QUALCOMM、NXP買収断念

中国当局の承認さえ得られれば買収成立という段階までこぎつけた米)QUALCOMMによるオランダ)NXP買収が、買収断念の発表となりました。

QUALCOMM、NXP買収断念
QUALCOMM、NXP買収断念

米国と中国間の貿易紛争の影響です。先の投稿で示した7月25日買収期限を過ぎても、中国側の承認を得られなかった結果です。

買収破断の結果、NXPは、自動車やセキュリティ分野の強化を、QUALCOMMは、5Gなどの無線通信事業を柱にすることを発表したそうです。

我々MCU開発者にこの結果がどう影響するか、本ブログで扱うLPC8xxやLPC111x、Kinetisデバイスにどう影響するか、数年後には明らかになるかもしれません。

NFCを使うLPC8N04のOTA

5/31~6/21の4回に渡り行われたNXPセミコンダクターズ LPC80x WebinarでLPC80xシリーズ概要が解ります(8/16ビットMCUの置換えを狙う32ビットARM Cortex-M0+コア採用のLPC80xシリーズ特徴や商品戦略が解るWebinarスライドは、リンク先からダウンロード可能)。

LPC8xx Family History (Source:Webinar Slides)
LPC8xxは、LPC81x/LPC82xから、2017年高集積LPC84x、2018年価格高効率LPC80xへ展開(出典:Webinar Slides)

LPC8xxファミリは、2016年発売のLPC81x/LPC82xをベースに、2017年にLPC84xで高集積大容量化、2018年はLPC80xで価格効率を上げる方向に発展中です。

関連投稿:LPC80xの価格効率化の方法

ベースとなったLPC810、LPC812、LPC824に対して弊社は、LPC8xxテンプレートを提供中です。このテンプレートは、発展したLPC84xやLPC80xへも適用できると思います。

*  *  *

さて、本投稿は、今後IoT MCUの必須機能となる可能性が高いOTA(Over The Air)について、LPC8N04スライドにその説明がありましたので、速報としてまとめます。

NFCを使うLPC8N04のOTA更新

LPC8N04 は、近距離無線通信(NFC)機能を搭載し15MHz動作のLPC802/LPC804よりもコア速度をさらに8MHzへ下げ、NFCアプリケーション開発に適したMCUです。スマホとNFCで連動する温度センサーロガーの動作例がNXPサイトの動画で見られます。

関連投稿:LPC8N04の特徴

無線ペアリングが簡単にできるNFC搭載MCUは、家電や産業機器の故障診断、パラメタ設定などの分野へ急成長しています。Webinarスライドでは、このNFCを使った電力供給やMCUファームウェア更新方法(OTAテクニカルノート:TN00040)も紹介されています。

IoT MCUには、製品化後にも無線更新できるセキュリティ対策は必須です。OTAはこの実現手段の1つで、具体的にどうすればOTAができるのかがTN00040に簡単ですが記載されています。

前提条件として、LPC8N04のブートROMバージョンが0.14以上であること、OTA実行中は電池かUSBでの電力供給などが必要です。Androidを使ったNFC OTA動作例が下図です。

LPC8N04 FW Update Over NFC (Source:TN00040)
LPC8N04のNFCを使ったOTA更新(出典:TN00040)

更新には、LPC8N04のSBL(Secondary Boot Loader)を使い、通信は暗号化されていますので、OTA中のセキュリティも万全です。OTA用のアプリケーション開発には、通常開発にリビジョン番号(図の1.0.0、1.1.0)付与が必須など様々な制約(オーバーヘッド)があります。

OSを使わないアプリケーション開発の場合、開発者自らがこれらOTAオーバーヘッドの追加が必要になるなど煩雑ですが、決まり文句として納得するか、または、IoT MCU用RTOSとして期待されるAmazon FreeRTOS提供のOTAなどを利用するしかなさそうです。

関連投稿:Amazon、IoTマイコンへFreeRTOS提供

今回はLPC8N04のNFCによるOTAを示しました。IoT無線通信がどの方式になっても、おそらく今回のような方法になると思います。SBL利用や暗号化、更新NG時の対処など留意事項が多く、現場へ行ってIDEで再プログラミングする従来方法よりも洗練されている分、リスクも高くなりそうです。

