MCUのAI機能搭載

スマホの顔/指紋認証や、写真の高度処理などにAI機能(機械学習)が搭載され始めています。本稿は、AI機能搭載プロセッサ最新記事からルネサスマイコン:MCU関連を抜き出し、さらに、STマイクロエレクトロニクスのコード生成ツールSTM32CubeMXに追加されたAI機能拡張パックSTM32Cube.AIを紹介します。

ルネサスMCU AI機能の現状

2019年1月10日のEE Times Japanに、“2019年も大注目! 出そろい始めた「エッジAIプロセッサ」の現在地とこれから”が掲載されました。

MCUだけでなく、スマホ、車載などAI機能を処理するプロセッサ全般の現状分析と今後について、分かりやすく解説されています。AI機能の搭載は、一過性ブームではなくADAS(先進運転支援システム)やセキュリティなど更に多くの処理へ適用されると予想しています。

この記事で、昨年本ブログ投稿のRZファミリ搭載「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」の現状(図1)と、7nm製造プロセス換算での性能比較(図5)が示されています。

関連投稿:NXPとルネサスのMCU開発動向、ルネサスのMCU開発動向の章

図1:AIプロセッシングを実行する演算器の関係(出典:テカナリエレポート)
図1:AIプロセッシングを実行する演算器の関係(出典:テカナリエレポート)
図5:7nmプロセスで製造した場合の性能(出典:カタリナレポート)
図5:7nmプロセスで製造した場合の性能。小さい程高性能。(出典:カタリナレポート)

日本オリジナルのルネサスAI IPが、公表通り推論処理能力1000倍の開発ロードマップで進めば、低コスト/低電力なMCU AI機能が実現できそうです。RZだけでなく、RL78やRX MCUへの搭載も期待します。

STM32CubeMXにAI機能拡張パックを提供

STMのコード生成ツールSTM32CubeMX version 5.0.1以降から、AI機能実装の拡張パックSTM32Cube.AIが2019年1月3日に発表されました。

Cortex-M4クラスの低電力MCUが前提ですが、ニューラルネットワークを使ったHuman Activity Recognition:人間活動認識(HAR)や、Acoustic Scene Classification:音響シーン分類(ASC)のアプリケーションに適しているそうです。

Human Activity Recognition (HAR)(出典:Neural Networks on the STM32)
Human Activity Recognition (HAR)(出典:Neural Networks on the STM32)
Audio Scean Classification (ASC)(出典:Neural Networks on the STM32)
Audio Scean Classification (ASC)(出典:Neural Networks on the STM32)

MCU AI機能の搭載

現状は、ルネサスはRZ、STMはCortex-M4と高性能MCUがAI機能の対象デバイスです。

例えば、スマホで指紋認証時、本人なのに認証されないとイラッ😡ときます。安全側評価で仕方がないとは思いますが、リアルタイムで結構な処理を行っているのでしょう。例外処理で、カメラ起動などは認証なしで動作させるなどの工夫が見られます。

AI機能は、このように相手が人間なだけにリアルタイムで高負荷な処理になります。MCUへのAI機能搭載は、このかなり高いハードルをこなせる処理能力が必要です。記事にもあるように、プロセス微細化による低コスト/低電力化や、開発環境を含めたベンダー側の対応が普及の鍵になるでしょう。

個人的には、AI機能の「アプリケーションレベルでのライブラリ化」を望みます。ベンダー側でMCU処理能力に応じてライブラリ内部を工夫し、開発者である我々は、MCU選択でAI機能レベル(誤認識率、深層解析能力など)も選択できれば嬉しいですね😁。

SLA (Software license Agreement)

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のSTM32マイコン マンスリー・アップデート2018年8月 P4のコラムに、ソースコード生成ツールSTM32CubeMXのSLA(Software license Agreement)変更が記載されています。

SLAとは

SLAは、ソフトウェア利用(または使用)許諾契約(きょだくけいやく)のことです。ウィキペディアに詳しい説明があります。

コラム記載の新しいライセンスが、SLA0048 – Rev 4 – March 2018です。この新ライセンス中にSTM32CubeMXで検索してもヒットしませんし、法律文言の英文解釈能力も持ち合わせていませんので、コラムをそのまま抜粋します。

「マイコンに書き込まれた状態であれば著作権表示などは不要だが、それ以外の状態であればソースコード、バイナリいずれも著作権表示などは必要」になりました。

STM32CubeMXでHALを使ってソースコードを生成すると、ソースコードの最上部に下記コメントや、その他の部分にも自動的にコメントが挿入されます。

STM32CubeMX生成ソースコード
STM32CubeMX生成ソースコード(STM32Fxマイコンテンプレートの例)

要するに、新SLAは、これらSTマイクロエレクトロニクス提供ツールSTM32CubeMXが自動挿入したコメントを、我々開発者は、勝手に削除してはいけない、と言っているのだと思います。

IDE付属ソースコード生成ツール

マイコンのソースコード生成ツールは、STM32CubeMX以外にも、各社のIDE(統合開発環境)に付属しており、

  • ルネサスエレクトロニクス:コード生成
  • NXPセミコンダクターズ:SDK、Processor Expert
  • サイプレス・セミコンダクター:Generate Application

などがあります(固定ページのAPI生成RADツール参照)。これらツールが自動生成するソースコードには、開発者が解りやすいように多くのコメントが付いています。

殆どのIDE付属エディタは、最上部の著作権関連コメントを畳んで表示することが可能ですし、これらコメントは、コンパイル後、つまりマイコンに書き込まれる状態では削除されますので、普段は注意を払わない開発者が殆どだと思います。

これらコメントも、STM32CubeMXと同様、各社のSLA違反になる可能性がありますので、生成ソースコードでのコメント削除はせず、オリジナル出力のまま使うことをお勧めします。

マイコンテンプレート

弊社販売中のマイコンテンプレートも、上記コード生成ツールのソースコード出力は、そのまま使っております。

マイコンテンプレートの版権は、ご購入者様個人に帰属します。但し、テンプレートそのものの転売、配布はご遠慮ください。お願いいたします。🙏