マイコン評価ボード2018

マイコン装置を開発する時、ベンダ提供のマイコン評価ボードは重要です。良いハードウェア、良いソフトウェアは、評価ボードをレファンレンスとして活用した結果生まれるからです。

今回は、ARMコア対Non ARMコアという視点で最新マイコン評価ボードを分析します。掲載マイコン評価ボードは下記です(価格は、調査時点の参考値)。

デバッガの2機能

ベンダ評価ボードには、デバッガ付属とデバッガ無しの2タイプがあります。デバッガは、

  1. デバッグ機能:ソースコードのダウンロード、ソースコード実行とブレークを行う
  2. トレース機能:プログラムカウンタ実行履歴を記録する

の2機能を提供します。

トレース機能は、プログラムカウンタ遷移を記録し、ハード/ソフトの微妙なタイミングで発生するバグ取りなどに威力を発揮します。が、本ブログで扱うマイコンでは利用頻度が低く、サポートされない場合もありますので、デバッグ機能に絞って話を進めます。

各社が独自コアマイコンを供給していた頃は、各社各様のデバッガが必要でした。しかし現在は、ARMコアマイコンとNon ARMコアマイコンの2つに大別できます。

ARMコアマイコンの評価ボード

ARMコア評価ボードは、ARM CMSIS規定のSWD:Serial Wire Debugというデバッグインタフェースでコアに接続します。SWDを使うと、他社ARMコアとも接続できます。このため、評価ボードのデバッガ部分と対象マイコンを切り離し、デバッガ単独でも使えるように工夫したものもあります。

ARMコア評価ボードの多くは、対象マイコンにSWDインターフェイスのデバッガが付属しています。これは、対象マイコンが変わってもデバッガは全く同じものが使えるので、量産効果の結果、デバッガ付き評価ボードでも比較的安価に提供できるからです。

CY8CKIT-146
SWDデバッガ付属評価ボードCY8CKIT-146 (出典:CY8CKIT-146 PSoC® 4200DS Prototyping Kit Guide)

また、統合開発環境:IDEもEclipseベースを採用すれば、実行やブレークのデバッガ操作方法も同じになり、例え異なるベンダのARMコアでも同じようにデバッグできるので開発者にも好評です。

以上が、マイコンのデファクトスタンダードとなったARMコアとEclipseベースIDEを多くのベンダが採用する理由の1つです。

Non ARMコアマイコンの評価ボード

一方、Non ARMコアマイコン評価ボードは、本来コア毎に異なるデバッガが必要です。そこで、評価ボードには対象マイコンのみを実装し、その購入価格は安くして、別途デバッガを用意する方法が多数派です。

機能的には同じでもコア毎に異なるデバッガは、サポートするコアによりデバッガ価格が様々です。例えば、ルネサスのE1デバッガは、RL78、RX、RH850、V850の4コアカバーで12600円ですが、RL78とRXコアのサポートに限定したE2 Liteデバッガなら、7980円で購入できます(2018年3月の秋月電子価格)。

RL78/G11評価ボードとE1
RL78/G11評価ボードとE1

ルネサスもE1/E2 Liteデバッガ付きのRX用低価格評価ボード2980円を2018年3月に発表しました(マルツエレック価格)。

E1、E2 Liteデバッガ付きRX評価ボード
E1、E2 Liteデバッガ付きRX評価ボード (出典:Runesasサイト)

※RX評価ボードは、無償CコンパイラROM容量制限(≦128KB)に注意が必要です。入手性は良いので容量制限を撤廃してほしいです。

個人でマイコン開発環境を整える時は、購入価格は重要な要素です。マイコンがARMコアかNon ARMコアか、デバッガ搭載かなどにより、評価ボード価格がこのように異なります。

標準インターフェイスを持つマイコン評価ボードの狙い:プロトタイピング開発

最近の傾向として評価ボードの機能拡張に、Arduinoコネクタのシールド基板を利用するものが多くなりました。様々な機能のシールド基板とその専用ライブラリが、安く入手できることが背景にあります。

ARMコア、Arduinoコネクタ、EclipseベースIDEなどの標準的インターフェイスを持つマイコン評価ボードの狙いは、色々なマイコン装置の開発を、低価格で早期に着手することです。既存で低価格なハード/ソフト資産の入手性が良いのが後押しします。

中心となるマイコン評価ボードへ、機能に応じたシールド基板を実装し、早期にデバッグしてプロトタイピング開発し製品化が目指せます。

CY8CKIT-046
Arduinoコネクタを2個持つCY8CKIT-046、緑線がArduinoコネクタ (出典:CY8CKIT-046 Qiuck Start Guide)

ルネサスもEclipseベースのIDE:e2Studioを提供中ですが、これは世界中のEclipse IDEに慣れた開発者が、ルネサスマイコンを開発する時に違和感を少なくするのが主な狙いだと思います。Non ARMルネサスマイコン開発の不利な点を、少しでも補う方策だと推測します。