NXP LPC80xの新しい動き

NXPからNFC機能搭載LPC8N04発表に続き、新たにLPC802とLPC804がLPC800 MCUファミリに追加されました。従来LPC8xxファミリのLPC810やLPC824から仕様の新しい変化が感じられます。

わずか30秒のLPC802評価ボードLPC804評価ボードの綺麗な動画を見るだけでもキーポイントが解ります。

LPC80x評価ボード価格(価格は全てDigiKey調べ)

仕様の変化

LPC8xxファミリのラインアップが下記です。

LPC8xx Family (Source:NXP)
LPC8xxファミリラインアップと新規追加LPC80x (Source:NXP)

15MHzコア速度

LPC8xxファミリは、32ビット ARM Cortex-M0+コアを用います。Cortex-M0+は、8/16ビットMCUの置換えが目的の低消費電力コアです。従来は最大動作周波数30MHzでしたが、LPC80xはこれが15MHzになっています。

最大動作のスペックで、運用時は必要に応じ消費電力を抑えため動作周波数を下げるのが常套手段ですが、LPC80xではこの最大スペックが初めから15MHzになっています。これは、性能と電力消費のバランスを見直し、32ビットコアならばこのスペックでも8/16ビットMCUに十分対抗できると判断したためと思われます。

8/16ビットMCU市場を32ビットMCUで獲得するには、「従来以上に消費電力の低さが必要」なのです。

EEPROM based Flash

従来はFlashと記述されたユーザプログラム領域が、EEPROM Flashに変わっています。
※LPC8xxファミリは、Flashがユーザプログラム領域、SRAMはユーザデータ領域、ROMはデバイスに始めから実装済みのNXP提供プログラム領域(簡単に言うとライブラリ)です。弊社LPC8xxテンプレートに使用例があります。
※LPC8N04の4KB EEPROMは文字通りデータ保存用のEEPROMデバイスをSoCでMCUへ内蔵したものです。LPC8N04はコチラの投稿を参照してください。

LPC802 and LPC804 Block (Source:Mouser Electorinics Japan)
LPC802 and LPC804 Block (Source:Mouser Electorinics Japan)

このEEPROM based Flashと明示の意味するところ、従来との差、目的など、現時点ではよく解りません。しかし、明示する訳があるハズです。判明次第、投稿予定です。

Programmable Logic Unit(PLU)内蔵

LPC804ブロック図では、ピンク色のProgrammable Logic Unit(PLU)、ユーザ変更可能なディスクリートロジック機能も内蔵しています(簡単に言うとPLD:Programmable Logic Deviceです)。

PLU Tool Schematic design (Stource:Part 3 PLU Tool Schematic design Video)
PLU利用のロジック例 (Stource:Part 3 PLU Tool Schematic design Video)

このPLUを使うと、WS2812 LEDやDCモータ制御、パターンジェネレータなどが簡単に実装できるようです。

レジスタプログラミング方式のサンプルソフト提供

ARMコアのソフトウェア開発は、CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardで流用性を高める記述が標準的です。しかし、8/16ビットMCUのソフトウェアは、ハードウェアレジスタを直接アクセスするレジスタプログラミングが主流でした。このレジスタプログラミングを好む開発者も多いと聞いています。

LPC80xのサンプルソフトは、このレジスタプログラミング方式のCode Bundleで提供されます。

関連投稿:CMSIS構造や目的は、コチラの投稿の、“CMSIS”章を参照してください。

8/16ビットMCU市場置換えと開発者ニーズへの最適化LPC80xデバイス

8/16ビットMCUの市場置換えとその開発者ニーズを満たすという目的に、従来LPC8xxファミリよりもさらに最適化した32ビットMCU、これがLPC80xだと思います。評価ボードも低価格で提供中です。

また、日本時間、金曜午前0時~午前1時の1時間に、全4回のWebinarが予定されております。本投稿以降は、6月15日(金)と6月22日(金)の午前0時からです。英語ですが、使用スライドは4回全てダウンロードできますので興味がある方は登録し御覧ください。

