STM32のStep-by-Step Guide

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)公式ブログのカテゴリ:TutorialsからSTM32開発環境を構築する方に最適な投稿を見つけたので、紹介と気になる点を示します。

Step-by-Step Guide

STM32 step-by-step learning program
STM32 step-by-step learning program

2018年10月8日が投稿日のこの記事は、STM32の開発環境(IDE)構築から評価ボード、UART接続、IoT評価ボードとスマホ接続などを5つのStepで示しています。内容は、前後半の2つに大別できます。

前半は、Step1(45分)で開発環境を構築し、Step2(30分)でSTM32CubeMXとHAL説明、Step3(34分)で評価ボード(NUCLEO-L476RG)とUART利用のPC通信を紹介するなど、内容は、弊社昨年のブログ投稿の最新版と言えます。

後半は、Step4(60分)でIoT評価ボードDiscovery kit IoT node (B-L475E-IOT01A)(DigiKeyにて¥6,370販売中)の使い方、Step5(30分)でAndroidスマホと同評価ボードをBLEで直結し、IoTシステムを構築しています。

IoT評価ボードは、Cortex-M4(915MHzまたは868MHz)を使い、Arduinoコネクタ、モーション、ジェスチャ、環境センサなどが実装済みなので、スマホで取得センサデータを視覚化できます。さらにAWS(アマゾン ウェブ サービス)経由でも接続できるので、本格的なIoTノード開発・評価にも使えそうです。AWSとの接続方法は、コチラの動画(11分12秒)に解説されています。
※動画閲覧にはログインが必要です。

関連投稿:Amazon、IoTマイコンへFreeRTOS提供

気になる点1:TrueSTUDIO

STMは、2017年12月に統合開発環境TrueSTUDIO開発元のAtollic社を買収しました。その結果、無償IDEのラインナップは従来と同じですが、開発会社の説明が変化しました。

関連投稿:2018マイコンベンダ最新ニュースのSTM章参照

STM32ソフトウェア開発スイート(要ログイン)のページで説明します。License typeでフィルタすると、無償版IDEラインナップが表示されます。SW4STM32欄のShow more…をクリックすると下段に“This product is supplied by a third party NOT affiliated to ST”の記述があります。これが気になる点です。

IDE License type Free検索結果
IDE License type Free検索結果。SW4STM32には、”not affiliated to ST”の記述がある。

この記述は、TrueSTUDIO欄には無く、代わりにProduct Imageに“ST acquires Atollic”と記載され、STとAtollicのロゴが表示されます。つまり、STMの無償IDEは、TrueSTUDIOが標準?の感じです。

TrueSTUDIOのProduct Image
TrueSTUDIOのProduct Imageは、STとAtollicのロゴが表示

従って、新たにSTM開発環境を構築される方は、TrueSTUDIOを選ぶと良いかもしれません。これを裏付けるのが、Step1紹介のIDEがTrueSTUDIOだということです。TrueSTUDIOがSW4STM32とほぼ同様に操作できるのは、コチラの動画(9分42秒)で解ります。

弊社2017年9月発売のSTM32FxテンプレートもSW4STM32を使っていますが、これもTrueSTUDIOに変えた方が良いかもしれません。但し、TrueSTUDIOには、SW4STM32プロジェクトをそのままインポートする機能が備わっていますので、二手間のOKクリックが増えますがしのげそうです(Step4のP8、Appendix Porting an AC6 example to TrueSTUDIO参照)。

Porting SW4STM32 project to TrueSTUDIO(出典:Step4)
Porting SW4STM32 project to TrueSTUDIO(出典:Step4)。OK2回クリックでSW4STM32プロジェクトをTrueSTUDIOへインポートできる。

IDEポーティングは、MCUベンダーが、古いIDEから新しいIDEへ替える時に良く使う方法で、NXP(Kinetis Design Studio→NXP Expresso)、ルネサス(Hew→CS+)などでもおなじみです。SW4STM32→TrueSTUDIOがあるのも、STMがTrueSTUDIOを推薦しつつある証と言えるでしょう。

気になる点2:Edge MCUとNode MCU

Step-by-Step Guide資料が前後半で使用MCUと評価ボードが2つに別れたように、前半のEdge MCUと後半のNode MCUの2つの機能に分かれてIoT MCUが発展する気がします。

  • Edge MCU:低消費電力でIoTデータ取得(アナログフロントエンド)機能を備えたMCU。従来のベアメタル開発の延長・発展形。
  • Node MCU:AWSなどIoTネットワーク出入口の無線、高度なセキュリティ機能を備えたMCU(Edge MCUを包含する場合あり、例:Discovery kit IoT node)。FreeRTOSなどのOS実装は必須で、従来MCUより高機能・高性能、1GHzにせまる高速動作。

※ベアメタル開発:OSなどを使わないMCU開発

Edge MCUとNode MCUの違いは、端的に言えば、ベアメタルソフトウェア開発かRTOSソフトウェア開発かです。MCUソフトウェア開発者も、ベアメタルとRTOSの2つに分かれるかもしれない、というのが第2の気になる点です。

Edge MCUだけではIoTに接続すらできません。Node MCUがIoT接続に必須になりつつある気がします。