関連する過去のマイコン評価ボード投稿

あとがき

ルネサス最新汎用マイコンRL78/G11は気になります。従来のRL78/G1xに比べアナログ機能を大幅に強化し、ローパワーと4μsの高速ウェイクアップを実現しています(詳細情報は、コチラ)。開発資料の多くがe2Studioで、CS+ではありません。Non ARMコアなので他社ARM比、特に優れたマイコンの可能性もあります。

 

SPI/I2Cバスの特徴と最新表示デバイス

IoT MCUは、従来の2×16文字のLCDから、SPIバス接続でよりリッチな表示ができるものへと変わりつつあると前投稿で述べました。

SPIバスは、従来MCUでも実装しています。ただし、多くの場合I2Cとポート共用で、センサやEEPROMとI2C接続するサンプルソフトが多数派でした。IoT MCUでは、センサ接続とリッチ表示を同時にサポートするので、I2C/SPIポートを2個以上装備するMCUが多くなりました。

本稿は、SPI/I2Cバスの特徴と、SPI接続の最新表示デバイスを示します。

SPIバスとI2Cバスの特徴

SPI Bus vs. I2C Bus (Source: Wikipedia)
SPI Bus vs. I2C Bus (Source: Wikipedia)

SPI(3線式)とI2C(2線式)は、どちらも制御ボード内で使うシリアル通信インタフェースです。少ない線数で複数デバイスを接続できますので、制御ピン数を少なくしたいMCUには適しています。
※SPI:Serial Peripheral Interface
※I2C:Inter-Integrated Circuit

仕様の解説などは、ネット内に数多くありますので省略します。

前投稿のNXP Swiss Army Knife Multi toolのWebinarで示されたSPIとI2Cの特徴に、MCU使用例を加筆したのが下表です。

SPI vs. I2C (Source: NXP Swiss Army Knife Multi tool Webinar)
  SPIバス I2Cバス
長所

・高速

・5V/3.3V デバイス混在可能

・2線でバス接続可能
短所

・デバイス毎にチップセレクト必要

・4動作モードがあるためバス接続時面倒

・低速

・同一Vddでデバイスプルアップ

使用例 リッチ液晶ディスプレイ, SD/MMCカードなど EEPROM, 加速度センサ, 気圧センサなど

※NXPは、当初I2Cバスで液晶ディスプレイ接続を試みたが、結局SPIバス接続になったそうです。Webinarだと、アプリケーションノートに記載されないこのような貴重な情報が入手できます。

SPI接続の最新表示デバイス

検討の結果NXPは、128×64ドット1.3“のOLED: Organic LED(有機LED)ディスプレイをMicro SDカードとSPIバス接続しています(前回投稿Swiss Army Knife Multi tool Block図参照)。
※有機LEDは、輝度や視野角、消費電力などの面で優れた特性を持つLEDです。

SPI OLED Display
SPI OLED Display

*  *  *

一方CypressのCY8CKIT-062-BLE Webinarでは、264×176ドットのE-INKディスプレイシールドが使われました。E-INKディスプレイは、電源OFFでも表示が残る画期的な表示デバイスです。しかもシールド基板なので、Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードへの装着も可能です。

E-INK Display Shield
E-INK Display Shield

記載インタフェース信号名から、このE-INKディスプレイもSPI接続であることが解ります。

SPI E-INK Display
SPI E-INK Display (Source: PSoC® 6 BLE Pioneer Kit Guide, Doc. # 002-17040 Rev. *B, Table 1-3)

CY8CKIT-062-BLEは、このE-INKディスプレイのシールド基板付きで8,600円(Digi Key調べ)で入手可能なのでお得です。

しかし、E-INKディスプレイの制御方法が、PSoC Creatorの専用ライブラリ経由で、PSoC MCUファミリで使うには(多分)問題ありませんが、他社評価ボードでこのシールドを使う時は、専用ライブラリの詳細解析などが必要になると思います。

まとめ

SPIバスとI2Cバスの特徴と、SPI接続の最新表示デバイスを2つ示しました。

MCU評価ボードで使われた有機LEDディスプレイやE-INKディスプレイには、I2Cよりも高速なSPIバスが接続に使われています。

有機LEDディスプレイは、輝度や視野角、消費電力などの面で従来LEDディスプレイよりも優れています。

E-INKディスプレイシールドは、電源OFFでも表示が残りArduinoコネクタを持つ他社評価ボードにも装着可能ですが、Cypress制御ライブラリの解析が必要になります。

そこで、SPIバス接続を使ったArduinoシールド基板で、リッチ表示可能、サンプルソフトなどの情報多数、入手性が良く低価格、という条件で調べたところ、Adafruit(エイダフルート)の1.8“カラーTFTシールド(128×160ドット)、microSDカードスロットとジョイスティック搭載(秋月電子3,680円)を見つけました。

1.8" TFT Shield Schematic
1.8″ TFT Shield Schematic

TFT コントローラICのST7735Rのデータシートも開示されていますので、OLEDやE-INKシールドよりも使いやすいと思います。

しかも、メニュー表示した画面に、付属ジョイスティックを使ってユーザが処理選択することもできるので、お勧めのSPI接続表示シールド基板です。