2017年アナログICメーカー売上高ランキング

2017年のアナログICメーカー売上高トップ10が、5月2日EE Times Japanで発表されました。

2017年アナログICメーカー売上高ランキング(出典:記事)
2017年アナログICメーカー売上高ランキング(出典:記事)

アナログ市場全体の成長率は10%、そのうちの上位10社のみで59%ものシェアを占めます。唯一マイナス成長となったNXPは、昨年汎用ロジック/ディスクリート事業をNexperiaへ売却したためです。

MCUメーカーのアナログICシェア

2017年アナログIC売上高シェア
2017年アナログIC売上高シェア。ブログ掲載中のMCU各社もランクインしている。

本ブログで扱っているMCUベンダのSTMicroelectronics(シェア5%)、NXP Semiconductors(4%)、ルネサスエレクトロニクス(2%)などもこのトップ10に入っています。一方Cypress Semiconductors のMCU PSoC 4などは、コンパレータやアンプなどのアナログ機能が他社MCUよりも充実していますが、売上高トップ10には入っていません。ADCやDACなどのアナログ単体ICの範疇にPSoC 4が入らないためかもしれません。

これらMCU各社をハイライトして、2017年アナログIC売上高シェアをグラフにしました。Texas InstrumentsもMCUを販売していますが、ブログの対象外ですので外しています。

IoTでは、とりわけMCUのフロントエンドにアナログ機能が必要です。好調なアナログ市場の伸びに伴って、アナログ機能をMCUに搭載したデバイスが発表される可能性があると思います。

NXPのQUALCOMMによる買収、取りやめ?

日経新聞4月20日に、“クアルコム、止まらぬ受難 NXP買収に暗雲”記事が掲載されました。
記事では、トランプ米大統領のBroadcomのQUALCOMM買収禁止命令の報復として、中国当局が承認に難色を示し、7月25日まで買収期限を再延長し、最悪の場合、買収が取りやめになることもあるそうです。

2017年半導体売上高ランキング

2017年の半導体売上高ランキングもEE Times Japanで発表されました。日経記事に登場したイスラエル)NVIDIAが10位、オランダ)NXPは9位、米)QUALCOMMは6位、Broadcomは5位です。

半導体売上高トップ10ランキング(出典:記事)
半導体売上高トップ10ランキング(出典:記事)

仮にNXPの買収が取りやめになった場合、NXPにとってそれが良いのか悪いのかは、判りません。ただ急成長する自動車分野の制御にMCUの老舗、NXPの名前が残るのは悪くないと思います。※ルネサスMCUが、日立、NEC、三菱の統合であり、3社の名前の記憶が薄くなっていくのもさみしいものですから。

決着は、今年の夏頃(2Q 2018)になりそうです。

技術レベルとは異なる政治、経済次元での買収結果が、MCU技術にどのように影響するかは、注意深く見守る必要があります。

NXPのMCUXpresso Support Devices Table(Mar. 2018)へ更新

NXPのMCUXpresso Support Devices Tableが、3月9日更新されました。Change Logページ記載のとおりLPC80X、LPC8N04、LPC540XXが更新され、本ブログ対象のLPC8xxにもSDKやCFGが2Q 2018に提供予定です。LPCOpenライブラリのバグ問題が、新しいSDKで解決されることを期待しています。

NXP MCUXpresso Supported Devices Table (Mar 2018).
NXP MCUXpresso Supported Devices Table (Mar 2018). Product Family filtered with LPC 8xx.

関連投稿

NFC機能搭載マイコンLPC8N04、LPC800シリーズに追加

Eclipse IDEベース統合開発環境のプロジェクトImport、Renameの方法

統合開発環境のデファクトスタンダードがEclipse IDE。本ブログ対象ベンダのNXP)MCUXpresso IDE、ルネサス)e2studio、Cypress)PSoC Creator、STM)SW4STM32など全てこのEclipse IDEをベースとした統合開発環境です。

ベンダやマイコンが変わっても殆ど同じ操作でエディットやデバッグができるので、慣れが早く、本来のソフトウェア開発に集中できます。但し、オープンソース開発なので、毎年機能追加や変更があり、2018年は6月にバージョン4.8、コードネームPhoton(光子の意味)への改版が予定されています。

