUXpresso IDE v10.0.2_411でもLPCOpenライブラリv3.01が同封されていないのも、本稿で示したバグが理由かもしれません。

旧LPCXpressoプロジェクトをMCUXpressoで開こうとすると、下記ワーニングが出力されます。

Older Workspace Version Warning
Older Workspace Version Warning

旧LPCXpressoとMCUXpresso両方を使い続ける方は、LPCXpressoプロジェクトをコピーして別名のプロジェクトを作成した後に、MCUXpressoで開くと良いでしょう。

LPC81xテンプレートV2.1は、テンプレートプロジェクト内にLPCOpenライブラリv2.15を装着していますので、そのままMCUXpressoで開いても問題なく動作します。

*  *  *

LPCOpenライブラリv3.01を使った新しいLPC82xテンプレートV3の開発は、7E目標で進行中ですが、上記のようなLPCOpenライブラリv3.01バグがあり、予定より難航しています。ちなみにUart関連は、LPCOpenライブラリv3.01でかなり改善されました。

また、MCUXpressoは、Ctrl+スペースキーによる入力補完機能も実装されており、使い勝手は向上しています。旧LPCXpressoを使う必要性は低いと思います。

LPC8xxテンプレートV3完成は、今しばらくお待ちください。