本投稿は、2017年版Eclipse IDEバージョン4.7、Oxygenベースの各社IDEプロジェクトインポート、リネームの方法を説明します。
弊社マイコンテンプレートを使ってソフトウェア開発をする時、これらの操作を知っているとテンプレート:ひな型活用のプロジェクト開発がより簡単です。

IDEの例としてSW4STM32を用います。IDEは、Workspace:ワークスペースと呼ぶフォルダ単位で機能します。ワークスペース内には複数プロジェクトが存在でき、2重起動ができます。

プロジェクトImport

マイコンテンプレートは、テンプレートの具体的な応用例にシンプルテンプレートプロジェクトやBaseboardテンプレートプロジェクトをArchives形式で提供します。Archives形式は、配布に都合が良くEclipse IDEの標準方法ですので、IDEダイアログに従って操作すれば「複数の方法」でプロジェクトインポートができます。

このArchiveプロジェクトの「最も簡単」なワークスペースへのインポート方法が下記です。

  • Windowsで、Archiveを適当な場所で解凍 → 事前に作成したIDEワークスペースへ解凍フォルダ毎コピー
  • IDEで、File>Import>General>Existing Projects into Workspace実行 → インポートProjects選択
Import Existing Projects into Workspace
Import Existing Projects into Workspace。プロジェクトをインポートする方法は、マルチプラットフォーム対応のEclipse IDEの場合、複数ある。

IDEで直接Archivesプロジェクトを解凍しワークスペースへインポートすることもできますが、フォルダ選択などのダイアログ操作は面倒です。マルチプラットフォーム対応のEclipse IDEたるゆえんですが、WindowsかmacOSの上で使うのであれば、この方法が簡単です。

プロジェクト名Rename

※Rename後、Renameプロジェクトの再ビルドが失敗する場合があります。Rename前に、ワークスペース毎バックアップするなどの事前対策を実施後、Renameを実行してください。

ワークスペースに複数プロジェクトが存在するには、別々のプロジェクト名が必要です。例えば、シンプルテンプレートを使って開発したプロジェクトが既にあるワークスペースへ、もう一度シンプルテンプレートを使って新たなプロジェクトを追加作成する場合を考えます。

開発したプロジェクト名は、SimpleTemplateのままです。これをRenameしないと新たにシンプルテンプレートをインポートできません。この時は、開発したプロジェクト選択後、右ボタンクリックで表示されるメニューからRenameを選択し、別プロジェクト名に変更します。

Rename Project Name
Rename Project Name。元々のEclipse IDE守備範囲外のファイル名は、手動リネームが必要。

注意点は、この操作でプロジェクト名変更をIDEは認識しますが、IDE以外のツールで作成したファイル名などは、そのままとなる点です。図はSTM)SW4STM32の場合です。Debugフィルダ下の.cfg/ioc/pdf/txtの4ファイルがそれらです。これらファイルは、手動でのRenameが必要です。これを怠るとRenameしたプロジェクトの再ビルドやデバッグが失敗します。

これら手動Renameが必要なファイルは、各社のAPI生成ツールなどに関連したファイルで、他社IDEでも同様です。元々のEclipse IDE守備範囲外のこれらファイルは、プロジェクト名Rename時、手動Renameが必要ですので注意してください。

Rename後、再ビルドが成功することを確認してください。再ビルドが失敗する場合には、プロジェクトフォルダ毎コピー&ペーストを実行し、ペースト時にRenameしたい別プロジェクト名を設定する方法でRenameを試してください。

別プロジェクトファイルのコピー、ペースト

別プロジェクトファイルを当該プロジェクトへコピー、ペーストする方法は、同じワークスペース内であれば簡単です。ファイル選択後、コピー:Ctrl+Cとペースト:Ctrl+Vでできます。

ワークスペースが異なる場合は、IDEの2重起動を使うとファイル選択ミスがありません。

IDEは、起動中でももう1つ同時起動が可能です。IDE起動時に、異なるワークスペース選択をすれば、コピー対象プロジェクトのファイルをIDEで目視しながら選択できます。もちろん、Windowsエクスプローラでファイルを直接選択しペーストも可能ですが、普段IDEで見慣れたファイル表示で選択する方がミスは少ないです。同一ファイル名の上書き前の確認も行います。

エクスプローラでファイル表示をすると、普段IDEで見慣れないファイルなども見られます。これらが選択のミスを生みます。IDEは、必要最低限のファイルのみ表示しているのです。

IDE画面のリセット

デバッグやコンソールなど複数Perspectiveを表示するIDE画面は、時に隠したPerspectiveを表示したくなります。PerspectiveをIDE初期状態に戻すのが、Window>Perspective>Reset Perspectiveです。

Reset Window Perspective
Reset Window Perspective。IDEの初期状態ウインド表示に簡単に戻せる。

この方法を知っていると、使わないPerspectiveを気軽に非表示にできるので、画面の有効活用ができます。

まとめ

Eclipse IDEベースの各社開発環境で知っていると便利な使い方をまとめます。

  • プロジェクトインポート:IDEのExisting Projects into Workspaceを使うと簡単
  • プロジェクト名リネーム:自動リネームはEclipse IDE関連のみ。API生成ツール関連ファイルは手動リネーム要。
  • 別プロジェクトファイルのコピー&ペースト:IDE2重起動を使い、ファイル選択ミスを防ぐ
  • IDE画面リセット:利用頻度の低いPerspectiveを非表示にし、画面有効活用
Eclipse Base IDE Project Import and Rename
Eclipse Base IDE Project Import and Rename

マイコンテンプレート活用の最初の段階が、テンプレートプロジェクトのワークスペースへのインポートです。これらインポートしたテンプレートへ変更を加え、開発プロジェクトにします。

この開発プロジェクト名をリネームし、同じワークスペースへ、再びテンプレートプロジェクトをインポートします。ワークスペース内は、リネームした色々な既成開発プロジェクトから成り、様々なプロトタイピング開発へも応用できるでしょう。

ワークスペースが異なるファイル操作には、IDE2重起動でファイル選択のミスを防ぎます。

これらのTipsを知っていれば、既存資産を流用、活用し、本来のソフトウェアに集中しミスなくプロトタイピング開発ができます。

NFC機能搭載マイコンLPC8N04、LPC800シリーズに追加

近距離無線通信(NFC)機能搭載のLPC8N04がLPC800シリーズに追加されました。
スマホで測定温度を表示するデモソフト付きのLPC8N04評価ボード:OM40002がNXPから直接購入可能(2304円)です。

LPC8xxシリーズラインナップとLPC8N04評価ボード

LPC8xxシリーズ
LPC8N04が追加されたLPC8xxシリーズMCU。コア速度の8MHz低速化、EEPROM、NFC/RFID、温度センサ搭載などの特徴がある。(出典:LPC800 Series MCUs)
LPC8N04評価ボード
LPC8N04評価ボード。Component Sideにコイン電池ホルダーがある。Top Sideは5×7 LED Arrayを搭載し動作表示。(出典:UM11082)

LPC8N04マイコンの特徴

  • 4電⼒モード(sleep、deep sleep、deep power-down、battery off)のARM 8MHz Cortex-M0+コア
  • 32KB Flash、8KB SRAM、4KB EEPROMを統合
  • 広範囲なタギング/プロビジョニング・アプリケーションをサポートするエナジーハーベスト機能付きNFC/RFID ISO 14443 Type A通信
  • 精度±1.5℃の温度センサを統合
  • 2個のシリアル・インターフェースと12個のGPIO
  • 1.72V〜3.6Vの動作電圧範囲と-40℃〜+85℃の周囲温度範囲
  • 低コスト、⼩フットプリントのQFN24パッケージ
LPC8N04ブロック図
LPC8N04のブロック図。従来LPC8xxシリーズと異なり、8MHz動作コア、NFC機能とEEPROM搭載などが特徴。(出典:Product data sheet)

スマホと連動した評価ボードの動作動画はコチラ

個人的には、従来の汎用LPC8xxシリーズとは異なり、NFCアプリケーション特化マイコンのような気がします。Cortex-M0+コア8MHzによる超低消費電力動作、EEPROM、NFC/RFIDなどがその理由です。面白いアプリケーションが期待できそうです。

NXPのMCUラインナップ2018春

旧Freescaleの「Kinetisマイコン」と、元NXPの「LPCマイコン」の2つが統合した新生NXPのARMコアMCUラインナップは、2018年3月現在、KinetisとLPCの2つに別れてサイトに掲載中です。

NXP ARMCortex-M MCUs Site
NXP ARMCortex-M MCUs Site

従来ユーザには、この方が使いやすいと思います。しかし、同じCortex-Mコアでも2種類あり、困惑するユーザもいるのではと思っていました。そんな時、”Kinteis”と”LPC”を統合したNXPのCortex-Mコア資料を見つけたので示します。

その資料は、BRKINLPCPWRMCU REV 1(Oct. 2017)REV 0(Oct. 2016)です。資料から「Kinetisマイコン」と「LPCマイコン」を横断的に概観します。

NXP Cortex-MコアMCUシリーズ構成

BRKINLPCPWRMCU REV1 (Oct. 2017)のP8とP9をブログ掲載用に縦長に加工、加筆したのが下図です。

MCU Solutions for Every Design (Source: 2017)
MCU Solutions for Every Design (Source: 2017)

Kinetisは、V/K/E/L/EAの5シリーズ、LPCは、800/1100/54000の3シリーズから構成されています。各シリーズの特徴(オレンジ字)と概要(黒字)、それらを示すアイコンが解り易く記載されています。

KinetisとLPCの用途別構成

BRKINLPCPWRMCU REV0 (Oct. 2016)のP4、汎用/アプリケーション向けなど用途によるKinetisとLPCの分類が下図です。

Kinetis and LPC MCUs Offer a Range of Options (Source: 2016)
Kinetis and LPC MCUs Offer a Range of Options (Source: 2016)

2016年資料の方が、Kinetis、LPCともに、2017年資料より細かなMCUシリーズが解ります。

2017年と2016年資料比較

2016年資料はKinetisとLPCマイコンの両方が同居する分野もあり、整理統合するのでは?との疑念をユーザに抱かせます。例えば、General PurposeでCost-Effective and Small Form Factor分野には、LPC81x/82xとKinetis KL02/03/05の両方があります。同じ用途に、ほぼ同じ3種類のMCUを供給するのは新生NXPにとって非効率のハズです。

この疑念を抱かないように改版したのが、2017年資料かもしれません。但し、2017年でもLPC1500/1700/4000シリーズや一部のKinetisシリーズが掲載されていないのが気になります。効率化の第一歩かもしれません。

なぜアメリカ政府はBroadcomのQualcomm買収を阻⽌したのか︖”というGIGAZINE記事を読むと、理由は仮にBroadcomがQualcomを買収した場合、Broadcom負債の返済のため、短期的な収益性を重視し5Gや6Gなどの次世代通信規格の開発競争でQualcommが果たすべき長期的な研究開発を切り捨てる可能性があるためだそうです。

買収を免れたQualcomによるNXP買収が完了すれば、この非効率な同居マイコン部分にメスが入るかもしれません。STMicroelectronicsは、STM32マイコンに対して2018年から10年間の供給を保証しています。NXPも同様のマイコン製品longevity:寿命アナウンスが欲しいです。

トランプ米大統領、BroadcomのQualcomm 買収禁止を命令

トランプ米大統領は、米国時間3月12日、シンガポール)Broadcomによる米)Qualcomm 買収を、国家安全保障上の観点から禁止する大統領命令を出しました

まさか本ブログでトランプ米大統領の関連記事を投稿することになるとは、さらに、BroadcomのQualcomm 買収も即時かつ永久に放棄せよとは、まさかまさか(まさかの2乗)の展開です。

Broadcom、Qualcomm、NXP買収
Broadcom、Qualcomm、NXP買収

Wi-FiチップのBroadcomが、モバイルSoCのQualcomm を買収するとスマホ向け半導体最大手になる

ウィキペディアによるとBroadcomは、シンガポールではなく米国会社との記述もあります。

有線/無線のコンピュータネットワークおよび通信ネットワーク全般をカバーする通信向け半導体の大手Broadcomが、SoC:System on Chipでモバイルコントローラ大手のQualcomm を買収した場合には、Intel、Samsungに次ぐ3番手の半導体メーカとなり、スマホ向け半導体では業界最大手になります。

この買収劇が、トランプ米大統領命令により禁止されました(過去形で記述して良いものかは不明ですが、米大統領令ですので…)。
残るのは、米)Qualcommによるオランダ)NXP買収の、中国の独占禁止法当局の承認だけになりました。

NXP LPC111xテンプレートV2改版

ARMコア制御の入門マイコンとして適しているNXP LPC1114/5マイコンのテンプレートを改版しました。

このLPC111xテンプレートV2は、従来テンプレートの必須機能のみを実装したTiny(小さな)テンプレートの適用、最新開発環境MCUXpresso IDE(v10.1.1_606)での動作確認が改版目的です。

近日中に旧LPC111xテンプレートご購入者様で、無料アップグレード対象者様には、お知らせとLPC111xテンプレートV2の無償配布を行います。暫くお待ちください。

LPC1114とLPC1115の違い

NXP LPC111xテンプレートの対象マイコンは、ARM Cortex-M0コア50MHz動作のLPC1114(ROM/RAM=32KB/8KB)とLPC1115(ROM/RAM=64KB/8KB)です。

以前の投稿で紹介したNXPマイコンの推薦開発環境をLPC1114/5でフィルタしたものが下図です。

LPC1114 and LPC1115 Recommended Software
LPC1114 and LPC1115 Recommended Software

※赤線は、評価ボード搭載マイコン、青線は、単体購入可能マイコン

NXPのLPC1100シリーズは、LPC1110/11/12/13/14/15の6種の型番と、同じ型番でも低消費電力の技術進化によりLPC1100/1100L/1100XLの3つの世代があるので複雑です(通常→L→XLでより低消費電力)。

但し本ブログは、個人でも入手性が良く低価格、良い評価ボードもあるマイコンが対象です。このふるいにかけると、フィルタの下線を付けたLPC1114/302、消費電力LPC1100L搭載のNXP評価ボードLPCXpresso1114(秋月電子2000円)、デバイス単体では、DIP28ピンパッケージLPC1114/102、消費電力LPC1100L(400円)とSOP28ピンパッケージLPC1114/102、消費電力LPC1100L(190円)の3種類がそれぞれ秋月電子より購入できるので対象となります。
※LPC1114/102は、どちらもRAM=4KBで評価ボード搭載のLPC1114/302の8KBの半分に注意

LPC1115は、LPC1114のROMを2倍の64KBにし、電力消費を第3世代に進化させたマイコンです。NXP評価ボードのLPCXpresso1115には、LPC1115/303、消費電力LPC1100XLが搭載されています。
※型番/xxxの最後の数字が消費電力を示し、1が通常、2がL、3がXLを意味します。

LPCXpresso1115の入手性はあまり良くありません。しかし、開発環境MCUXpresso IDEでAvailable boardsに現れる評価ボードはLPCXpresso1115とLPCXpresso11C24のみで、LPCXpresso1114はありません。

MCUXpresso IDE Available Boards
MCUXpresso IDE Available Boards

従って、入手性が良いLPCXpresso1114評価ボードで新プロジェクトを作るには、評価ボードからでなく、Preinstalled MCUsからLPC1114/302を選択する必要があります。

LPCXpresso1114のMCUXpresso新規プロジェクト作成方法

Select LPC1114/302
Select LPC1114/302

Preinstalled MCUsから評価ボード搭載のLPC1114/302選択後>Next>LPCOpen – C Project>Project name追記と進み、Import…をクリックします。

Click Import...
Click Import…

ArchiveでLPCOpenからlpcopen_v2_00a_lpcxpresso_nxp_lpcxpresso_11c24.zipを選択しNextをクリックします。

Import lpcopen_v2_00a_lpcxpresso_nxp_lpcxpresso_11c24.zip
Import lpcopen_v2_00a_lpcxpresso_nxp_lpcxpresso_11c24.zip

使用ライブラリにlpc_chip_11cxx_libとnxp_lpcxpresso_11c24_board_libを選択後、ダイアログに従っていけば評価ボードLPCXpresso1114/302上に新プロジェクトが作成できます。

LPCXpresso1114とLPCXpresso1115評価ボードの回路図は全く同じです。違いは、搭載ターゲットマイコンのみでIO割付も同じ、PLC-Linkと呼ぶ評価ボード付属デバッガも同じです。またImportして使用するライブラリも同じです。

ならば、Available boards のLPCXpresso1115を選択して新プロジェクトを作成し、LPC1114評価ボードへダウンロードも可能だと思われるかもしれません。しかし、これはデバッガ接続時にエラーが発生します。

MCUXpressoの右下にターゲットマイコンNXP LPC1114/302が示されており、これ以外へはデバッガ接続ができない仕組みになっています。

Target NXP LPC1114/302
Target NXP LPC1114/302

このため、同一ソースコード、使用ライブラリも同じであっても、ターゲット毎にプロジェクト作成が必要です。逆に、LPC1114評価ボードで動作確認したソースコードでライブラリも同じなら、ターゲットさえ変えれば、LPC1115評価ボードでも動作すると言えます。違いは、ROM容量のみだからです。

評価ボード搭載のLPC1115/303とLPC1114/302の機能差はROM容量以外にもありますが、LPC111xテンプレートの応用例は、この差が生じる機能は使用しておりません。

従って、テンプレート応用例のシンプルテンプレート/Baseboardテンプレートを、LPC1114評価ボード、LPC1115評価ボードそれぞれに提供します。LPC111xテンプレートProject Explorerの様子が下図です。

LPC111xTemplate Project Explorer
LPC111xTemplate Project Explorer

LPC1100シリーズの位置づけと開発環境の良さ

NXP ARMコアエントリレベルのLPCマイコンラインナップを、LPC Cortex-M microcontrollers — Discover the differenceより抜粋しました。

LPC1100 Series (Source:LPC Cortex-M microcontrollers — Discover the difference)
LPC1100 Series (Source:LPC Cortex-M microcontrollers — Discover the difference)

LPC1100シリーズは、最も基本的で適用範囲も広いCortex-M0コアマイコンです。電力効率は、LPC800シリーズのCortex-M0+に及びませんが、低電力技術の進化でCortex-M0+に近い低電力動作も可能です。Cortex-M0とM0+の機能差は、コチラの投稿も参照してください。

また、LPCOpenライブラリもLPC8xxに比べ安定(≒バグ無し)しています。DIPやSOPパッケージの入手が容易で低価格、手実装も可能です。LPCXpresso1114/5評価ボードとLPC111xテンプレートを使えば、ARM Cortex-M0マイコンの早期習得とプロトタイピング開発ができると思います。

評価ボードの半分は、切り離して単体デバッガとしても使えます。デバッガとターゲットの接続は、ARMコア標準のSWDインタフェースなので、LPCマイコン以外の他社ARMコアにも使うことができます。100mAまでの電力供給と、実質4本の接続でデバッグとオブジェクトダウンロードが可能です。

LPC111xテンプレートV2のまとめ

改版したNXP LPC111xマイコンテンプレートV2構成を示します。

テンプレート名 対象マイコン(ベンダ/コア) テンプレート応用例 評価ボード:動作確認ハードウェア
LPC111xテンプレートV2(LPCOpen v2.00a利用) LPC1114(NXP/Cortex-M0) ・シンプルテンプレート
・Baseboardテンプレート
LPCXpresso1114(LPC1114/302)
+ Baseboard
LPC1115(NXP/Cortex-M0) ・シンプルテンプレート
・Baseboardテンプレート
LPCXpresso1115(LPC1115/303)
+ Baseboard

ARM Cortex-M0コアのLPC1114/302(ROM/RAM=32KB/8KB)実装のLPCXpresso1114評価ボードは、低価格で入手性良く、開発環境MCUXpressoも他社EclipseベースIDEと比べ使い勝手良く、ライブラリも安定しています。また、評価ボードとBaseboardを接続すれば、色々な周辺回路制御も手軽に学べます。

今回の改版でテンプレート本体は、より解り易く、利用し易くなりました。テンプレートを使うと、複数のサンプルソフトをそのまま流用した並列処理が簡単に実現できます。

テンプレートの特徴や仕様は、LPC111xテンプレートサイトを、使い方などはサイトのテンプレート関連情報を参照してください。

ARMコア制御の入門用として適しているLPC111xテンプレートとLPC1114評価ボードは、Cortex-M0の習得、プロトタイピング開発のお勧めキットです。